イギリス人のライフスタイルが表れたスラング2選 - イギリス英語のスラング特集 (20)

2023年12月11日 11:35

 イギリス英語のスラングには、その土地特有の文化や歴史が反映されている。今回は「Q」と「R」から始まる2つのスラング、"quids in"と"round"を取り上げる。これらの言葉は、イギリスの金銭感覚やパブ文化を色濃く反映しており、そこからイギリス人のライフスタイルを垣間見ることができるだろう。

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■Quids in

 「quids in」とは、儲かった、もしくは、儲かる見込みの高そうな状態を示すスラングだ。次に示す例文のように使う。

 ・He took a risk, but now he's quids in.
 (彼はリスクを冒したが、今ではかなり儲かっている)

 ・If the investment pays off, she'll be quids in.
 (その投資が実を結べば、彼女はかなり儲かることになる)

 「quid」とはイギリスのお金の単位、「£」(ポンド)のスラングだ。5ポンドなら「five quid」のように言う。

 ただしポンドの意味で使う場合、「quid」と単数形のままであることに注意したい。「quids」という複数形にはならない。「quids in」の起源は20世紀初頭にさかのぼるが、これが「quid」の複数形の使用法として現存する数少ない例である。

■Round

 「round」には、日本語でも「1ラウンド」というように、ボクシングのラウンドや、スポーツやゲームの何回戦という意味がある。また形容詞では「丸い」、副詞では「around」と同様の意味を持つこともよく知られているだろう。

 ここで取り上げる「round」は、ちょっと違う。最初の名詞の意味に近いが、パブ文化の盛んなイギリスでは、「パブでお酒を買うときの順番」、「一巡」を意味する。

 イギリスでは、パブに何人かで飲みに行ったときは、1人ずつ順番に全員のお酒を買ってあげる習慣がある。自分だけ好きなお酒を注文したり、人におごってもらって自分はお返しをしなかったりというのは失礼極まりないことだ。そうやって、仲間の全員がみんなにお酒をおごるのが社交上の常識なのである。

 その際の一巡を「a round」と言ったり、誰かがおごる順番を「one’s round」と言う。たとえば、以下のような会話が考えられるだろう。

 - Whose round is it? Is it Peter’s?
 (誰の順番?ピーターじゃないの?)
 - No. I’ve already bought a round. It’s your round.
 (いや、俺はもう買ったよ。おまえの番だろ)

 このように、「to buy a round」はパブでよく使われるフレーズだ。またこの方式で、お酒を買うことを、「to buy drinks in rounds」と言ったりする。もしイギリスでパブに行く機会があれば、この言葉が使われていないか耳を傾けてほしい。(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る

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