海洋堆積物から350万年前に起こったキロノバの痕跡を発見 伊トレント大の研究
2023年12月14日 16:57
キロノバは、中性子星同士の衝突あるいは中性子星とブラックホールの衝突によって起こる、大規模な爆発現象だ。白色矮星の爆発によって起こる新星(ノバ)の1000倍程度の明るさになることから、この名称が付与されているが、超新星爆発と比べると明るさは100分の1ないしは10分の1程度とされている。
【こちらも】ブラックホールの劇的な発光の瞬間を捉えることに成功 バーミンガム大ら
約350万年前に海洋で堆積したFe60(通常鉄の質量数は56だが、Fe60は質量数が60である鉄の同位元素を意味する)や、Pu244(質量数が244のプルトニウム同位元素)は、はるか彼方の宇宙空間で起こった超新星爆発やキロノバ等から飛来したものと考えられている。だが、それらは同位体の存在比こそ明らかにされているが、その値をとる理由を説明できる現象、つまり、それらの同位体元素の起源は、明らかにされていなかった。
イタリアのトレント大学の研究者らは、350万年前の海洋堆積物に含まれるFe60とPu244が示す同位体の存在比を説明しうる現象を、数値解析シミュレーションによって見出すことに成功した。
一般的に鉄以下の質量数が小さい元素は、恒星内部の核融合で生成され、鉄より質量数の大きな元素は、超新星爆発で生成される。だが厳密には、Fe60は超新星爆発で生成しうるものの、Pu244は超新星爆発では生成しえず、キロノバのような現象でしか起源を説明できない。一方でこれらの同位体の存在比をもたらす現象は、従来は単一のキロノバでは説明ができなかった。
問題解決の糸口は、キロノバによって起きる0.1~0.2秒以上持続する螺旋波風にあった。研究者らはこの螺旋波風が、地球からどのくらいの距離でどの方向からやってきたのかを仮定することによって、Fe60とPu244の同位体存在比を説明しうる解を導き出したのだ。その結果、約350万年前に地球から500~600光年離れた場所で発生したキロノバが、これらの値をもたらしたと結論付けた。
このキロノバまでの距離は、ベテルギウスのそれ(約548光年)と酷似している。350万年前のキロノバで地球生命が絶滅することはなかったが、将来ベテルギウスで起きる超新星爆発で地球にどんな影響がもたらされるのか、気になるところだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る)