ユニリタ Research Memo(4):2024年3月期は好調な受注環境を追い風として増収増益を実現

2024年6月18日 14:44

*14:44JST ユニリタ Research Memo(4):2024年3月期は好調な受注環境を追い風として増収増益を実現
■決算動向

1. 2024年3月期決算の概要
ユニリタ<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0380000?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><3800></a>の2024年3月期の業績は、売上高は前期比3.7%増の11,982百万円、営業利益は同11.7%増の1,023百万円、経常利益は同2.8%増の1,164百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同8.4%増の815百万円と増収増益となった。期初予想に対しては売上高が若干未達となったものの、利益面では大きく上振れる着地となった(中期経営計画の最終年度目標は売上高、利益ともに達成)。

売上高は、「プロダクトサービス」「クラウドサービス」「プロフェッショナルサービス」の3つの事業がそれぞれ伸長した。「プロダクトサービス」は、DXの進展や法改正※に伴う電子化対応の動きが追い風となり、主力の自動化・帳票プロダクトが好調に推移した。「クラウドサービス」についても、IT活用クラウドを中心に主力サービス群が順調に伸びた。「プロフェッショナルサービス」は、高付加価値案件の受注増やグループ一体となった一括請負案件(システムインテグレーション)により大幅な増収となった。ただ、売上高が期初予想より若干未達となったのは、事業推進クラウド及びソーシャルクラウドが下振れたことが理由であり、その課題認識は次期中期経営計画へ持ち越された。

※電子帳簿保存法改正やインボイス制度対応など。


損益面では、業務システムの再構築や新中期経営計画の策定など、経営基盤整備のための投資を強化しながらも、増収による収益の押し上げや研究開発費の効率化、高収益モデルへの転換(システムインテグレーション)などにより期初予想を上回る営業増益を達成した。営業利益率も8.5%(前期は7.9%)に上昇している。「クラウドサービス」の黒字転換にはもう一歩届かなかったものの、そのうちIT活用クラウドについては黒字化を実現することができた。

財政状態については、総資産が「現金及び預金」の増加などにより前期末比4.1%増の15,763百万円に増加した一方、自己資本も内部留保の積み増しにより同3.5%増の11,725百万円に増加したことから、自己資本比率は74.4%(前期末は74.9%)とほぼ横ばいで推移した。

事業別の業績は以下のとおりである。

(1) プロダクトサービス
売上高は前期比4.0%増の4,668百万円、セグメント利益は同5.4%増の1,152百万円と増収増益となった。1) 主力の自動化・帳票プロダクトは、DXの進展に伴うシステム更改などの提案型案件をはじめ、インボイス制度や電子帳簿保存法に対応した「まるっと帳票クラウドサービス」の受注が増えた。また、2) クラウド運用についても、基幹システムのクラウド化ニーズの増加に伴い、「ユニリタクラウドサービス」が伸長。1) 及び2) の結果、ビジネスモデルのサービス化が進み、ストック売上は前期比3.1%増の3,418百万円と着実に伸びてきた。一方、3) メインフレーム事業については、市場が縮小傾向にあるものの、堅実に売上・利益を確保することができている。損益面でも、メインフレーム事業の縮小を、自動化・帳票プロダクトの伸びでカバーし、セグメント全体での増益を確保した。セグメント利益率も24.7%(前期は24.4%)と高い水準を維持している。

(2) クラウドサービス
売上高は前期比1.8%増の3,369百万円、セグメント損失は26百万円(前期は197百万円の損失)と増収増益となり、損失幅が大きく縮小した。1) IT活用クラウドは、DXの進展を背景として、情報システム部門向けに「LMIS」「infoScoop×Digital Workforce」が順調に伸びた。また、データマネジメントに取り組む企業の増加により、「Waha! Transformer」(データ加工・連携クラウドサービス)も堅調に推移している。2) 事業推進クラウドについては前期比で減収となったものの、主力の「らくらくBOSS」や「DigiSheet」「The Staff-V」(人材派遣業向け人事管理クラウドサービス)などが引き続き伸長したほか、「Growwwing」もまだ小規模ながら高成長を続けている。3) ソーシャルクラウドは、地域交通機関向けの移動体IoTサービスが、デジタル田園都市国家構想などを背景に地方自治体からの案件が増加、受注することができた。一方、損益面では、依然として投資が先行する状況が続いているものの、主力サービスの伸びによる収益の押し上げに加え、内製化推進や費用の削減などにより損失幅は大幅に改善した。セグメント全体では黒字転換にもう一歩届かなかったものの、IT活用クラウドだけで見ると黒字化を実現している。

(3) プロフェッショナルサービス
売上高は前期比5.2%増の3,944百万円、セグメント利益は同24.0%増の369百万円と増収増益となった。1) コンサルティング事業は、データ及びサービスマネジメントの両領域におけるノウハウと実績が評価され、DX推進企業からの受注が好調に推移した。2) システムインテグレーション事業は、グループ一体となった一括請負案件やグループ開発基盤を活用した高収益案件の増加により大きく拡大した。3) アウトソーシング事業についても、企業のIT部門におけるシステム運用人材不足を受けて需要が拡大した。損益面でも高付加価値なコンサルティング事業の伸びやシステムインテグレーション事業における収益性の向上により大幅な増益となり、セグメント利益率も9.4%(前期は8.0%)に大きく改善した。

2. 2024年3月期の総括
以上から、2024年3月期を総括すると、DXの進展や法改正の動き、IT人材不足などを背景に受注環境が追い風にあるなかで、しっかりとそれらの需要を取り込み、増収増益を達成できたところは、これまでの成果を測るうえでも十分に評価できる結果と言える。また、活動面でも、中期経営計画の最終年度として、1) ビジネスモデルのサービス化により、安定収益となるストック売上高が着実に積み上がってきたこと、2) パートナー企業とのコラボレーション案件が増えてきたこと(詳細は後述)、3) データ&サービスマネジメント領域におけるコンサルティングを活かした高付加価値案件が好調であること、4) 地方自治体向けに移動体IoTサービスの動きが活発化してきたこと(詳細は後述)など、やろうとしていることが形になってきたところは、次の中期経営計画につながる成果として注目したい。一方、プロダクトの伸びや事業推進・ソーシャルクラウドにおける事業拡大のペースが想定よりも遅れているところはネガティブな材料ではあるが、パートナーとの協業からの販売戦略や提供体制における課題が明らかになり、今後やるべきことがわかってきたという点においては前向きに評価したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)《HN》

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