NECキャピ Research Memo(1):NECグループの金融サービス会社として新たな社会価値を創出

2024年6月10日 14:01

*14:01JST NECキャピ Research Memo(1):NECグループの金融サービス会社として新たな社会価値を創出
■要約

NECキャピタルソリューション<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0879300?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><8793></a>は、NEC<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0670100?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><6701></a>の持分法適用会社で、NEC製品を含む情報通信機器、事務用機器、産業用機械設備、その他各種機器設備等のリース・割賦及びファクタリング(売上債権買取)、融資、集金代行業務等を展開する。これまでICT製品以外の取扱を徐々に増やし、サービス領域を拡大。さらに、高付加価値な事業への転換を目指し、投融資やファンド組成といった金融サービスに取り組むなど、多角化を図っている。また、「社会価値」の向上と「経済価値」の創出の両立を図りながら持続的な成長を目指す「CSV(Creating Shared Value=共通価値創造)経営」の実践に取り組んでいる。

1. 2024年3月期業績
2024年3月期業績は、売上高255,857百万円(前期比0.9%減)、営業利益11,694百万円(同0.2%減)、経常利益11,818百万円(同5.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益7,034百万円(同9.6%増)での着地だった。営業利益及び経常利益は前期比減収となったが、最終利益は増益で過去最高益を更新した。これは主に前期にインベストメント事業で大型の販売用不動産の売却があった反動や、リース事業における与信関連費用の増加に伴う貸倒引当金繰入額の計上等によるものである。期初の業績予想比でも、売上高で1.6%減、営業利益で2.6%減、経常利益で5.5%減、親会社株主に帰属する当期純利益で6.2%減と、それぞれわずかに届かなかった。最終利益では過去最高益となったが、これはインベストメント事業におけるファンド収益に関する非支配持分の控除額が前期比減少したことが直接原因ではあるものの、同社では各事業において収益力の強化を徹底したことにより、売上総利益を着実に積み上げたことが寄与したものとしている。同社の属するリース業界の2023年度の状況は、リース取扱高実績で4兆5,709億円(前年度比7.6%増)※と、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)後の本格的な経済活動の再開等を受けて堅調に推移しているが、同社のリース事業の契約実行高は官公庁向けの大型案件が一段落したこともあって前期比4.3%減となった。一方で足もとの営業活動は順調に進捗し、引き続き官公庁向けの大型案件の受注に成功したことや民需の堅調な受注もあって、成約高は同10.3%増の実績を確保した。

※(公社)リース事業協会「リース統計(2024年3月)」より


2. 2025年3月期業績予想
2025年3月期の業績は、売上高260,000百万円(前期比1.6%増)、営業利益12,000百万円(同2.6%増)、経常利益12,500百万円(同5.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益8,000百万円(同13.7%増)を計画している。官民を含めた需要の回復を背景に、リース事業については引き続き持続的な成長を図るとともに、ファイナンス事業やインベストメント事業の収益を拡大することで売上・利益双方の計画を達成するとしている。国内の経済状況は、コロナ禍後の経済活動のさらなる回復が見込まれるものの、世界情勢の不確実性の高まりや、為替や金利の動向、国内企業の信用状況の推移等、同社を取り巻く事業環境は依然として注視が必要な状況下にあると考えられる。そのようななか同社は、必要なリスク管理を徹底することで与信コストの増加を抑制しつつ、収益性を重視した営業活動を展開することで計画達成につなげる考えだ。

基幹事業であるリース事業においては、NECとのパートナーシップによって2024年3月期に受注した官公庁向け大型案件の実行を予定しているほか、日銀の金融政策の変更もあって、顧客側のリース料の上昇に対する理解も進むと考えられ、計画達成に向けた追い風となる。ファイナンス事業においてはLBO(レバレッジド・バイアウト)ファイナンス等の新たな取り組みを推進してより収益性の高いアセット構成を目指すほか、インベストメント事業においても、安定的に収益の確保できる賃貸レジデンスへの投資等を進めることで収益拡大を推進する考えである。

3.中期計画2025の進捗状況
同社は中期計画2020の実践結果を踏まえて、2023 年4月に新たなグループビジョン2030「次世代循環型社会をリードする Solution Company」と中期計画2025(2023~2025年度)を発表した。2030年以降の次世代循環型社会の実現に向け、同社らしい循環型サービスの創出・発展・収益確立の3つのステップを設定しており、第1段階として、中期計画2025(2023~2025年度)において循環型サービスの創出を目指している。3ヶ年で当期純利益100億円、ROA0.9%※、ROE8%を達成する財務目標を掲げたほか、カーボンニュートラル実現に向けたCO2の削減、社会インフラ整備の推進、ICTビジネス拡大に伴う循環利用の促進、気候変動対応の推進等をベンチマークとしてCO2の2022年度実績比20%削減等の非財務目標も設定している。

※連結当期純利益÷連結営業資産平均残高


中期計画では4つの戦略を掲げて2024年3月期からスタートしたが、1つ目の「サービス事業の拡大、新たな循環型サービスを創出」では、太陽光発電においてコーポレートPPA ※1分野における2件の協業プロジェクトを立ち上げたほか、PFI※2では受託案件数で計画を上回る実績を挙げ、ヘルスケアウェアハウジングでも案件を積み上げた。コーポレートアドバイザリーにおいても、日本M&Aレビューにて、日本企業関連の公表案件、完了案件数でランクインするなど成果が現れている。2つ目の「注力事業への戦略的投資による成長加速」では、リース事業においてICT関連サービスとしてのPC-LCMサービス(PCの調達から廃棄までのライフサイクル全般を管理するサービス)の拡大やIT資産管理などの付加価値を提供する案件を推進したほか、ファイナンス事業では金融プロダクトの領域を拡大し、LBOファイナンスやエクイティ等の共同投資の取り組みを事業の収益拡大につなげた。インベストメント事業では収益安定化のため、大型のインカムゲインアセットの取得を計画通り進めた。3つ目の「ベンダーファイナンスの強化および顧客基盤拡充」ではベンダーと連携したクラウドサービス等の月額提供モデルの取り組みや、ベンダーの顧客提案をファイナンス・プログラムで支援する案件を拡大した。4つ目の「経営基盤強化」ではDX推進のための組織整備やCDP気候変動レポートでの「A-」スコア獲得、健康経営優良法人2024の認定取得など、経営基盤強化のための施策を順調に進めている。

※1 企業等の需要家が発電事業者から長期固定価格で再生可能エネルギー電力を調達する方法。PPAはPower Purchase Agreementの略で電力販売契約を指す。
※2 Private Finance Initiativeの略で、民間の資金と経営能力・技術力を活用し、公共施設等の設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行う公共事業の手法。


■Key Points
・NECと戦略的なパートナーシップで連携を推進
・2024年3月期決算は、最終利益で過去最高を記録
・中期計画2025目標値は当期純利益100億円、ROE8%
・中期計画2025における3つの事業戦略は計画通り進捗

(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)《AS》

最新記事