【映画で学ぶ英語】『ザ・エージェント』の映画史に残る名言
2024年4月2日 16:37
1996年に公開された映画『ザ・エージェント』は、コメディタッチのスポーツ・ヒューマンドラマだ。トム・クルーズが主人公のスポーツ・エージェント役を務め、彼の相手役に抜擢されたレネー・ゼルウィガーは本作でブレイクした。
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1997年のアカデミー賞では作品賞を含む5部門にノミネートされ、アメフト選手役を務めたキューバ・グッディング・Jrが助演男優賞に輝いている。
今回はこの映画の名言から、”You had me”という表現の意味や使い方を解説したい。
■映画『ザ・エージェント』のあらすじ
ジェリー・マグワイア(トム・クルーズ)は、大手スポーツエージェンシー・SMIに勤務する30代半ばの敏腕エージェント。ある日ジェリーは、大怪我をしても契約のために次の試合に出場しようとする選手の姿を見て、エージェントのあり方に疑問を抱く。
「クライアントの数を減らしてより良い関係を築くべきだ」というミッションステートメントを会社に叩きつけたジェリーは、あっさり解雇されてしまう。ジェリーは、彼のミッションステートメントに共感したシングルマザーのドロシー(レネー・ゼルウィガー)とともに、新たなエージェンシーを立ち上げた。
ところがジェリーのもとに残ったクライアントは、アリゾナ・カージナルスとの契約に不満があるアメフト選手・ロッド・ティドウェル(キューバ・グッディング・Jr)ただ1人。ジェリーはロッドのマネジメントに全力を傾け、やがてロッドはチームの快進撃に貢献する選手となっていくのだが……。
■映画『ザ・エージェント』の名言
ジェリーとドロシーは仕事を越えた良い関係になったものの、ドロシーは子どものために転職を決意する。ドロシーを手放したくないジェリーは、彼女にプロポーズ。子どもがジェリーになついていたこともあって、ドロシーはそれを受け入れた。
しかし、ジェリーとの結婚に不安が残るドロシーは、離婚を切り出す。クリスマスシーズン、ロッドの大活躍で選手とエージェントの緊密な関係の重要性を証明したジェリーは、ドロシーの家を訪れる。
復縁を求めて弁舌を振るうジェリーに、ドロシーはただ一言、次の名言を放った。
Shut up. Just shut up. You had me at ‘hello.’ - 言葉など要らないわ、戻ってくれただけで……。
■表現解説
”You had me”というイディオムは、誰かに説得されたり、同意したりするときに使われる表現だ。相手の話に興味を示したり、同意したりするときに用いられ、”at~”をつけて心が決まったきっかけを示す。
例えば、夏の旅行の計画を話していて「ヨーロッパに行くことを考えている」と言う相手に、”You had me at 'Europe'! I've always wanted to go there.”というように用いられる。「ヨーロッパ」と聞いたときに説得された、心は決まった、という意味だ。
同様に『ザ・エージェント』の”You had me at ‘hello.’”というセリフは、「あなたがhelloと言ったときに、私の心は決まっていた」という意味になる。
ここで’hello’は、ジェリーがドロシーの家に入ってきたときの挨拶の言葉を指す。その後のジェリーの大演説などなくてもドロシーは復縁するつもりであったということだ。「戻ってくれただけで……」という翻訳は、こういった文脈を的確に表している。
一方、”You had me at ‘hello.’”というセリフは流行語となって、映画の文脈とは別に、「最初に挨拶したときから、説得された、惚れ込んだ」という意味で一般的に使われるようになっている。この場合、恋愛感情ばかりでなく、より広く「人の心をつかむ」という意味で用いられる。
例えばForbes(電子版)の2011年8月の記事「Have Them at "Hello"」では、プレゼンの最初で聴衆の心をつかむことが重要であることを表現するために、このイディオムが使われている。(記事:ベルリン・リポート・記事一覧を見る)