EVを普及するために解決すべきだが、未だに残された大きな問題

2024年3月14日 11:55

 EVは当初から抱えていた大きな問題を解決できていない。その中でも主要なものを見てみよう。

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 (1)バッテリーの原材料となる希少金属が、特定の地域に偏在しており高価である。そのため航続距離を伸ばすために大量に使用されると、EVの製品価格が高騰する。希少性の少ない原材料が発見されるまでは、付きまとう根本的なジレンマだ。

 (2)原料の産地が限られているので、思惑が価格の騰貴を招くリスクがあるとともに、原材料産出国に深刻な環境被害を招来するリスクがある。EVへの移行が各国のタイムスケジュール通りに進んだ場合には、世界中で発生する膨大な需要を満たす供給は不可能だ。需要と供給のミスマッチを解消するには、潤沢に供給できる代替の原材料を発見する以外にない。

 (3)充電インフラの整備が思惑通りに進まない。利用者は充電スタンドの心配がなくなるまでEVを我慢する傾向が強く、充電機設置業者には利用者が増えなければ経営が成り立たないというジレンマがある。

 充電問題に関する条件が、戸建居住者とマンション居住者とでは全く違う。戸建居住者は帰宅後に所要時間を意識せずに自宅で充電できるが、マンション居住者は限られた充電設備を居住者間で順繰りに使うか、駐車台数分の充電設備が必要になる。

 マンション居住者が充電設備を毎日順繰りに使うということは、想像上の「おとぎ話」のようなもので実現は望めない。既にある駐車場に充電設備を増設するための膨大な経費を、誰がどんな形で負担するかという協議は、合意するにしても相当の時間を要するだろうから、実現の可能性は低い。

 (4)寒さに弱い。今冬、米国の中西部や東部を襲った大寒波が、EVの脆弱性の一端をむき出しにした。寒冷地域で充電設備が凍結して、充電不能状態に陥った多くのEVが立ち往生する事態が発生した。

 寒冷地域でバッテリーの性能が低下するという現象は、現状では避けられない物理現象と見做される。しかし、航続距離が40%程度減少すると理解していても、突然襲来する寒波に連動して適切な対応を取ることはほとんど考えられない。

 特に、想定を超える低温に晒されたバッテリーは、さらに急激な性能の低下を示すようだ。例えば、低温状態で完全に放電してしまった場合、最悪のケースでは再充電ができなくなるというリスクすら抱えている。再充電不能という最悪の事態を回避するため、一定レベル以下にならないように給電を停止する機能がセットされている場合もあるが、この場合は動けなくなる時が早まるだけだから、直面する危機に対応することはできない。

 (5)大量のバッテリーを積み込むので重量が嵩むことから、タイヤの摩耗が早いという点で環境に対する負荷と財布への負担が大きい。

 EVへの移行は脱炭素社会を実現するために絶対必要だ、という理念が先行し過ぎていることは否めない。炭素の発生を抑止するところにポイントがあるなら、当然EVの生産過程を通してどの程度の脱炭素が実現できているのかを検証すべきだ。

 現在EVを売りまくっているのが中国だが、EVの製造過程全体で石炭火力発電の占める割合が非常に高いと言われている。本来、EVの生産から利用の期間を通して脱炭素が実現できていなければ、意味がない。

 EVを製造するまでに石炭火力で多量のCO2を撒き散らして、石炭火力が発電した電力をEVに給電するのでは、今までの事態と変わらないどころか悪化していると言うべきだろう。

 EVに関しては再考すべき事項が多い。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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