ヒガシ21 Research Memo(1):関西発祥で周辺領域・成長領域へ積極展開するユニークな総合物流企業
2024年6月18日 13:21
*13:21JST ヒガシ21 Research Memo(1):関西発祥で周辺領域・成長領域へ積極展開するユニークな総合物流企業
■要約
ヒガシトゥエンティワン<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0902900?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><9029></a>は関西を発祥とする総合物流企業である。スローガンに「Evolution for Customers-全進で未来へ“シンカ”」を掲げ、M&Aも活用しながら基幹事業(3PL事業を除く輸配送等関係業務)や首都圏ビジネスの拡大を推進するとともに、付加価値の高い物流サービスや、一般運送事業とは性格が異なる周辺領域・成長領域の物流サービスへ積極展開するユニークな総合物流企業である。
1. 顧客ニーズに対応した物流設計力や大手優良企業を中心とする顧客基盤が強み
個々の顧客ニーズに対応した物流設計力を強みとして、運送事業や倉庫事業を中心に様々な物流サービスを提供している。発祥の地である関西圏で高い知名度・市場シェアを誇り、幅広い分野の大手優良企業を中心とする顧客基盤を構築し、安定収益源となっている。同社は、報告セグメントとは異なる独自の事業領域別区分を設定し、全事業領域において成長に向けた取り組みを推進している。事業領域別区分は、オフィス移転などのオフィスサービス事業、3PL事業、IT機器キッティングなどのITサービス事業、ビル館内物流やメール室業務代行などのビルデリバリー事業、介護支援事業者向け福祉用具レンタル・販売などの介護サービス事業、及び基幹事業である。積極的な事業展開により、直近では3PL事業とITサービス事業が大幅に拡大しているほか、オフィスサービス事業や基幹事業も順調に拡大している。
2. 2024年3月期は大幅増収増益で過去最高
2024年3月期の連結業績は、売上高が前期比16.7%増の40,635百万円、営業利益が同14.8%増の2,190百万円、経常利益が同14.0%増の2,309百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同18.8%増の1,506百万円だった。おおむね2023年10月27日付の上方修正値と同水準の大幅増収増益、過去最高業績で着地した。売上面では全事業とも拡大した。特に倉庫事業でアマゾンジャパン合同会社(以下、アマゾンジャパン)向け取り引きが拡大、オフィスサービス事業で人員強化による営業活動が好調に推移したほか、その他事業で(株)旅人が通期連結(前期は下期より連結)したことにより大幅増収となった。利益面では、成長投資や増員に伴う人件費などの増加に加えて、大型3PLセンター開設に伴う初期費用(備品・什器・倉庫消耗品等)の発生などがコストアップ要因となったものの、大幅増収効果や適正運賃の受領などで吸収した。
3. 2025年3月期も増収増益予想、会社予想は保守的で上振れの可能性
2025年3月期の連結業績予想は、売上高が前期比4.6%増の42,500百万円、営業利益が同11.9%増の2,450百万円、経常利益が同12.6%増の2,600百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同8.8%増の1,640百万円としている。積極的な業容拡大戦略で増収増益を見込んでいる。売上面では、2023年11月に開設した首都圏輸送センターや2024年3月に開設した神戸西ロジスティクスセンター(以下、LC)の本格稼働、今後稼働開始予定の川西LC、関西電力グループ向け資材調達3PL事業や大手e-コマース会社向け配送業務の拡大などがけん引し、全事業とも好調に推移する見込みだ。利益面では、引き続き成長投資で車両・設備・人材に係る費用が増加するが、増収効果やサービス高付加価値化などによって吸収することに加え、2023年4月に開設した大型3PLセンター3拠点に係る初期費用が一巡して収益化が進展することも寄与する見込みだ。会社予想は全体として保守的な印象が強く、生産性向上や周辺領域を含めた事業拡大の進展などにより、上振れの可能性が高いと弊社では考えている。
4. 中期経営計画2026の目標値を上方修正、全事業の成長を目指す
同社は2020年7月策定の長期経営ビジョン「ヒガシ21グループ VISION2030」で、目指す姿として「お客様に最高のサービスをお届けするために変革し続ける企業」を掲げた。そして2023年5月策定の中期経営計画2026(2024年3月期~2026年3月期)では、テーマを「成長の礎を糧に飛躍する3年」として、目標値に2026年3月期売上高420億円、経常利益25億円などを掲げた。この目標値を2025年3月期に前倒し達成する見込みとなったため、2024年5月に上方修正し、売上高450億円、経常利益28億円、1株当たり配当金40.0円などの目標を掲げた。成長に向けた基本戦略には大きな変更はなく、事業別の成長戦略に加え、事業の垣根を超えたシナジーの創出や、業務効率化・運用強化に向けた技術インフラへの投資を推進する。経常利益率については、付加価値の高い物流サービスの提供により、陸運業界の中央値を上回る水準の確保を目指す。ROEの目標は8%以上としている。事業拡大に伴う積極投資の影響で2024年3月期実績に対して低下となるが、陸運業界の中央値を上回る水準の確保を目指す。さらに株主還元やサステナビリティ経営も推進する方針だ。
5. 成長戦略の進捗に注目
同社は、中期経営計画2026の最終年度目標を上方修正するなど、意欲的な長期ビジョンに基づく業容拡大戦略の成果が顕著に表れている点を弊社は高く評価している。成長戦略の加速によって中長期成長ポテンシャルが高まることが期待されるだけに、引き続き成長戦略の進捗状況に注目したい。
■Key Points
・関西発祥で周辺領域・成長領域へ積極展開するユニークな総合物流企業
・顧客ニーズに対応した物流設計力や大手優良企業を中心とする顧客基盤が強み
・2024年3月期は大幅増収増益で過去最高
・2025年3月期も増収増益予想、会社予想は保守的で上振れの可能性
・中期経営計画2026も目標値を上方修正
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)《SI》