【QAあり】石光商事、環境・社会の課題解決に資する事業の育成を推進 嚥下障害に着目した「とろみコーヒー 」などを開発
2023年12月13日 17:04
はじめに
石脇智広氏(以下、石脇):みなさま、こんにちは。石光商事株式会社代表取締役社長の石脇です。本日は、当社説明会にご参加いただき誠にありがとうございます。みなさまに当社グループの事業内容を少しでも強く感じていただけるよう、一生懸命説明していきたいと思います。よろしくお願いいたします。
はじめに、私の簡単な自己紹介です。私は2001年に入社しました。もともとはコーヒーの研究畑にずっとおり、以来技術系の仕事に携わってきたのですが、2016年に技術系あるいは理科系のセンスを経営に活かす流れとなり、当時の取締役会で社長になることが決まりました。株主のみなさまにもご承認いただき、現在に至っている状況です。
目次
本日は、スライドに記載の順番に沿ってご説明します。まずは会社概要として、本年発行した統合報告書の内容をもとに作成した動画をご覧ください。
(動画が流れる)
動画をご覧いただきありがとうございます。この統合報告書は当社ホームページにも掲載していますので、ぜひお時間のある時にご覧いただければと思います。
会社経営の基本方針
今の動画でもご案内したとおり、当社は基本方針として「ともに考え、ともに働き、ともに栄えよう」という経営理念を掲げています。
その中でも、私たちが近年特に意識しているのは「経済的価値と社会的価値を両立しながら今後200年続く企業を目指す」ことです。こちらをスローガンとした上で、私たちが社会に存在する意義を明確にするために「世界の食の幸せに貢献する」というミッションを掲げ、現在の業務を展開しています。
沿革
当社グループの沿革を簡単にご説明します。創業は1906年です。創業者の石光季男がロサンゼルスで始めた、日系移民に日本食をお届けするビジネスが私たちの起点となっています。
やがて石光季男が日本に帰国する際、これからは日本人ももっとコーヒーを飲むようになると考え、船にコーヒーのいろいろな機械やコーヒー豆、コーヒーに関する知見などを一緒に積んできました。その後、周りの方々に「これからコーヒービジネスは大きくなる」と紹介して回り、ビジネスが広がったという歴史を持っています。
現在、国内のコーヒー事業に関しては、コーヒーの生豆を小分けにして全国の自家焙煎店にお届けする機能を持ったユーエスフーズを子会社としています。また、2つの焙煎工場として、より消費者のみなさまに身近なコーヒー製品を手にしていただく機会を作っている、東京アライドコーヒーロースターズと関西アライドコーヒーロースターズがあります。
加えて、日本全国の主な食品市場のある地域に拠点を置いており、本社のある神戸をはじめ、札幌、東京、名古屋、福岡、さらには海外の中国、タイ、インドにも拠点を構えて活動しています。
事業内容
当社の事業内容です。現在の売上規模は590億円弱です。内訳は、コーヒー・飲料事業が約38パーセント、食品事業が約半分、残りが海外事業です。経営理念に沿ったミッションを事業ごとに掲げ、展開しています。
コーヒー飲料事業は「1杯の幸せ」をつくることをテーマにしています。食品事業は、日本の「食の豊かさ」を支えることをモットーにしています。海外事業は、日本食に対する海外の方の興味・関心が近年高まる一方であることから、「食」を通じて日本の誇るべき文化と技術を世界に発信していくことをテーマに掲げています。
コーヒー飲料原料
事業ごとの詳細をご説明します。まずは、コーヒー・飲料事業の原料ビジネスについてです。こちらでは、コーヒーの生豆や紅茶葉を業務用ルートで販売しています。私たちのお客さまがそれらを加工し、最終的に消費者のみなさまの手元に届くスキームになっています。
このカテゴリにおける私たちの強みの1つは、高い専門性を持った社員が、生産国とお客さまをつないでいる機能が非常に強いことです。そして、こちらをより強くしているのが私たちのもう1つの強みである、品質管理の機能や分析等を通じた技術的な裏づけです。
このように、お客さまと産地とをより強くつないでいる姿が私たちの強みとなっています。
コーヒー飲料製品
コーヒー・飲料事業の製品ビジネスについてです。こちらは、消費者のみなさまが直接手に取って楽しめるコーヒー・紅茶製品を製造・販売しているカテゴリです。スライドに写っている「コーヒーバッグ」と呼ばれる1杯取りのコーヒーは、私たちの主力製品の1つです。
当社はOEMメーカーですので、消費者のみなさまが私たちの名前を直接ご覧になる機会はなかなかありません。しかし、人口あたりで計算すると、当社のドリップバッグ商品は日本人1人につき毎年2杯から3杯は飲まれています。このような規模で事業を展開しています。
また、缶コーヒーの原料にも強みがあるため、現在は工業用のマーケットも順調に展開しています。
加工食品
食品事業の加工食品についてです。こちらでは、フルーツや野菜の缶詰に加え、パスタやオリーブオイルなどの洋食に関わる業務用食材を取り扱っています。
スライド左側には、世界的にわりと名の通ったブランドの企業であるコラビータ社のオリーブオイルを掲載しています。コラビータ社がイタリアの一企業であった時に、当社がいち早く日本での代理店として手を挙げ、彼らが海外進出する先駆けとなりました。こちらのブランドは、今も大切に育てています。
スライド右側の写真は、ロングセラー商品のフルーツ缶詰です。こちらは1990年代からずっと、給食や製菓工場などで使われてきています。これらの商品が当カテゴリの強みです。
農産
食品事業の農産カテゴリについてです。スライドに玉ねぎの写真を載せていますが、当社はこのような農産物をそのまま、あるいは加工した状態で業務用ルートに流しています。それらの商品を業者がさらに加工し、最終的にみなさまのお口に届くものとしてスーパーやコンビニなどで販売されます。
最近では会社方針を受け、より社会貢献を強化する試みの1つとして、収益の一部を子ども食堂に寄付する商品を作るなどの取り組みも行っています。
水産
食品事業の水産についてです。スライドにはエビのお寿司の写真を掲載していますが、大手外食チェーン店を中心に、当社商品のエビを広く買っていただいています。回転寿司に足を運んだことのある方は、こちらのエビを何度か口にしていると思います。
こちらに関しても従来のビジネスから転機を迎えており、当社にとっても、水産資源のサステナビリティが非常に大きなテーマとなっています。最近では「BAP認証」という水産養殖におけるエシカルを証明するラベルがあります。このラベルの付いた商品を日本で展開することで、業界のサステナビリティ推進にも一役買っている状況です。
調理冷食
食品事業の調理冷食についてです。このカテゴリでは、スーパーの惣菜や外食店で使う鶏肉加工品を販売しています。女性の職場進出などが影響し、食生活がずいぶん変わってきている昨今、これらの商品が食卓を彩る状況も増えています。
都内でスーパーを利用する方のうち、惣菜売り場でフライドチキンやローストチキンなどを購入する方は、おそらく当社商品を1度や2度は召し上がっているだろうと思います。スライドに写真があるフライドチキン以外にもさまざまな鶏肉加工品があり、それらを専門性の高い当社スタッフが商品設計まで担当していることが当社の強みになっています。
海外事業
海外事業についてです。海外のお客さまからのニーズに、できるだけ速やかに的確に答えていくことが伝統的な強みです。最近は、お客さまの要望をより咀嚼し、従来の日本食の枠を超えた海外向けの商品の開発もどんどん進めています。
例えば、かき揚げを乗せるあるいは芯にして巻いたお寿司や、海外のお客さまの嗜好に合わせたチューハイなどを開発しています。このようなかたちで、従来の日本食文化の発信に加え、海外ならではのニーズに合った日本食の開発を行っていきます。
グループ会社による事業展開
グループ会社の事業展開についてご説明します。まずはユーエスフーズです。コーヒーの生豆は1袋に60キロから70キロほど入って届きますが、町の自家焙煎店ではそこまで大量に使うことができません。
当社は、そのような町のお客さま向けに生豆を小分けする事業を展開しています。ただ小分けするだけではなく、私たちに原料を届けてくださる生産者から最終の消費者まで、全員にサステナブルな笑顔を作ることをテーマに掲げ運営しています。
スライドに載せているのは、長年付き合いのあるサプライヤーとコラボして作った商品の写真です。子どもの手形が付いていますが、この商品を購入すると、彼あるいは彼女たちが通っている幼稚園に当社売上の一部が寄付される仕組みとなっています。このようなかたちで、生産国の地域発展にも微力ながら貢献できる商品を作っています。
同時に、日本での地域貢献も進めており、ユーエスフーズのある東京足立区においてサステナブルに関するさまざまな活動を展開しています。
グループ会社による事業展開
2つの焙煎工場のうち、関西アライドコーヒーロースターズについてご紹介します。スライドには2つの取り組みを掲載していますが、2030年までに、環境への取り組みと障がい者雇用の2軸で業界No.1企業になるべく活動を推進しています。
環境への取り組みとしては、産業廃棄物であるコーヒーの抽出カスを「バイオコークス」という燃料にするために近畿大学と共同研究を行っています。こちらは、抽出カスを燃料化して再度コーヒーを焙煎する取り組みになります。この技術で焙煎したコーヒーは、大手外食チェーンでもお使いいただいています。
障がい者雇用の取り組みでは、障がいの有無にかかわらず、全員に働きがいのある職場環境を作りたいと考えています。そこで、障がい者向けにカスタマイズした焙煎機をメーカーと一緒に作り、焙煎をしていただいています。
グループ会社による事業展開
もう1つの焙煎工場である、東京アライドコーヒーロースターズについてご紹介します。こちらは、工業用のコーヒーや缶コーヒーの原料に強みを持っています。
スライドには焙煎機の写真を載せていますが、こちらは所有しているものの1つに過ぎず、焙煎機は何種類もあります。お客さまのニーズに応じて焙煎機、原料、ブレンド方法、焙煎方法を変えられる技術力の高さが評価され、業界でも高いシェアを誇っています。
さらに近年は、電気だけではなく、焙煎時に使うガスにもカーボンオフセットなどをうまく組み込み、再生可能エネルギーの導入を進めています。環境に優しいビジネスを工業の世界でも展開していきたいという、私たちの意思の表れだとご理解いただければと思います。
連結子会社間の合併について
先日プレスリリースしたとおり、東西2つの焙煎工場は来年10月をめどに合併する予定です。東は工業用、西は小売用・家庭用と得意な事業が違うため、それぞれの強みを東西で垣根なく活かすために合併することとしました。
また、先ほど動画でもご紹介した「グリーン焙煎」という環境に優しくコストも抑えられる新技術は関西アライドコーヒーロースターズで開発しています。この技術を全国のお客さまに広く利用してもらうべく、新たな焙煎工場を作る計画も進めています。より多くのみなさまに環境に優しいコーヒーを楽しんでいただくために、準備を進めているところです。
合併後の新商号は「アライドコーヒーロースターズ」とする予定です。この2社が合併することで、国内3位の焙煎量になると推定しています。新会社を拠点に、経済的価値と社会的価値を両面から追求していきたいと考えています。
グループ会社による事業展開
海外子会社の事業内容を簡単にご説明します。スライド左側の写真は、当社初の海外拠点である中国の石光商貿です。こちらでは、コーヒーの生豆をはじめとした食品を中国全土で販売しています。
私たちが中国に進出した時、中国人1人当たりのコーヒー消費量は年間1杯ほどでしたが、ここ数年は非常に伸びており、今や週に1杯ほどになっています。つまり、この10年間でコーヒーのマーケットが50倍から60倍に伸びたということです。その中で、石光商貿も着実にセールスを伸ばし、今ではグループのコーヒー事業においても非常に大きなウエイトを占める企業に育っています。
スライド中央の写真は、タイのバンコクに拠点を構えるTHAI ISHIMITSUです。コーヒーを中心に食品を販売している会社で、こちらにもコーヒーのプロフェッショナルを1人配置しています。現在は、タイと中国の2拠点をアジアのコーヒー産業やコーヒー文化発展の起点にすべく、取り組みを進めています。
私たちは、日本のコーヒー業界のパイオニアと言ってよい存在だと思います。日本にコーヒー文化を根づかせるお手伝いをしたのと同じように、これから先は、アジア圏のコーヒー文化やコーヒー産業を育てるお手伝いをしていきたいと考えています。
スライド右側の写真は、インドで紅茶製品を製造・販売しているA. Tosh Ishimitsu Beveragesです。現地パートナーとの巡り合いを機会に、日本のものづくり技術を活かすべく工場を設立しました。
こちらは確実な成果を上げており、日本の技術が世界に認められたことを実感しています。もともとは日本向けの製品を作ってもらうために作った工場でしたが、現在は日本だけではなく、品質にこだわりの強い世界中のバイヤーから引き合いをいただける会社になっています。
当社グループの強み
ここまでカテゴリ別の事業内容についてお伝えしてきましたが、あらためて当社グループの強みをまとめてご説明します。
1906年の創業以来、私たちはずっと食に関わり続け、食の幸せを作り続けてきました。その中で培った原料の調達や加工での専門性の強さや深さ、そしてそれらを支える品質管理や品質保証、分析等を使った技術力が、同業他社との差別化ができている部分だと考えています。
当社は今年で117年目を迎えますが、「長く続ける」ことをキーワードにしています。お客さまとの関係はもちろん、取引先やサプライヤーとのパートナーシップにおいては、いろいろな厳しい状況があっても買い続けることで信頼関係を築き上げてきました。この点も強みだと考えています。
さらに、長年培ってきた日本での経験により市場ニーズを的確に捉え続け、一歩先を行く商品提案を続けてきたところも強みだと思っています。
売上高推移
売上高の推移です。長らく400億円台で停滞していましたが、2023年3月期には500億円を超え、今期は598億円での着地を見込んでいます。
中期経営計画「SHINE 2024」について
中期経営計画「SHINE 2024」についてご説明します。石光商事の「光」から名付けた「SHINE2024」には、私たちが世の中にお世話になり続けるにあたって大切にしたい概念である「サステナビリティ」のほか、「世界の食の幸せに貢献する」というミッション、世の中に必要とされ続けるために「よりイノベーティブ」でありたい、会社を支える従業員の「エンゲージメントを高めていきたい」などの、さまざまな願いを込めています。
「SHINE」には、私たち一人ひとりが、そして会社グループ全体が、業界の中で光り輝く存在でありたいという願いも込めました。
2030年のありたい姿に向けて
2030年のありたい姿に向けて動かしていく3つの中期経営計画のうち、最初の3年間が今回の「SHINE2024」になります。
中期経営計画「SHINE 2024」
「SHINE2024」のテーマは土台作りで、土台は3つあります。
1つ目はガバナンスの土台です。私たちは2030年までに、プライム市場に上場されている有名食品企業に匹敵するレベルにまでガバナンスを高めていきたいと考えています。
2つ目はビジネスの土台です。永遠のテーマである収益力向上において、この先も世の中の役に立ち続けるためには、環境への配慮が最低限必要だと思っています。GHGやプラスチックをどうしても使ってしまう、出してしまう中で、それらを減らす努力を継続します。また、それらのネガティブ要素を補って余りあるメリットを出せる強い商品を作って社会に貢献し、そのご褒美として上げた利益で収益力を高めていく土台を作ります。
3つ目はエンゲージメント向上の土台です。私たちの活動を支えるのは、やはり社員一人ひとりです。現在は、社員のキャリアの自立的な構築を進めていますが、外部によるエンゲージメント調査を年1回実施し、その結果を受けて翌年の取り組み等を決めています。社員が働きがいを感じながら働いてもらえるような会社にしていきたいと考えています。
SHINE2024の振り返り(2022年度)
「SHINE2024」には、8つの重点施策を設定しています。スライドの表には、この3月までの進捗をそれぞれ示しています。これからの巻き返しが必要な項目もありますが、おおむね順調に進んでいます。
「SHINE2024」の最終年度には進捗度数が10まできれいに埋まるように、引き続き取り組みを進めていきたい考えです。
定量目標(連結)
定量目標には、11月に修正開示を行った数字を反映させました。スライドに示した売上高と利益を目指すとともに、株主のみなさまを意識した指標もいくつか設定しています。目下の課題はPBR1.0倍の達成ですが、そのためにも、このような場を利用して株主のみなさまとのコミュニケーションを強化し続けていきたいと考えています。
ESG(環境)
SDGsおよびESGの取り組みについてご説明します。まずは環境について、環境に優しくコストにも優しいグリーン焙煎についてご紹介します。
「コーヒーグラウンズ」と呼ばれる、私たちのサプライチェーンから出るコーヒーの抽出カスは産業廃棄物として捨てられます。しかし、こちらを乾かして固形化し、再度燃料化すると、産業廃棄物としての処分が不要になります。燃料コストは、都市ガスと比べ10分の1から20分の1ほどまで下がります。
行政からの支援等や、外部の専門性の高い技術力を持った方々とのパートナーシップにより、新しい工場では、この技術をふんだんに使ったコーヒーをみなさまにお届けしたいと考えています。
ESG(社会課題解決商品・取り組み)
この1年間を振り返った時、社会課題を解決した商品として真っ先に挙げられるのが「とろみコーヒー」です。社会問題への関心が高い当社社員の中に、嚥下障害に着目した者がいました。今までおいしいコーヒーを飲んできたのに、嚥下障害で誤嚥リスクが高まるにつれてコーヒーが飲めなくなった方が世の中には100万人以上いるという話もあります。
そのことを知った営業担当者が、全国的なコーヒーチェーン店のコメダ珈琲店とタイアップし、2年ほどかけて「とろみコーヒー」を開発しました。こちらは、まだまだこれから伸びる商材かと思います。
実際にこの商品を手にした方は「またコーヒーを飲めるとは思っていませんでした」「このコーヒーは手放せません」と涙を流して喜んでくださいました。今後も、このような仕事を増やしていきたいと考えています。
ESG(社会課題解決商品・取り組み)
食品の事例として、障がい者問題に関心の強い社員が、自身の専門性を活かして行った取り組みをご紹介します。少数民族で障がいもあって貧しく、非常につらい立場にいる方々を雇用して玉ねぎを育てることによって、砂漠化が多少なりとも抑制される効果が期待できます。
この商品を日本のメーカーに紹介した際には「社会的な価値がある」と認めてくださり、その考えや取り組みに共感して買ってくれるという事例もありました。社会の風向きが少し変わってきたことを実感しています。
ESG(社会課題解決商品・取り組み)
こちらのスライドには、他の社員の取り組みを記載しています。私たちはとにかく社会課題に目を向け、それらを解決する対価として利益をいただくような商売を増やそうと取り組んでいます。
社員には常々「これはやった方がいい」「これをなんとかしたい」と思ったら、それが経営方針の中にあり、会社のルールと社会のルールを満たしているのであれば、とにかく始めなさいと伝えています。
それが商売と直結するかどうかは別として「心が動いたらとにかく動いて」と言っています。そのため、子どもの学習支援に取り組む社員や、当社の食材を子ども食堂に届けて小さな食の幸せを作って共有する活動を行う社員がいます。
ESG(ガバナンス)
ガバナンスについてご説明します。経営環境の変化に対応できる体制を構築するとともに、ステークホルダーのみなさまからの信頼を得られるように経営の透明性を上げていくこと、公正な経営を心がけることを目指しています。
私たちは監査役会設置会社ですので監査役が3名おり、3名のうちの2名は社外監査役となっています。現在の取締役会の構成は、社外取締役2名を含む7名体制です。できれば性別などが関係なくなる社会を目指したいところですが、今の状況に沿って言えば7名のうち1名が女性取締役です。
この方は社外から来てくださった方ですが、2030年までには常勤の女性取締役を少なくとも1名を出し、ゆくゆくはやはり石光商事生え抜きの女性取締役を出していきたいと考えています。
企業価値の向上を図るにあたっては、適切なコーポレートガバナンスの構築とその運用改善が不可欠だと認識しています。
ESG(ガバナンス)
スライドの表は取締役のスキルマトリックスの一覧です。私たちの取締役会はさまざまな分野の経験や知見を有した取締役から構成されており、年に1回、定期的に第三者機関を通じた実効性評価を行っています。
その結果については取締役会において意見交換の場を設け、改善につなげていくサイクルを継続的に回しています。
株主還元について
最後に株主還元についてご説明します。昨年に方針の見直しを行い、3点を新しい方針としました。
従来は、石光商事単体をベースとした配当性向30パーセントが私たちの基準でした。しかし、グループとして非常に大きくなり、グループ会社の貢献度も大きくなったことも受けて、配当性向を連結ベースの25パーセントにすることとしました。
しかし、それは短期的なものではなく、サステナビリティを確保しなければなりません。そのため、株主の目線に立った上でPBRを引き上げていけるように、時価ベースのDOEと簿価ベースのDOEの両方に十分に配慮します。
そして、今後の投資計画を見据えて内部留保を拡充し、企業としての将来的な競争力と株主価値の向上との適切なバランスをとっていくことを大切にしたいと考えています。以上3点を目標として株主還元を進めていきます。
株主還元について
スライドのグラフは、具体的な配当金の推移を示しています。2023年11月に一部修正を加え、2024年3月期の配当金は前期の1株あたり24円から今期は28円に増配する予定です。
株主還元について
株主のみなさまにお楽しみいただいているのが、優待制度です。毎年7月頃を目処に、当社の製品を株式保有数に応じてお送りしており、私たちも非常に力を入れている制度です。毎年、株主のみなさまにしか味わっていただけない特別な商品をご用意し、大変ご好評をいただいています。
質疑応答:同業他社との違いについて
司会者:「同業他社との違いを教えてください」というご質問です。
石脇:本日もいろいろとお話をしましたが、いわゆる専門商社と呼ばれる食品問屋はたくさんあります。私たちはその中での差別化をずっと追求してきました。従来であれば高い専門性、それを支える品質管理体制や品質保証体制、分析等を通じた技術力などが差別化要因になっていました。
もちろん従来の差別化要因は大切にしたいのですが、やはりこれから先の私たちを選んでいただく理由となってほしいものは社会的価値だと思っています。本日も少し事例を挙げたような活動は、私たちがこれからの収益性を高めていくための1つの手段です。
世の中のお役に立ち続けるため、あるいは私たちが事業活動していく中では、どうしてもGHGも出しますし、プラスチックのロスも出します。しかし、その負の影響を補って余りある社会的価値を出していくことで、世の中に貢献していきたいと考えています。私たちはこれから社会的価値への取り組みやその成果によって、同業他社との差別化を進めていきます。
質疑応答:2025年3月期の施策やリスク、取り組みなどについて
司会者:「2025年3月期の売上、営業利益などの目標値達成のための具体的な施策とリスクについて教えてください。また、サステナビリティへの取り組みなど、どのように貢献するかなども交えて教えてください」というご質問です。
石脇:まず目標達成のためには、やはり既存の商品の継続的な見直しは必要になると思っています。「従来扱ってきたから」「今までこうだったから」ということをベースにするのではなく「この先どうなのか?」という観点で商品を見直していく必要があります。
そして、それは商品だけではなく事業でも同じです。プレゼンでも事業再編のお話をしましたが、今、私たちの事業自体も常に将来を見据えた見直しが必要だと考えています。目標とする収益を上げるためには、今までの見直しに加えて、これから何をやるかが問われていると認識しています。
今日も散々お話ししていますが、これから何をするかについて、一番重視したいことが社会的価値です。私たちは世の中の「困った」を解決することによって社会からご褒美をいただき、収益を高めていくことを1つの柱にしていきたいと考えています。
そのような当社のビジネスですが、やはりリスクとして真っ先に挙げるべきは、為替と先物相場ではないかと思います。やはりどうしてもコーヒーの先物相場の影響は受けてしまいますし、近年の円安の影響なども非常に大きなものでした。
もちろんそれは為替予約や定期市場でのヘッジ売買で回避している部分もありますし、お客さまとのコミュニケーションの中で、できるだけ速やかに値上げへのご理解をいただくようなことも、引き続き大切にしていきたいと思います。
そして繰り返しになりますが、多少の利益や仕入れ額の変動にはびくともしないような強い商品を作り、それが社会的価値のある商品であってほしいと考えています。
質疑応答:海外事業の今後の展開について
司会者:「海外事業が拡大していますが、今後の事業展開について教えてください」というご質問です。
石脇:この先、日本の人口が減り、日本の市場がシュリンクしていくことはほぼ自明のことです。一方で、海外では人口が増えているところや日本の食文化に関心が高まっている国がたくさんあります。私たちがこれから世の中の役に立ち続けるためには、日本市場に加えて、海外の市場でどのように役に立っていくかが大きなキーワードになると思っています。
海外事業はこれからどんどん強化していくと言ってよいと思います。先ほどもお話ししたように、アジアを中心とした既存拠点でコーヒー文化やコーヒー産業により貢献し育てていくことはもちろんですが、イギリスに新しく合弁会社を作っています。
EU圏でも日本の食文化に対する興味関心はどんどん高まっており、現地に根付いた営業活動ができるように今回の投資を行いました。アジアにとどまらず、広く世界で私たちの技術や私たちの社会的価値などが必要とされるところに対して、積極的に展開していこうと考えています。
質疑応答:株価上昇の施策や利益還元について
司会者:「株価上昇のための施策や株主に対する利益還元について、考えを教えてください」というご質問です。
石脇:本日のような機会もとてもありがたいと思いますが、当社グループの事業内容や何を目指しているのかについて、投資家のみなさまにできるだけわかりやすく、粘り強く伝え続けていくことが重要だと考えています。
また、配当に関しても引き続き考えていく必要があります。昨年配当方針を見直したばかりですが、今後いずれかのタイミングで、どのレベルが適切なのかを再度見極めることが必要だと思っています。
株主還元は当然ながら、私たちはとにかく収益力をさらに高めたいと考えています。それは単なる数字だけではなく、中身や質も含めてより高めていきたいということです。それを株主のみなさまに評価していただき、株価が上がっていくことが望ましいと考えていますので、そのための努力を続けていきたいと考えています。
質疑応答:コーヒー相場変動に対するリスクヘッジについて
司会者:「コーヒー相場が著しく変動した場合のリスクヘッジについて、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか?」というご質問です。
石脇:私たちのビジネスは、コーヒー相場の影響をある程度受けます。私たちなりの対策として、まず原料販売においては相場の影響を受けにくい商品、コーヒーであればスペシャルティコーヒーなどを販売します。
例えば、一般のコーヒーはブラジルやコロンビアなどの国名で流通しています。それに対して「ブラジルのここの農園です」「このような名前の品種です」など、高付加価値で流通しているコーヒーがあります。そのような商品を増やしていくことが1つです。コモディティ商品についても、だいたいその相場に応じた価格で販売できますし、先物の定期市場を通じてヘッジも行っていますので、大きな心配はないと考えています。
一方で、加工度を上げて製品にする場合は、原料価格を製品販売に反映させるまで少し時差が生じます。それが少なからず業績に与える影響もありますが、その加工度を上げることによって全体のコストに占める原料の割合を減らすことができます。
さらに、日頃からお客さまに対して情報提供に努め、できるだけ速やかに仕入れ値のコストアップを販売価格に転嫁できるように、営業活動を展開しています。
石脇氏からのご挨拶
石脇:本日はお忙しい中、当社説明会にご参加いただきありがとうございました。私たちの活動について、より知っていただけたのではないかと思っています。
私たちは「ともに考え、ともに働き、ともに栄えよう」という経営理念を掲げてビジネスを展開しています。本日の説明会をご覧のみなさまが、私たちとともに栄えるために一緒に活動してくださることを期待しています。本日はありがとうございました。