「物流」に注目が集まる24年問題、「医療」「建築」にも大きな不安 (2)

2024年2月10日 16:45

 24年問題が実施まで秒読みの時期になった。5年間の猶予期間が設けられていたから、各業界に於ける準備が万全かと言うと、決してそんなことはない。有り体に言えば、4年数カ月を無為に過ごしてきた業者がほとんどで、今頃になって必死に乗り切り策を考えているというのが実態だ。

【前回は】「物流」に注目が集まる24年問題、「医療」「建築」にも大きな不安 (1)

 猶予期間が設定された「自動車運転業務」「建設事業」「医師」の3業種の中では、「自動車運転業務」が巷の話題になっている。「建設事業」と「医師」の問題があまり取り上げられないのは、すでに万全の対策が講じられているからではなく、内向きの要素が大きいため話題に取り上げにくいネックがあると考えた方が良さそうだ。

 大規模プロジェクトを扱う建設業の場合、発注者から受注した建設業者が下請け業者や孫請け業者等と共に、事業に当たるケースがほとんどだ。

 今まで受注業者の指示は、一方的に下請けや孫受けに伝えられてきた。事業遂行上の重要事項ポイントは、納期を厳守して赤字を出さないことにあるから、業務スケジュールは厳守するのが言わずもがなの常識だ。

 これまで下請け業者等が、辻褄合わせの突貫作業をすることが当然視されていたような業界である。下請けや孫請けが抱える問題は個別企業特有の問題なので、元請業者が適切に汲み上げて有効な対策を採ることは至難だろう。

 工程を管理する主体が輻輳しているから、下請けや孫請けの遅れは納期の遅れに直結する。プロジェクトごとに業者の組み合わせが変わった場合などで、細かい意思疎通が成立するかなど、今まで考えもしなかった問題がクローズアップされる。

 とてもデリケートで大きな問題だが、あくまでも業者対業者の問題であって、一般的な話題には馴染まない。

 医師が抱える問題も悩ましい。厚労省の調査では、2019年に医師の38%が年間960時間の残業時間を超過し、同1860時間を越えた医師が9%を超えたと言う。

 医師の場合は診療科目によって繁忙度に差があることや、若手の医師が修行のためと称して長時間労働に陥りやすい問題もあるから、みんなが揃って同等質量の問題意識を持つことが難しい。日本の医療体制が医師の長時間労働に支えられてきたことは周知のことで、今後医療の高度化が進み医療ニーズが変化することで、医師の負担は増加する。

 反対に、少子化の進展に伴い医師の絶対数が減少することは避け得ない。医師については、時間外労働削減を求めることが果たして可能なのか、という疑問がつきまとう。医療の質を落として帳尻を合わせるようなことがないように願いたいものだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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