相場展望2月15日号 米国株: 利下げ期待で株価上昇も、高金利の高止まりに備えも 日本株: 日経平均に影が点灯も、強さあり、堅調に推移とみる

2024年2月15日 11:20

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)2/13、NYダウ▲524ドル安、38,272ドル(日経新聞より抜粋
  ・NYダウは大幅反落し、前日比▲524ドル安の38,272ドルで終えた。1日の下げ幅としては2023年3月22日の▲530ドル安以来の大きさだった。朝発表の1月の米消費者物価指数(CPI)の上昇率が市場予想を上回った。米連邦準備理事会(FRB)による早期利下げ観測が一段と後退し、幅広い銘柄に売りが出た。NYダウは▲750超下げる場面があったが、取引終了にかかてやや下げ幅を縮めた。

【前回は】相場展望2月13日号 米国株: 新しい主役の銘柄に注目、2月中旬は売り場探しか 中国株: 上海総合は当局の介入で反発、本格上昇には経済回復が必須 日本株: 日銀・副総裁の発言で急騰も、「いびつ」な急伸

 ・1月のCPIは前年同月比の上昇率が+3.1%と、2023年12月の+3.4%から鈍化したものの、ダウ・ジョーンズ通信がまとめた市場予想の+2.9%を上回った。エネルギーと食品を除くコア指数の伸び率は+3.9%と市場予想の+3.7%以上だった。

 ・市場では「FRBの利下げが夏にずれ込む可能性がある」との見方が浮上した。市場の想定より利下げの時期が後にずれ、景気を下押しすることへの警戒が強まった。米債券市場では長期金利が上昇した。金利の上昇で株式の相対的な割高感を意識した売りも出た。

 ・NYダウなど主要3指数は最高値圏にある。インフレの沈静化やFRBの利下げを織り込んで上昇した後で、主力株を中心に利益確定や持ち高調整の売りが出た。市場では「利下げ開始の遅れが意識されると株売りが出やすい」との指摘があった。

 ・個別銘柄では、化学のダウや建機のキャタピラーなどの景気敏感株が下げた。金融のゴールドマン・サックスとドラッグストアのウォルグリーンズも下落。半面、映画・娯楽のディズニーと保険のトラベラーズが上昇した。

 ・ハイテク株比率が高いナスダック総合指数は大幅に続落した。ネット通販のアマゾンやネット検索のアルファベットなど大型株を中心に売りが出た。

 2)2/14、NYダウ+151ドル高、38,424ドル(日経新聞より抜粋
  ・前日に大きく下げた後でもあり、ハイテク株や景気敏感株の一角に押し目買いが入った。米経済のソフトランディング(軟着陸)期待などから引けにかけて買いの勢いが強まり、この日の高値圏で引けた。

  ・前日は1月の米消費者物価指数(CPI)がインフレ高止まりを示したことで米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げ観測が後退し、NYダウは▲524ドル下げていた。年内の米利下げ開始予想に加えて米景気や企業業績への楽観を背景に相場は昨年末から上昇基調を強めていた。NYダウなど主要株価指数の最高値更新が続き相場の過熱感が強まるなか、CPIを受けて利益確定や持ち高調整の売りが出ていた。

  ・2/14には取引終了にかかて買いが優勢になった。米国株のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に対する高い評価が投資家心理を支えた。シカゴ連銀のグールズビー総裁は2/14の講演で、インフレ減速に楽観を示したうえ、インフレ率が政策目標の「2%を達成するまで利下げ開始を待つことは支持しない」と述べた。

  ・NYダウの構成銘柄ではないが、画像処理半導体のエヌビディアを中心に主要ハイテクや半導体が買われた。「相場を牽引してきた銘柄に買いが戻り、投資家の安心感につながった」。エヌビディアは+2%あまり上昇した。時価総額は1兆8,000億ドルを超え、ネット検索のアルファベットを上回った。今週に入って、ネット通販のアマゾンも抜いていた。

  ・半面、NYダウは一時▲80ドル近く下げる場面もあった。FRBの利下げ開始が市場の想定より遅れるとの見方が投資家心理を冷やした。2/14も米長期金利が4.2%台後半~4.3%台前半(終値は4.31%)と高水準で推移し、株式の相対的な割高感が意識された。

  ・前日に下げが目立った顧客情報管理のセールスフォースや半導体のインテルが高い。建機のキャタピラーや化学のダウなどの景気敏感株も買われた。一方、スマートフォンのアップルや小売のウォルマートは下落した。

  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合指数は3営業日ぶりに反発した。2/13夕発表の決算や見通しを受けて配車サービスのリフトが+3割あまり急伸した。

●2.米国株:利下げ期待論で株価上昇も、高金利水準が続くことへの備えを

 1)インフレ再加速の兆候がさらに表れれば、利上げ再開の議論が再燃する可能性
  ・米連邦準備理事会(FRB)は利下げに踏み切るためには、広範な物価上昇圧力の減速を確認したい考えを示している。

  ・2/13発表のCPIを受けて、利下げが遠のいたとの見方が広がり、米NYダウは一時▲700ドルを超える大幅な値下がりとなった。

  ・金利上昇すると、相対的に割高感意識が高まり、ハイテク株が売られる。

 2)ただ、2/14は利下げ観測が復帰し、株高
  ・2/14は、年内の利下げ観測が再燃し、金利低下したため相対的な割安感が意識され米主要3株価指数は反発した。特に、ハイテク株比率が多いナスダック総合指数は大きく反発した。

 3)米国金利は低下が続いてきたが、反転し上昇傾向にある
  ・米10年長期金利率の推移 2/1  2/12  2/13 2/14
   米10年長期金利     3.88% 4.179 4.314 4.259

  ・長期金利の上昇は、株式に対し相対的な割高感意識が生じ、株高の逆風ととなりやすいため注意したい。

・利下げ観測が、1月のCPI発表で時期尚早と遠のいたが、翌2/14には復活。インフレ率は昨年夏からみると大幅に低下したため、金利引下げの期待が高まってきた。しかし、FRBの目標インフレ率2%には程遠く、金利引下げ観測は株式市場の「希望」のレベルにある。なお、1月消費者物価指数(CPI)は+3.1%であるが、1月のエネルギーと食品を除くコアCPI指数は+3.9%と高い。米経済は底堅く、労働市場も強い。したがって、利下げ期待観測はやがて裏切られると思われる。高金利水準は長期化するとみられ、その備えも視野に置きたい。

●3.米1月消費者物価指数(CPI)は前年比+3.1%、予想+2.9%を上回った(フィスコ)

 1)12月は+3.4%だった。

 2)CPIが予想外に改善なく、利下げ期待は後退し、金利上昇・円安ドル高へ。

 3)利下げ開始時期は6月との見方が強まる。(ロイター)

 4)米CPI、コア指数が8ヵ月ぶり大幅上昇、利下げ期待に冷や水(ブルームバーグ)

●4.米利下げ、インフレ2%に低下まで待つべきでない=シカゴ連銀総裁(ロイター)

●5.米経済の軟着陸が実現するとの判断は時期尚早=バーFRB副議長(ロイター)

 1)最近の雇用・インフレ関連指標が予想以上に強いことから、雇用と経済成長に大きな打撃を与えることなく、高インフレを抑制する闘いの現状について慎重な姿勢を示した。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)2/13、祝日「春節(旧正月)」で休場

 2)2/14、祝日「春節(旧正月)」で休場

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)2/13、日経平均+1,066円高、37,963円(日経新聞より抜粋
  ・東京株式市場で日経平均株価は大幅に3日続伸し、終値は祝日前の前営業日にくらべ1,066円高の37,963円だった。1990円1月以来、34年1カ月ぶりの高値。2/12の米株式市場でNYダウが過去最高値を更新するなど米株高の流れを受けリスク選好姿勢を強めた海外の機関投資家が日本の半導体関連を始めとする主力株に買いを入れた。日銀による金融緩和の長期化観測に伴う円安進行も買いにつながった。日経平均の1日の上げ幅としては、2020年3月25日の+1,454円以来、3年11ヵ月ぶりの大きさとなった。

  ・この日の大幅高を演出したのは東エレクで、1銘柄だけで日経平均を+396円押し上げた。前週末の2/9、2024年3月期通期の純利益予想と世界の前工程製造装置(WFE)市場の見通しを上方修正した。半導体市場の先行きに強気な見方が広がり、アドテストなど関連株が総じて堅調に推移した。傘下の英半導体設計大手アームの連日の急騰を受け、ソフトバンクGへの買いも続いた。

  ・日銀による金融緩和の長期化観測を背景に、外国為替市場で円相場は1ドル=149円台半ばと2023年11月下旬以来の円安・ドル高水準を付けた。円安進行を支えに輸出関連株には業績の上振れを期待した買いが入った。トヨタは+4%高となり、株式分割考慮後の上場来高値を更新した。

  ・東京海上やMS&AD、SOMPOなど保険株が軒並み大きく上昇したことも、日経平均を押し上げた。「金融庁が損害保険大手4社に政策保有株の売却を加速するよう求めたことがわかった」と2/10付けの日本経済新聞朝刊が報じた。政策保有株の売却を進めるとともに、自社株買いなど株主還元の強化への思惑から買いが集まった。

  ・「日本企業の企業統治(ガバナンス)改革が続いているとの見方につながり、中長期志向の海外の機関投資家の資金流入につながったようだ」との指摘があった。

  ・日経平均は大引け間際に38,010円まで上昇し、1989年12月29日に付けた過去最高値の更新が現実味を帯び、買いが買いを呼ぶ展開となった」との声もあった。

  ・東証株価指数(TOPIX)は反発し、1990年2月以来34年ぶりの高値を付けた。JPXプライム150指数も反発し、算出来の高値となった。

  ・個別銘柄では、信越化、スクリンが高く、トヨタやSUBARUが上昇した。ソニーや三菱商が買われた。一方、日揮や日本紙が大幅安となり、大塚やオリンパスとマツダが下落した。住友不や三菱地所、三井不など不動産株も売られた。

 2)2/14、日経平均▲260円安、37,703円(日経新聞より抜粋
  ・日経平均株価は4営業日ぶりに反落した。1月の米消費者物価指数(CPI)発表を受けて、早期の米利下げ観測が後退し、前日に米株が大幅安となった流れが波及した。日経平均が前日に大幅高となり、短期的な過熱感が強まったことも重荷となった。

  ・日経平均の下げ幅は一時▲360円を超えた。米労働省が2/12発表した1月のCPIは前年同月比の上昇率が+3.1%と市場予想の+2.9%を上回った。市場では米連邦準備理事会(FRB)の利下げ時期は予想より後ずれするとの見方が強まり、米株式市場で主要3指数がそろって下落した。米株安が東京市場でも嫌気され、幅広い銘柄が売られた。

  ・日経平均は前日に+1,066円高と急伸し、心理的節目の38,000円を超える場面もあったことから過熱感が強まり、利益確定売りを誘った。一方、半導体需要の回復に期待した関連株への買いは続き、指数の下値を支えた。

  ・「足元の上昇があまりに急だったので、前日の米株安は利益確定売りのいい理由になった。ただ、上昇に乗り遅れた機関投資家は多く、押し目買いもかなり入った」との声があった。

  ・東証株価指数(TOPIX)は反落して終えた。JPXプライム150指数も反落した。

  ・個別銘柄では、リクルートや東京海上が安い。日立、ソフトバンクG、SMC、トヨタ、JTなども売られた。一方、レーザーテクやスクリン、ファストリは買われた。

●2.日本株:日経平均に影が出るも、強さも継続し、堅調に推移

 1)2/13の日経平均は+1,066円高したが、5銘柄で+628円・+59%押し上げた
  ・日経平均の寄与度
   東エレク +396円高
   ソフトバンクG +100円高
   アドバンテスト +48円高
   ファーストリテイ +45円高
   リクルート +39円高

  ・日経平均の寄与度が高い、わずかな値がさ株の急伸で日経平均が+1,066円も押し上げられた。一方、新安値銘柄数が増加傾向にある。過熱感の極みとも言える現象といえる。

 2)「空売」水準が低く、売りが薄いなか、買いの勢いで一方的に株高
  ・空売比率の推移 2/1 2/13 2/14
   空売      43.7 35.4 39.4
  ・空売が引っ込むなか、現物株の買い意欲が強く、日経平均は大幅上昇

 3)日米の長期金利格差は拡大し「円安」進行で追い風も、2/14は一服
  ・日米長期金利差の推移 2/1   2/13 2/14
   日米長期金利差    3.193% 3.593 3.502

  ・円安で日経平均は上げ潮が続いたが、2/14にやや低下し、今後の動向を注視。

 4)新安値銘柄数が増加を示し始めた点が懸念
  ・新安値銘柄の推移 2/1 2/13 2/14
   新安値銘柄数   14  21  60

 5)日経平均に陰りは忍び寄るも、依然として現物株買いの意欲は強く堅調続く
  ・新高値銘柄の推移 2/1 2/13 2/14
   新高値銘柄数   144 151 107

  ・2/14は日経平均が▲260円安のなか、新高値銘柄数が107と多い状況にある点に注目したい。

●3.ソニー、4~12月期営業利益+9,793億円、前年同期比▲15%減(時事通信)

●4.東京海上、通期見通し純利益+5,750⇒+6,700億円に上方修正(時事通信)

●5.楽天、2023年12月期純損失▲3,394億円、5年連続赤字、携帯苦戦、無配転落(時事通信)

●6.第一生命、4~12月期純利益+2,179億円、前年同期比+42%増(時事通信)

●7.ゆうちょ銀行、4~12月期経常利益+3,670億円、前年同期比+6.6%増(フィスコ)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・5713 住友金属鉱山 業績回復基調
 ・6143 ソディック  黒字化
 ・6594 ニデック   業績回復基調

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