「死んだ馬を叩く」とは? 馬に関連する英語の成句・ことわざ
2024年5月30日 11:31
前回は農場由来の英語の成句・ことわざを取り上げたが、今回もそれと関連して動物、特に馬にまつわる成句を2つ紹介したいと思う。どちらも19世紀から使われている古い表現だが、現在もさまざまな場面で広く使われている表現だ。
【こちらも】「泥の中の豚のように幸せ」とは? 農場由来の英語の成句・ことわざ
■Beat a Dead Horse
「beat a dead horse」、直訳すれば「死んだ馬を叩く」となるが、これは、「すでに議論や決定が済んでいる話題を何度も繰り返し話すこと」を意味することわざだ。
19世紀にはすでにポピュラーなことわざだったようで、そのほか「flogging the dead horse」や、「whipping the dead horse」というバリエーションも使われるようになった(「flog」も「whip」も「鞭打つ」という意味)。
ちなみに、このことわざに歴史的根拠はなく、英語圏の人々が実際に死んだ馬を殴った習慣があったわけではない。ただ、「dead horse」という表現はさらに以前からあり、17世紀のイギリスではすでに役に立たないものの例として「dead horse」が使われていた。
たとえば、ウェールズの著述家、James Howell(1594頃 - 1666頃)に、「One may get a fart from a dead horse, as soon as a farthing from him.」という言葉がある。直訳すると、「死んだ馬から屁を得るのは、その馬からfarthing(イギリスの昔の硬貨、ペニー)を得るのと同じくらい早い」となるが、要は、死んだ馬からは何の有益なものも得られないという意味だ。
ともあれ、「beat a dead horse」は、すでに解決済みの話題を再度持ち出すことの不毛さを表すために使われる表現だ。特に、ビジネスや政治的な場でよく用いられる。たとえば、「Let's not beat a dead horse; we have already decided on this matter last week.」などと言う。
■From the Horse's Mouth
「from the horse’s mouth」とは、「元の情報源から」「間違いのない情報源から」という意味で使われる表現だ。ある情報について、それが確実に真実であることを知る人物から直接聞いた場合に用いられる。
これは19世紀にはすでに存在していたが、最初の頃は文字通り、馬から人間への情報の伝達について使用されていた。もちろん馬が実際に人と話すわけではなく、競馬の文脈で使用されていたという意味だ。
騎手や調教師のように、馬と直接接する人から得られる情報がレースを左右する貴重な情報源だったため、そこから、最も信頼性が高いとされる情報源を「馬の口から」得られた情報と表現するようになったのだ。
この表現は、現代でもビジネス、政治、メディアなど多岐にわたる分野で用いられており、情報の信憑性を保証するために引用される。たとえば、「We need to get this information from the horse's mouth before making any decisions.」(決定を下す前に、情報源から直接確認する必要がある。)といった使い方がされる。(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る)