JALとANAグループの社員が試験で不正行為とは、「どうゆうこと?」
2024年3月1日 15:56
JALグループとANAグループは2月20日、「羽田空港ランプ内」の運転免許試験でそれぞれのグループ4社(JALスカイ、ジャルロイヤルケータリング、ANA本体、ANAエアポートサービス)が、不正行為を行なっていたと発表した。
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この試験は普通運転免許証のホルダーが、空港内のランプ(飛行機の誘導や手荷物・貨物の積み下ろしのため、飛行機の駐機エリアおよび、飛行機が地上で移動するエリアを言う)で車両を移動するために必要とする資格を得るためのもの。
法令上の運転資格は当然保有しているが、重大事故を未然に防止するため、羽田空港内の制限区域内の滑走路や駐機場で車両を運転する際の制限速度などの問題が出題されている。4社の不正は、22年5月から今年1月までに実施された試験のうち、延受験者89人延監督者9人が関わっていた。
不正行為の内容は「受験者が教本を参照して回答」した行為で、試験監督者が「受験者に対して閲覧を許可した」ことが発端である。
受験者が試験監督者の見解に従うのは自然なことで、不正行為の元凶が試験監督者にあったことは紛れもない事実だ。大きな「不思議」は、関連会社やライバル企業の社員を対象にして、延9人の試験監督者が1年半程の期間に渡って同じことを続けていたことである。
試験監督者が自ら試験の実施内容に手心を加える(この場合は教本の参照を可とする)動機が働くとは思えないから、試験の実施手順書に監督者の誤認を誘う紛らわしい表現があったのではないかと推測できる。
何しろ今年の1月始めには、羽田空港で「信じられない事故」が発生した記憶が鮮明に残っている。原因の究明にはまだ相当の日時を要すると思われるが、「明確に決められていなかったこと」や「紛らわしい表現」が、事故を誘発した可能性も検討されている。
円滑に回っているシステムに疑問を感じられる人は少数だろうし、疑問であることを表現できる人は更に少ない。もっと少ないのは、疑問の声が上がった時に「真摯に」自分で考えることができる上司だ。
トヨタ自動織機で発覚した品質不正問題も、開発の遅れを上司に相談しようとしても「なんとかしろ」と言われるのが目に見えていたから「相談できなかった」ところに、大きな問題があったと指摘されている。得られた教訓が、将来発生したかも知れない事故の防止に生かされることが望まれる。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)