利上げにも影響!? 気になる米国の家計貯蓄
2024年5月22日 08:50
●米国の余剰貯蓄がマイナスに
米サンフランシスコ連銀の調査によると、新型コロナウイルスで蓄えた資金を米国の家計は使い果たしたという。
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米国の家計の余剰貯蓄は、2020年3月~2021年8月までにパンデミック期の給付金等で2兆1000億ドル(約325兆5000億円)にまで膨れ上がった。だがその後は毎月取り崩されており、2024年3月には、約700億ドルのマイナスに転じたと見られている。
米国の景気は好調で株価も高く、それがFRBの利下げの足かせになると見られていたが、家計貯蓄のマイナスが利下げを早めることになるのだろうか?
●パンデミック給付金と家計余剰貯蓄
2020年の新型コロナパンデミックで、家計向けの現金給付や失業手当などの手厚い経済支援に加え、ロックダウンなどによって旅行控えや買い控えなどの消費支出が抑えられたことで、余剰貯蓄が積み上がった。
急増した家計貯蓄だが、2022年にはすでに約38%も激減していた。給付金の打ち切りに加え、物価高が直撃したことが原因である。ニューヨーク連銀は予期せぬ収入が得られると積極的に取り崩す「米国特有の現象」とも分析している。
余剰貯蓄は消費行動だけでなく、学生ローンの返済や株式投資にも充てられていたと見られている。
●懸念される急激な景気悪化と株価への影響
ニューヨーク連銀の報告では、2024年第1四半期の米家計債務も約18兆ドル(約2800兆円)と前四半期よりも増加しており、パンデミック前を上回っている。
米国の相次ぐ利上げにより、住宅ローンや学生ローンに加え、クレジットカードローン、車のローンの利払いが重荷になっている。
これまで余剰貯蓄に支えられていた返済率も急激な悪化が見られる。
11月に米大統領選挙を控えるバイデン政権は、4月に27.7万人の学生ローンを免除するなど対策を打っているが、その効果がどこまで持続するかは未知数である。
コロナ禍では給付金を生かし、在宅勤務で個人投資家が株式投資をしていたことで株価が上昇していたとも言われていた。
失業率は低く抑えられてはいるが、今後米国の家計消費が急激に悪化する恐れもある。
それによりインフレの鎮静化と景気の悪化が同時に起こり、利下げを早めざるを得なくなることになるかもしれない。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)