NECキャピ Research Memo(6):2024年3月期はファイナンス事業の伸長等により過去最高益を達成(2)
2024年6月10日 14:06
*14:06JST NECキャピ Research Memo(6):2024年3月期はファイナンス事業の伸長等により過去最高益を達成(2)
■NECキャピタルソリューション<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0879300?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><8793></a>の業績動向
ファイナンス事業においては、配当収入や金利収入の増加に加え、投資有価証券の売却等により売上高は9,110百万円(前期比38.7%増)、売上総利益は6,517百万円(同34.9%増)、営業利益は3,320百万円(同54.2%増)と大幅な増収増益となった。ファイナンス事業全体の契約実行高は同5.3%減であるが、契約形態別では一括ファクタリングが同1.4%増と微増であったのに対し、企業融資は同13.9%減となっている。これはLBOファイナンスやエクイティ等の共同投資の取り組みが進展することでアセットの入替が進み、配当収入や株式売却益などといった新たな収益源が加わって業績の押し上げに貢献したことを表しているものと言えよう。
インベストメント事業においては、前期の大型の販売用不動産売却の反動で、売上高が13,705百万円(前期比39.9%減)となり、営業利益も4,073百万円(同7.7%減)となった。内訳としては、アセットビジネスは前期に大型案件のEXIT(投資の回収)等があった反動で売上高は92億円(同13.2%減)となったが、与信費用の戻し入れにより営業利益は33億円(同3.1%増)と前期比微増となった。また不動産ビジネスについても前期の大型不動産売却の反動で売上高は40億円(同66.1%減)、営業利益も8億円(同42.9%減)と減収減益となったが、足元の賃料収入は着実に計上できている。その他、アドバイザリー収入は売上高5億円(前期は4億円)と前期並みであった。
3. 営業資産残高の状況
2024年3月期の営業資産残高は9,825億円となり、前期比で164億円の増加となった。内訳としては、リース事業は5,906億円と同219億円減となっているが、前期までのGIGAスクール特需後の逓減が主因で、この落ち込みを情報通信機器リースや小口リース、及び海外現法の資産増加により穴埋めした。ファイナンス事業は、同3億円増加の2,427億円となっているが、前述の通り企業融資を中心に従来の貸付けから新たなファイナンス形態の契約でアセット入替が進んでおり、今後の収益性拡大が期待される。インベストメント事業は同352億円増加の1,193億円となったが、子会社であるリサ・パートナーズにおいて安定的な収益確保のための新たなアセット獲得等の取り組みにより堅調に残高を積み上げている。その他の事業はヘルスケアや太陽光発電に関する資産増加により28億円増の299億円となった。
与信関連費用については、リース事業において増加したが、インベストメント事業で戻入益の計上があり全体としては21億円から15億円に改善した。
4. 財務状況
(1) 財政状態
2024年3月期末における総資産は、前期末比61,487百万円増加し、1,117,363百万円となった。主な要因は、賃貸資産が28,852百万円、現金及び預金が18,362百万円、販売用不動産が10,141百万円増加したことである。なおリース債権及びリース投資資産は28,489百万円減少している。負債は前期末比53,512百万円増加し、980,573百万円となった。主な要因は、コマーシャル・ペーパーが29,000百万円、長期借入金が18,005百万円増加したことである。
純資産は前期末比7,974百万円増加し、136,790百万円となった。主な要因は、利益剰余金の増加4,060百万円、為替換算調整勘定の増加1,782百万円、非支配株主持分の増加1,721百万円である。この結果、2024年3月末における自己資本比率は、前期と同じ10.4%となっている。
(2) キャッシュ・フローの状況
2024年3月期末における現金及び現金等価物は53,722百万円となり、前期末比18,165百万円増加した。営業活動によるキャッシュ・フローは21,344百万円の支出(前期は29百万円の収入)となった。主な要因としては、税金等調整前当期純利益11,824百万円、リース債権及びリース投資資産の減少30,091百万円があった一方で、賃貸資産の取得による支出46,066百万円、販売用不動産の増加10,583百万円等があったことによるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは8,313百万円の支出(前期は9,581百万円の支出)となった。主な要因は、投資有価証券の償還による収入13,089百万円、投資有価証券の取得による支出21,351百万円である。
財務活動によるキャッシュ・フローは49,343百万円の収入(前期は7,875百万円の収入)となった。主な要因としては、長期借入金の返済による支出151,478百万円、長期借入れによる収入167,162百万円、コマーシャル・ペーパーの増加額29,000百万円によるものである。リースやファイナンス等のための資金を主に長期借入金、社債及びコマーシャル・ペーパーにより調達している状況であるが、金利環境については今後も流動的であり注視が必要と考えられる。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)《AS》