高島 Research Memo(6):2025年3月期は増収営業増益を見込む

2024年6月10日 14:26

*14:26JST 高島 Research Memo(6):2025年3月期は増収営業増益を見込む
■今後の見通し

高島<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0800700?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><8007></a>の2025年3月期の連結業績は、売上高で前期比4.3%増の94,000百万円、営業利益で同14.4%増の2,000百万円、経常利益で同0.2%減の2,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同66.9%減の1,600百万円を見込んでいる。建材セグメント、産業資材セグメント、電子・デバイスセグメントのすべてのセグメントで増収増益を見込む。特に、建材セグメントと産業資材セグメントは、連結子会社化した企業とのシナジーを追求し、同社が提供するソリューションの機能強化・拡充に注力することにより業績を拡大させていく方針だ。電子・デバイスセグメントは、事業環境の見通しは厳しいものの、営業活動を引き続き強化することにより業績を拡大させていく。連結ベースの営業利益に関しては、増収効果に加えて、岩水開発のM&A関連費用が剥落することや、同社を連結子会社化した効果が通年で発揮されてくることなども増益要因となる見通しだ。親会社株主に帰属する当期純利益が前期比66.9%減と大きく落ち込む想定であるのは、2024年3月期に固定資産の売却に伴い計上した特別利益がなくなることの反動であり、事業自体は順調な進捗を見込んでいる。

2025年3月期は中期経営計画「サステナV(バリュー)」の2年目にあたる。既に前倒しで2024年3月31日をもってプライム市場上場維持基準の全項目を充足したが、引き続き資本コストを意識しながら戦略的投資を積極化することにより企業価値向上に注力していく。なお、2025年3月期より同社は、アセットアロケーションの見直しと産業資材セグメントの事業再編に伴い、賃貸不動産セグメントを消滅させる形でセグメント区分を変更する予定である。またこれに伴い、従来、セグメントごとに配賦していたコーポレートコストを全社費用として独立させる方針だ。これにより、各セグメントにおける利益の状況、及び各部門が直接的に担う利益水準をより明確化する。

セグメントごとの見通しは、以下のとおり。

(1) 建材セグメント
売上高は前期比2.6%増の59,700百万円、セグメント利益は同3.2%増の2,050百万円を見込んでいる。各分野ともに提供機能の強化・拡充をより一層推進しながら利益を積み上げていく方針だ。大型物流施設や工場などの非住宅建築物をメインに扱う建設資材分野においては、堅調な市場推移を見込んでいる。そうしたなかで、岩水開発が持つ工事施工機能と高島の持つ販売機能を組み合わせることにより着実に受注を積み重ねていく。断熱資材分野に関しても市場のニーズは安定して推移することを見込んでいる。同分野に関しては、省エネに対するニーズが高まりを見せるなか、将来的な市場規模の拡大を見込んでいる。そうしたなか、顧客ニーズに沿った機能を確実に提供し、業績を拡大させていく方針だ。再生可能エネルギー資材分野に関しては、原油をはじめとする燃料コスト上昇を背景に、再生可能エネルギーに対するニーズが好調に推移することを見込んでいる。新エネルギー流通システムが持つ工事施工機能と高島の販売機能を組み合わせることにより、提供機能の強化・拡充を図りながら業績の拡大に注力していく。住宅資材分野に関しては、住宅着工件数の減少が見込まれるなど、厳しい市場環境となることを想定している。そうしたなかにあっても、顧客のニーズに丁寧に応え、業績を拡大させていく構えだ。

中期経営計画「サステナV(バリュー)」において同セグメントは、「EC市場の成長を背景に拡大する大型物流倉庫等の機能建材・省力工法」「災害対策・住宅高性能化」「工場や自治体などの自家消費型太陽光発電」「EV関連商材」をキーワードに拡大するニーズを業績に取り込んでいく戦略を掲げている。足元では、新エネルギー流通システムと岩水開発の連結子会社化により、同社の提供機能が強化・拡充されている状況だ。2025年3月期以降に関しても、戦略投資を実行する領域を明確化しながら業績の拡大に注力していく。

(2) 産業資材セグメント
売上高は前期比2.4%増の17,600百万円、セグメント利益は同4.7%増の750百万円を見込んでいる。自動車・医療・建築などをターゲット領域に営業強化、メーカー機能強化を図ることにより業績を拡大させていく方針だ。特に樹脂関連資材に関しては、顧客である自動車業界がEVマーケットへの過渡期にあるなか、EV向け物流資材をはじめとする市場の変化を的確に捉えた商材を提供することにより業績拡大を目指す。また、繊維関連資材に関しては引き続き円安を受けてアパレル業界のニーズが低迷することを見込んでおり、市場環境としては厳しい見通しだ。そうしたなかにあっても、OEMなどのより付加価値の高いソリューションを顧客に提供することにより、業績を堅持・拡大させていく。

「サステナV(バリュー)」においては「EV関連物流資材」「機能産業資材(耐火、防災、物流、医療関連)」をキーワードに多様化する顧客のニーズに的確に応え、業績を拡大させていく方針を掲げている。2024年4月からは、新たに子会社として高島インダストリーズ(株)を設立し、高島が担っていた産業資材事業を移管した。これは、変化の激しいビジネス環境に対応していくために、新たなガバナンス体制を構築し、産業資材セグメントに属するグループ会社の有機的連携を高め、さらに意思決定の迅速化や注力事業への機動的な人材投資などを図るなど、競争力の向上を目的としたものである。新会社の設立に伴い、同セグメントにおける戦略的投資の質と速度がさらに高まっていくことが期待される。

(3) 電子・デバイスセグメント
売上高は前期比12.9%増の16,700百万円、セグメント利益は同15.0%増の500百万円を見込んでいる。半導体供給不足問題は解消したものの民生電子機器市場の長期低迷により、製品在庫が積み上がる一方で、リードタイムの長期化により発生した過剰な部品在庫を消化できず、厳しい市場環境が継続することを見込んでいる。そうしたなかにあっても、顧客の求める電子デバイスを決められた納期に高い品質で納入するという基本を徹底していく。市場が低迷するなか、低価格戦略を武器に市場参入してくる競合もあるという。同社は技術と品質をキーワードに、従来からの強みにさらに磨きをかけることにより、適正な利益水準を確保していく方針だ。また、現中期経営計画「サステナV(バリュー)」の下で、引き続き省エネ対応デバイスをグローバルレベルで顧客に提供し、サステナ社会の実現に貢献していく。加えて、タイとベトナムの工場への投資による生産体制の強化も適宜実施していく方針だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)《HN》

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