相場展望3月28日号 米国株: 2月消費者物価指数に注目、インフレ懸念と金利動向に影響 日本株: 3月末までは堅調な株価を予想、早期の利益確定も一案
2024年3月28日 11:29
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)3/25、NYダウ▲162ドル安、39,313ドル(日経新聞より抜粋)
・NYダウは続落して終えた。前週に主要株価指数の最高値が続き、高値警戒感から主力株に利益確定売りが出た。一部の大型ハイテク銘柄は欧州の規制強化への懸念が株価の重荷となり、米株相場を下押しした。
【前回は】相場展望3月25日号 米国株: 米・半導体株価指数(SOX)の動向が気懸り 日本株: 日本経済は「デフレに舞い戻る」懸念、株価は3月末まで堅調
・NYダウは前週に+761ドル上昇し、心理的節目の40,000ドルに接近する場面があった。四半期末を控えていることもあり、主力株には機関投資家の利益確定や持ち高調整の売りが出やすかった。
・欧州連合(EU)の欧州委員会は3/25、巨大IT(情報技術)企業を規制するデジタル市場法(DMA)に違反した疑いでアップルとアルファベット、メタプラットフォームズについて調査を始めたと発表した。規制が収益を圧迫するとの見方からアップルが▲1%弱下げた。NYダウの構成銘柄ではないが、アルファベットとメタも下落した。大型ハイテク株への売りが投資家心理の悪化につながった。
・もっとも、NYダウの下値は堅かった。米連邦準備理事会(FRB)が年央にも利下げを始め、米経済の成長が続くとの楽観が米株への買いを誘った。FRBのクック理事は3/25の講演で「注意深く政策調整を進めれば労働市場の強さを維持することに努めながらインフレ率を目標の2%に戻すことができる」との認識を示した。
・インテルが下げた。中国が政府の使うパソコンとサーバー向けの半導体でインテル製などを規制する方針を導入したと伝わり、売り材料となった。スリーエムとホームデポも下落した。半面、ディズニーとアムジェンが上昇した。
・ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は6営業日ぶりに反落した。アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)やクアルコムに売りが出た。
2)3/26、NYダウ▲31ドル安、39,282ドル(日経新聞より抜粋)
・NYダウは小幅に、3日続落して終えた。四半期末を控えた持ち高調整の売りに押された。米株高を牽引してきた主力ハイテク株の下げも投資家心理の重荷となった。
・四半期末と月末を控え、機関投資家による利益確定や持ち高調整の売りも出やすかった。米国では今週末の連休を控え、市場参加者が少なく積極的な売買が手控えられているとの見方もあった。「薄商いで値動きが不安定になりやすかった」との声が聞かれ、大引けにかけて、売りが優勢となった。
・米株市場が聖金曜日で休場となる3/29に、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)物価指数の2月分が発表される。「想定よりも高めの伸びを示す可能性が意識され、休暇前に持ち高を減らす動きが出た」との見方もあった。
・朝方は買いが先行した。米経済が底堅さを維持するなか、米連邦準備理事会(FRB)が年央にも利下げに転じるとの見方が強い。NYダウが前日までの2営業日で▲467ドル下げた後で、一部の銘柄には下値を拾う動きがみられた。3/26発表の2月の耐久財受注額は前月比で市場予想以上に増えた。FRBが数か月後には利下げに踏み切り、米経済はソフトランディング(軟着陸)を達成できるとの観測が相場を支えた。
・個別銘柄では、ボーイングが下落した。スリーエムやナイキ、ホームデポも売られた。アマゾンやシェブロンも安い。一方、ユナイテッドヘルスやハネウェル、インテルが買われた。
・ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は小幅に続落して終えた。エヌビディアが取引終了にかかて下げ幅を広げ、指数の重荷となった。
3)3/27、NYダウ+477ドル高、39,760ドル(日経新聞より抜粋)
・NYダウは4営業日ぶりに反発して終えた。米景気の先行きに対する楽観が投資家心理を支え、相場全体の上昇に出遅れていたディフェンシブ株や景気敏感株などに買いが入った。引けにかけて上げ幅を拡大し、この日の高値で終えた。
・NYダウは前日までの3営業日で約▲500ドル下げ、短期的な高値警戒感や相場の過熱感が和らいだ面があった。この日は特に目新しい取引材料はなかったが、「米連邦準備理事会(FRB)が年央にも利下げに転換し、米景気の底堅い成長が続くとの見方が買い安心感となっている」との声があった。
・引けにかけて上昇の勢いが強まった。四半期末を控えた持ち高調整や利益確定の売りが一巡した一方、運用成績をよく見せるための機関投資家による「お化粧買い」が入ったとみられる。今週は3/29が聖金曜日で、株式市場や債券市場が休場となる。3連休を前に市場参加者が少ないなか、値動きが大きくなった。
・個別銘柄では、3/26に米食品医薬品局(FDA)が新薬を承認したことを受けてメルクが買われた。相対的に割安感のある銘柄を中心に物色が活発で、インテルやキャタピラー、ボーイングなどの上昇が目立った。半面、主要ハイテク株は高安まちまちだった。NYダウでは、アップルやアマゾンが上げた一方、セールスフォースが安い。NYダウの構成銘柄ではないが、エヌビディアの下げが目立った。
・取引終了後にFRBのウォラー理事が講演する。2月には早期利下げに慎重な姿勢を見せており、発言内容に変化があるのかが注目されている。3/29にはFRBが重視するインフレ指標の2月の米個人消費支出(PCE)物価指数の発表もある。
・多くの機関投資家が運用指標とするSP500種株価指数は前日比+44高の5,248で終え、3/21以来となる約1週間ぶりに最高値を更新した。
・ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は3営業日ぶりに反発し、前日比83高の16,399で終えた。テスラやアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)が上げた。
●2.米国株:2月消費支出物価指数の3/29発表に注目、インフレ加速懸念も
1)米2月個人消費支出の物価指数が3/29に発表で様子見姿勢が強まるか
・2月個人消費物価指数は上昇が見込まれる。
・インフレ懸念が増す可能性があり、注目したい。
2)エヌビディアは3/27、下げが目立つ
・3/27は前日比▲23.11ドル安・▲2.50%安となった。
・最近の株価の推移
3/07 926.69ドル
3/12 919.13
3/25 950.02
3/26 925.61
3/27 902.50
・米株価の上昇を主導してきたエヌビディア株であるが、一服感がみえる。株価主導役を維持しているか否か、注目したい。
3)物色の流れに変化?割安感のある景気敏感株などを中心に物色が活発
・米株価上昇を牽引してきた半導体関連株だか、主役交代するか注視したい。
●3.米アトランタ連銀総裁、「利下げは年内1回にとどまる」との見方を再表明(ブルームバーグ)
●4.シカゴ連銀総裁、年内3回の利下げを見込む、インフレは鈍化との認識(ブルームバーグ)
●5.クックFRB理事、利下げ時期は慎重に見極め、物価低下は一様でない(ロイター)
●6.米自動車「クライスラー」を傘下に持つステランティス、米で約400人削減(ロイター)
1)北米の従業員数は、2022年末の88,835人⇒2023年末の81,341人に減少した。2023年は米従業員を対象に早期退職を2回募集した。
●7.EU、米巨大IT3社を調査、支配的地位利用で寡占進めると(山陽新聞)
1)米巨大3社とは、アルファベット、アップル、メタ(旧フェイスブック)。
2)巨額制裁金の可能性も(NHK)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)3/25、上海総合▲21安、3,026(亜州リサーチより抜粋)
・米中対立の激化が警戒される流れとなり、3日続落し、約3週ぶりの安値水準に落ち込んだ。
・外電が3/24報じたところによると、米半導体大手のCPUを搭載したパソコンやサーバーについて、中国は政府機関による調達を段階的に中止する指針を打ち出した。それより先に、バイデン米政権は、半導体など先端技術品の中国輸出を規制強化する方針を示している。その他、米超党派議員は3/20、米国のインデックスファンドに対し、中国の株価指数に連動する一部商品への投資を禁止する法案を米議会に提出した、とも伝わった。
・ただ、下値を叩くような売りはみられない。
・産業支援策など中国の経済対策に対する期待感が根強いほか、人民元安の一服も好感された。
・指数はプラス圏で推移する場面もみられた。
・業種別では、ハイテクの下げが目立ち、医薬も冴えない。消費関連・証券・空運・軍事関連・メディア・娯楽なども売られた。半面、不動産はしっかり。李強・首相は3/24、世界大手企業80社以上のトップを招き、北京で開催した国際会議で、「不動産問題は深刻でない」と強調した。また、国務院の会議では、首相が不動産支援策の強化を求めたと伝わった。エネルギー・公益・銀行も買われた。
2)3/26、上海総合+5高、3,031(亜州リサーチより抜粋)
・買い戻しの動きが優勢となる流れで、4日ぶりに反発した。
・上海総合指数は前日までの続落で、約3週ぶりの安値を付けていた。当局が人民元安を容認したとの懸念が後退したことや、堅調な企業決算が相次いだことなども支えとなっている。
・ただ、上値は重い。米中対立の激化が懸念されるなか、指数は安く推移する場面もあった。
・米英両政府は3/25、両国の議員らにサイバー攻撃を仕掛けたとして、中国国家安全部の関連企業に制裁を科すと発表した。米中の両大国政府はこのところ、半導体分野などで制裁の応酬を続けている。
・業種別では、金融が相場を牽引し、不動産も高い。不動産には政策支援の動きが期待される。中国メディアは3/25、当局が近く、新たな不動産テコ入れ策を発表する見込み、などと報じた。公益・消費関連・素材・インフラ建設なども買われた。半面、ハイテクは安く、医薬・エネルギー・運輸・軍事関連が売られた。
3)3/27、上海総合▲38安、2,993(亜州リサーチより抜粋)
・投資家の慎重スタンスが再び強まる流れとなった。
・中国人民銀行(中央銀行)が3/27、人民レートの対米ドル基準値を再び元安方向に設定したことや、米中対立が激しくなりつつあることを嫌気した。
・中国商務部は3/26、米政府の電気自動車(EV)優遇策は公平な競争を阻害しているとして、世界貿易機関(WTO)に提訴したことを明らかにした。
・また、サイバー攻撃を受けたとして、米英両政府が中国国家安全の関連企業部の全部に制裁を科すと発表したことに反発し、中国外交部は3/26に「必要な対抗措置を取る」などと声明した。
・業種別では、ハイテクの下げが目立ち、不動産も冴えず、消費関連・インフラ関連・医薬・公益なども売られた。半面、銀行はしっかり、エネルギー・海運も買われた。
●2.「一帯一路」で約束した65%の8.3兆円が不履行、中国の対東南アジア援助=豪研究所調査(時事通信より抜粋)
1)豪州のシンクタンク、ローウィー国際政策研究所が3/27公表した調査報告書。
・2015~2021年の東南アジアの大規模インフラ開発事業で、中国は843億米ドル(約12兆8,000億円)の支出を約束したが、実際に支出したのは296億米ドル(約4兆5,000億円)で、履行率は35%にとどまる。
・タイやフィリピンの鉄道建設、マレーシアのパイプライン敷設が中止されたほか規模が縮小された事業もある。
●3.グッチ衝撃、中国で高級品販売が急減、高級品業界で消費減速が顕在化(ブルームバーグ)
●4.中国恒大、米破産法15条の申請を撤回、債務再編が困難(時事通信)
1)今年1月に香港で清算命令が出され、債務再編が計画通り進められなくなったのが理由。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)3/25、日経平均▲474円安、40,414円(日経新聞より抜粋)
・日経平均は5営業日ぶりに反落し、今日の安値で終えた。前週末の米NYダウの下落や円安・ドル高進行の一服感から、主力の輸出関連株など幅広い銘柄に売りが優勢となった。株価指数先物への売りの勢いが強まると、日経平均は大引けにかけて下げ幅を広げた。
・外国為替為市場で円安・ドル高進行に一服感が出ている。財務省の神田真人・財務官は3/25朝、足元の円安進行について「行き過ぎた変動に対しては、あらゆる手段を排除せずに適切な行動を取っていきたい」と記者団に述べて、市場を牽制した。政府・日銀による円買い介入への警戒感が高まり、トヨタやホンダなど主力の自動車株に売りが出た。
・前週末3/22の米NYダウが下落したのも株式の売りを促した。前場中ごろから株価指数先物への売りの勢いが強まると、日経平均もじりじりと下げ幅を広げた。月末にかけて上場企業が自社株買いを自粛する傾向があるなど、需給面の重荷もあった。
・一方、内需や高配当株の一角に買いが入ったほか、日本株の先高観を背景とした押し目買いが下値を支えた。3/22の米市場で半導体のエヌビディアが上昇し、半導体関連ではアドテスト株に買いが波及した。
・東証株価指数(TOPIX)は7営業日ぶりに反落した。JPXプライム150指数も7営業日ぶりに反落して終えた。
・個別株では、ファストリやソニー、シャープが下げた。一方、ニトリや楽天、日本取引所は上げた。
2)3/26、日経平均▲16円安、40,398円(日経新聞より抜粋)
・日経平均は小幅に続落して終えた。前日の米株式市場で主要株価指数が下落した流れを受け、ファストリなど主力銘柄の一角に売りが出た。期末を控えた機関投資家のリバランス(資産配分の調整)を目的とした売りも重荷になったとの見方があった。もっとも、日本株への押し目買い意欲は旺盛で下値は限られた。
・3/25の米株式市場では主力銘柄に利益確定の売りが出て、NYダウなど主要な株価指数が下げた。投資家心理の重荷となり、東京市場でもファストリなどの値がさ株が売られた。
・ただ、日経平均の下値は堅く、小高く推移する場面もあった。前日に日経平均は最高値から反落したが、デフレ脱却期待や企業収益改善など日本株を取り巻く環境は良好との見方が根強く、下値で買いを入れる動きが目立った。3/27に3月期決算銘柄の配当権利付き最終売買日を控え、配当権利取りの買いも
相場を支えた。方向感が乏しく、日経平均の日中の高値から安値を差し引いた値幅は248円と2/28の208円以来の小ささだった。
・東証株価指数(TOPIX)は反発した。JPXプライム指数も反発して終えた。
・個別銘柄では、ソフトバンクGやファナックが下落した。東急や日産自の下げも目立った。一方、東エレクやスクリン、信越化は堅調に推移した。
3)3/27、日経平均+364円高、40,762円(日経新聞より抜粋)
・日経平均は3営業日ぶりに反発した。3月期末を前に個人投資家や機関投資家による配当に絡む買いが強まり、史上最高値を上回る場面もみられた。日銀の緩和的な金融環境が継続するとの見方も投資家心理を強気に傾けさせた。
・東エレクやファストリといった値がさ株の一角が牽引して、日経平均は3/22に付けた史上最高値40,888円を上回る前日比+581円高の40,979円まで上昇する場面があった。大引けにかけて、利益確定売りが出て伸び悩んで終えた。
・今日は3月末の権利付き最終売買日とあって、個人投資家などから配当取りを意識した買いが入りやすかった。高配当株とされる商社などに買いが集まった。機関投資家が期末配当の受け取りに先回りして株価指数先物などに投資する「配当再投資」への思惑も意識された。「配当込みの株価指数」に連動した運用を目指す機関投資家は、同指数との値動きのズレを抑えるため、配当を受け取る前にそれと同額を指数先物の買いに充てる。この期末特有の買いが相場を支えるとの見方から、株価指数先物主導で日経平均は強含む場面が目立った。
・外国為替市場では円相場が一時151.97円近辺まで下落し、152円台に迫った。その後は為替介入への警戒感から円は下げ渋る場面もあったが、日米金利差を背景にした円安・ドル高基調が続くという見方から輸出関連株の買い安心感につながった。日銀の植田和夫総裁は3/27、衆院財務金融委員会に出席し「当面、緩和的な金融環境が継続する」との見解を改めて示した。こっれまでのハト派的な姿勢を維持し、短期筋の株価指数先物買いが強まる場面もあった。
・東証株価指数(TOPIX)は続伸した。JPXプライム150指数も続伸して終えた。
・個別銘柄では、TDK、ダイキン、アドテスト、住友不が上昇した。一方、富士フィルム、ソフトバンクG、信越化、ネクソンが下落した。
●2.日本株:3月末までは、底堅い株価を予想でき、利益確定するのも一案
1)日経平均は過去最高値を更新し、利益確定売りも出やすいが、底堅さを維持
・要因
・配当の再投資による株価上昇期待。
・4月は海外投資家の買い越しするという経験則がある。
・円安が追い風となる輸出関連銘柄の買い越し期待。
2)物色銘柄の拡大
・半導体関連銘柄から、割安株を中心に買い物色の広がりがみられる。
・景気敏感株や消費関連株の上昇に波及。
3)新高値銘柄数が依然として多く、相場の牽引力に強さがある
・新高値銘柄3/27207
新安値銘柄3/271
4)ただ、騰落レシオ(6日)は高い水準圏にあり、注意喚起している
・3/27 156.47
5)3月末の株価は、機関投資家の運用成績もあり、高値維持の意識がある
・ただし、4月初めは運用成績の実現利益の早期確保のため、売られやすい。
・そのため、3月末までの高値を狙って、利益確定を急ぐのも一案。
●3.「物価、悪い方向に向かっている」と7割近く=内閣府の世論調査(NHK)
●4.日銀短観の民間予測、大企業・製造業は4期ぶりに悪化する見込み(NHK)
1)一部の自動車メーカーが国の認証取得を巡る不正から車の出荷を停止したため。こうしたメーカーに素材を供給している「鉄鋼」や「非鉄金属」などの業種で景況感が悪化する。
2)ただ、影響は一時的で、今後は回復に向かうとの見方が大勢です。
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・7956 ピジョン 業績堅調
・9602 東宝 業績好調
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