Iスペース Research Memo(8):成長シナリオの蓋然性が高まれば、EV/EBITDA倍率も再評価される可能性

2024年6月14日 12:38

*12:38JST Iスペース Research Memo(8):成長シナリオの蓋然性が高まれば、EV/EBITDA倍率も再評価される可能性
■同業他社比較

アフィリエイト運営会社の大手はインタースペース<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0212200?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><2122></a>のほかファンコミュニケーションズ、アドウェイズ、バリューコマース、リンクシェア・ジャパン(株)(楽天グループ<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0475500?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><4755></a>の子会社)、レントラックスの5社が挙げられる。売上高の規模はその他の事業も展開しているため各社ばらつきがあるものの、同社も含めた6社合計のアフィリエイトサービスにおける業界シェアは約6割、うち同社は1割弱のシェアと見られる。2023年度の業績については各社それぞれで要因があるものの、5社すべて営業利益が2ケタ減益となった。また、2024年の会社計画もレントラックスが増益見通しとなっているが、他4社とも減益計画となっている。インターネット広告市場は拡大基調が続いているものの、広告手法が多様化していることが影響しているものと考えられる。

同業他社の特徴について見ると、ファンコミュニケーションズは2024年3月時点で「A8.net」のパートナーサイト数が約344万サイト、稼働広告主ID数が3,475件と、パートナーサイト数では業界最大規模となっている。中小企業向け広告ビジネスを長く提供しており、EC分野を中心に幅広い広告案件を揃えていることが特徴だ。業績はここ数年、スマートフォン向け広告サービス「nend」の縮小で減益トレンドが続いてきたが、「nend」については2024年3月で事業撤退した。ただ、堅調に推移していた「A8.net」の広告取扱高も2024年1~3月は前年同期比12.6%減と2ケタ減となっており、厳しい状況が続いている。

アドウェイズは、アドプラットフォーム事業(アドネットワーク広告配信サービス、アフィリエイト広告サービス)とエージェンシー事業(国内外における広告代理店)を展開している。モバイル向け比率が高く、ゲームや電子コミック系に強みを持つ。ここ数年は機械学習によるスマートフォン向けアドネットワーク広告配信サービス「UNICORN」の伸長により業績を伸ばしてきたが、2023年12月期はゲーム・電子コミック系の広告出稿減少に加え「UNICORN」の停滞もあり減益となった。2024年1~3月期も金融分野やゲーム分野の広告出稿が低調で減収減益となっている。

バリューコマースは、マーケティングソリューションズ事業(アフィリエイトサービス)とECソリューションズ事業を主に展開している。マーケティングソリューションズ事業の業種別売上構成比は金融分野が3割強と最も高く、そのほか幅広い業種をバランスよく手掛けているのが特徴だ。パートナーサイト数は2024年3月末で78万サイト、広告主数(ID数)は708件となっている。2024年1~3月期の同事業の業績は金融分野でスポット案件を獲得したものの、家電のほか人材や美容関連が減少し、の低調が響き、前年同期比で若干の減収減益となった。

レントラックスは、成果報酬型広告サービス事業と中古建設機械マーケットプレイス関連事業を主に展開している。成果報酬型広告サービス事業の業種別売上構成比(2024年3月期実績)は、金融が39%と最も高く、次いで不動産が10%、自動車買取やエステが各8%で、2024年3月末のパートナーサイト数は32万サイトとなっている。2024年3月期の同事業の業績は金融及び物販分野の減少が響いて前期比6%の減収減益となった。2025年3月期は新規ジャンルの開拓を進めることで増収増益を目指しているが、4月の広告取扱高は前年同月比で2ケタ減と低調な滑り出しとなっている。

株価指標について見ると、同社の株価(2024年5月28日終値)は2024年9月期の予想PERで13.5倍と他4社が7~27倍の水準で評価されているなか、平均水準での評価となっている。ただ、EV/EBITDAは0.1倍と大手5社のなかで唯一、1倍を下回る評価となっており、現在の時価総額は手元キャッシュとほぼ変わらない水準にとどまっている。EV/EBITDAとは企業を買収する場合に、買収コスト(時価総額+有利子負債-現金及び預金)を期間収益(営業利益+償却費)の何年分で回収できるかを簡易的に指標化したものであり、倍率が低いほど買収コストを短期間で回収できることを意味し、株式市場での成長期待が低いことの裏返しであるとも言える。とはいえ、同社の業績は相対的に見れば他社が苦戦するなかでも底堅く推移しており、現在推進している事業戦略により業績が成長軌道に乗ってくれば、株式市場での評価も変わるものと弊社では考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)《HH》

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