日本周辺海域の魚類が小型化 地球温暖化の影響 東大
2024年3月5日 09:15
東京大学大気海洋研究所は2月28日、日本周辺海域において、1980年代と2010年代に、多くの魚類に小型化(体重の減少)の傾向がみられることが明らかになったと、発表した。
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1980年代の小型化と地球温暖化の関係は明らかではないが、2010年代の小型化は地球温暖化の影響と考えられるという。
研究グループでは、今回の研究成果は、地球温暖化が深刻化する状況下における、適切な水産資源管理のための基礎的データを提供するものになるとしている。
■なぜ地球温暖化によって魚類が小型化するのか?
魚類は動物プランクトンを餌にしているが、動物プランクトンは植物プランクトンを餌にしている。そしてこの植物プランクトンが成長するためには、海の下層から供給される栄養が欠かせない。
ところが、地球が温暖化し海の表層の海水温が上昇すると、海の下層との温度差が大きくなり、表層と下層の間で海水が循環しにくくなる。
そのため、海の下層から栄養が供給されにくくなり、植物プランクトンが成長しにくくなって、動物プランクトンが減少。少なくなった餌を奪い合う結果、魚類が小型化するというわけだ。
■20年以上に渡り年齢別体重データベースを作製し分析
研究グループは、水産庁及び水産研究・教育機構が発行する171の魚種別系群別資源評価票を基に、20年以上に及ぶ年齢別体重データベースを作成し、分析した。
その結果、1980年代と2010年代に魚類の小型化がみられることがわかった。
1980年代の小型化については、地球温暖化との関係は明らかではなく、同時期に発生したマイワシの爆発的増加により、餌をめぐる競合が激化したことが原因だと考えられるという。
これに対して、2010年代の小型化は、マイワシとマサバが中程度に増加しただけであったが、地球温暖化により餌となるプランクトンが減少していたことが、餌をめぐる競合に拍車をかけたと考えられるという。
研究グループでは今後、地球温暖化の進展に伴い、餌となるプランクトンのさらなる減少が危惧され、魚類が小型化することを前提に効果的な資源管理を実施していくことが必要だとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)