「浮遊軸型風車」開発のアルバトロス・テクノロジー、4.2億円調達
2023年12月12日 08:30
風力発電の浮体式洋上風車の開発に取り組むアルバトロス・テクノロジーは6日、シリーズAラウンドで日本政策投資銀行などから総額4.2億円の資金調達を行ったと発表した。同社は、従来の水平軸型ではなく、小型・低コストで設置しやすい垂直軸型の「浮遊軸型風車(FAWT)」の開発に取り組んでいる。今回の資金調達で、累計調達額は約5.2億円となる。
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海面に発電機を浮かべる洋上風力発電は、陸地よりも風向きや風の強さが安定しやすいことから、欧州を中心に世界各地で導入が拡大している。水深の浅い面積が多い欧州では現在、海底に発電機を固定する着床式の洋上風車が主流だ。
一方で、近海の水深が深い日本では着床式の適用面積が限られ、設置のハードルも高い。そこで昨今、浮体式が注目され、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、各社が開発を進めている。
これまで開発が進められてきた浮体式洋上発電施設は、浮体部の上に高さ150メートルほどのタワーを載せ、その上部に風車を取り付けた、水平軸型の浮体式風車がメインだ。建設や船舶事業を展開する企業が開発を牽引してきた。水平軸型は供給力が高い半面、大型構造のため、洋上設置にコスト・期間を要し、また整備保守に多くのリソースを割く必要がある。
そうした背景から、アルバトロス・テクノロジーは小型で安定性を持つ、浮遊軸型風車の開発を推進。海中の円筒浮体部の上部に、発電機と高さ110メートルの風車を搭載し、軸の傾斜を20度まで許容する浮体式風車の構築を進めている。台風時など厳しい環境を想定し、傾斜許容に加え、浮体部を360度回転可能にしている。発電機は、保守しやすいよう海面上の風車下に設置する。
同社は研究開発型のスタートアップ企業で、2012年設立。東日本大震災を機に設立し、海に囲まれた日本に適した再生可能エネルギーとして、風力・潮流・波力などを用いた発電事業に取り組んでいる。
電源開発(Jパワー)、大阪大学と浮体式風車の開発などを進めていたが、22年8月にジェネシア・ベンチャーズから総額1億円を調達。23年5月には、Jパワー、東京電力ホールディングス、中部電力、川崎汽船と共同研究契約を締結し、研究開発を加速している。
アルバトロス・テクノロジーは今回調達した資金で、小型海上実験機開発の加速や人材獲得を行う方針。2024年度中には、海上に小型機を設置し実証実験を行う予定だ。(記事:三部朗・記事一覧を見る)