【QAあり】サンクゼール、上期は前年比2桁増の増収増益、9月に第1号店をオープンした新業態「MeKEL」は好調な滑り出し

2023年11月24日 17:05

2024年3月期第2四半期決算説明

久世良太氏(以下、久世良太):みなさま、こんにちは。株式会社サンクゼール代表取締役社長の久世良太と申します。日頃より、当社の企業活動にご理解とご支援を賜りまして、誠にありがとうございます。

本日は、前半に2024年3月期第2四半期決算の概要について、後半に9月にスタートした新業態の「MeKEL」についてご説明します。どうぞよろしくお願いします。

ハイライト

それでは、2024年3月期第2四半期決算概要をご説明します。まずは上半期決算のハイライトです。売上高は前年同期比11パーセント増の90億1,800万円、営業利益は前年同期比11.8パーセント増の7億4,600万円と、増収増益を達成しました。直営・FCの売上高は、いずれも堅調に推移しました。新規出店数は8店舗となり、計画どおりに進捗しています。

一方、既存店客数に関しては、第2四半期累計で前年同期比1.1パーセント減少しました。直近3ヶ月間では3.9パーセントの減少と、減少幅が拡大しています。前年同期に多くのテレビ番組に取り上げていただいたことの反動減に加えて、長引く残暑の影響で、秋冬商材の売上が低調となったことが要因です。

ECに関しても店舗と同様に、前年のテレビ番組の影響に加えて、9月に実施したフルフィルメント機能の外部移管により、一部で出荷遅延が発生したことが業績に影響を及ぼしました。

ホールセール売上高は、上半期を通して予想を上回り、好調に推移しています。

グローバルの売上高は、前期は上半期にコストコ社に対する売上が集中しましたが、当期は下半期に売上が計上される見通しのため、上半期は前期比4.7パーセントの増加にとどまっています。

売上総利益率は、チャネル別売上構成の変化により前年同期比で0.4ポイント低下しています。

連結業績概要

連結業績概要です。上半期の経常利益は8億1,600万円と営業利益よりも大きくなっていますが、これは、米国子会社に対するドル建て貸付金に係る為替差益を計上したことによるものです。

販売チャネル別売上高

販売チャネル別の売上高については、冒頭にハイライトでご説明したとおりです。

販管費の状況

販管費の状況です。人件費に関しては、ベースアップの実施に加え、一部の直営店において、売上に連動する販売委託人件費が増加しました。ただし、FCの売上構成比が上昇したことで、売上高に対する人件費の比率は前年同期比で低下しました。

荷造運搬費は、上半期は売上高に対して6.2パーセントの構成比となっています。計画上は6.5パーセントと予想していたため、物流効率化によって予想よりも低く抑えることができています。

「その他」に含まれている販管費は、主にスライドに記載されている費用が増加しました。第2四半期に実施したPortlandia Foods社の買収に係る費用も、こちらに含まれています。

販管費全体では前年同期比で9.6パーセントの増加となったものの、売上高の増加に対して、販管費の増加を抑制することができたため、売上高販管費率は31.1パーセントと、前年よりも0.4ポイント低下しています。

連結営業利益 前年同期比

営業利益の増減要因です。上半期における営業利益の増益要因は、主に売上高の増加によるもので、その他の要因についてはスライドのとおりです。

連結業績予想に対する進捗率

上半期経過時点の通期業績予想に対する進捗率です。スライド左側の連結業績予想に対する進捗は、売上高・各段階利益ともに予想を上回って進捗しています。右側の販売チャネル別売上高予想に対する進捗率は、EC・グローバルで予想を下回っています。

ECは、これから年末に向けてギフト売上が伸びる時期でもあり、グローバルも、当期は下半期に売上が伸びる見通しであることから、第3四半期以降に進捗率が改善していくと考えています。

既存店売上高・客数・客単価推移

既存店売上高・客数・客単価の推移です。前年同期に大型テレビ番組で取り上げていただいたことの反動減に加え、残暑による秋冬商材の売上低調により、9月の客数が減少しました。10月も前年にテレビ番組の放映があり、また、暖かい気候が継続したことで、9月と同様の傾向が続いています。

現在、客数向上のための複数の施策を展開しており、11月以降の客数改善に向けて取り組んでいます。なお、上半期における既存店売上高は前年同期比で7パーセント増加しています。

業態別店舗数

店舗の出退店状況は、スライドの表のとおりです。上半期の新規出店数は「久世福商店」が7店舗、新業態の「MeKEL」が1店舗の、合計8店舗となりました。なお、退店実績はありません。

店舗会員数・ロイヤル顧客比率

スライドのグラフは、当社の公式アプリに登録しているお客さまのうち、店舗をご利用いただいているお客さまの会員数と、その中で当社の定める分類において、「ロイヤル顧客」に分類しているお客さまの割合を示しています。

店舗会員に占める「ロイヤル顧客」の割合は継続して伸びており、2023年9月末時点で、店舗会員のうち13.3パーセントを占めています。

グローバルの状況:国別売上高

グローバルチャネルの国別売上高です。引き続き、米国と台湾がグローバルチャネルの主要な市場となっています。米国は、前期の第2四半期に、コストコ社に対する売上が集中して発生したため、前年比で売上が減少しました。コストコ社以外の顧客に対する売上高は、前年比で増加しています。

なお、当期は下半期にコストコ社に対する売上が計上される見込みとなっており、米国に関しては、下半期に売上が伸びていく見通しです。

台湾は、引き続き好調に推移しました。前期に続き、当期もコストコ社の販促イベントである「ロードショー」に参加し、第2四半期の売上が伸びています。

グローバル全体では、上半期は予想を下回る結果となったものの、米国の伸びに合わせて、下半期に改善してくると見込んでいます。

ROIC・ROE

直近12ヶ月間のROICとROEはスライドのとおりです。引き続き、高いROICとROEを保持することができています。以上で、2024年3月期第2四半期決算に関するご説明を終わります。

1号店外観

続いて、9月に第1号店をオープンした新業態「MeKEL」の概要について、ご説明します。「MeKEL」業態は、最初の構想から第1号店のオープンまで2年ほどの準備期間を経て、業態開発を進めてきました。

2023年は、「久世福商店」が始まって10年目という節目の年になります。そのタイミングで新しい業態を開発することによって、もっと世の中のお役に立ち、会社として成長していきたいという想いから、私たちは「MeKEL」業態を新たに立ち上げました。

発見の食倉庫「MeKEL」

「MeKEL」は「発見の食倉庫」をコンセプトに、冷凍食品やアジアを中心とする世界の食品を取り揃えた、新しいかたちのグロッサリーストアです。スライドは1号店の店内の様子です。アジアのバザールや倉庫の雰囲気を感じられる様相となっており、幅広い年代のお客さまにワクワクしていただける売場になっています。

冷凍商品を陳列する冷凍庫は、一般的なものに比べて80パーセントの電力を削減できるものを採用しました。また、ご家庭で不要になった保冷剤を回収して、リサイクルするステーションも設けています。

2023年9月 売上実績

9月にオープンした第1号店は、非常に多くのお客さまにご来店をいただき、オープン月の売上高は3,300万円となりました。こちらは「サンクゼール」「久世福商店」の既存店と比較して、4倍以上の売上になります。客単価は2,500円と、こちらも既存店を大きく上回りました。

客単価の内訳を見ると、平均商品単価は既存店よりも150円ほど低くなっているものの、購入点数は5.9点と、既存店の約2倍となっています。「MeKEL」の商品は比較的、手に取りやすい価格帯であるため、より多くの商品をご購入いただいています。

「MeKEL」を取り巻く外部環境

私たちが「MeKEL」を立ち上げた目的は、日常の食のお困りごとを解決できる商品を、世の中に提供していくことです。日本国内では、共働きのご家庭が増えている傾向にあります。仕事を終え、お子さまを迎えに行き、その後、自宅で夕食を作ることに負担を感じているという声が上がっており、そこがまさにニーズだと捉えています。

また、コロナ禍を経て、健康に気を遣う人がより一層増え、おいしさはもちろん、「できるだけ体にいいものを食べたい」というニーズは、世代を問わず広がっています。

このような現代の人々が抱える食の悩みを解決できる商品が、今必要とされているのではないか、私たちはこの仮説が本当に正しいのかを確認するために、「サンクゼール」で働く女性数百名にアンケートを取りました。アンケートでは「こんな商品があったら助かる」「うれしい」という、働く女性たちのリアルな声を集めることができ、これは需要があると確信しました。

「MeKEL」の商品コンセプト

実際に集まった声を具現化したものが、スライドに記載している「時短を実現する『おいしい冷凍食品』」「保存食にもなる『おいしいレトルト食品』」「あの時食べた、あの味!『海外の食』」、そして「日本各地の『おいしいもの』」という商品コンセプトです。

「MeKEL」の商品コンセプト

このような商品コンセプトをかたちにするために、「MeKEL」のプロジェクトは1年以上かけて、日本はもちろん、アジアをはじめとする海外の国を巡り、たくさんの商品を集め、オリジナル商品を開発してオープンの準備を進めてきました。

一方で、商品開発の傍ら、どのようなお店であれば毎日行きたくなるのか、お客さまの日常の買い物が楽しくなるのかなど、お店作りやブランディングについても議論を重ねてきました。

プロジェクトメンバーたちは、日本各地や海外を忙しく飛び回る日々の中、ある時、出張で訪れたアジアのマーケットに、そのヒントを見つけました。熱気と活気があって、見たこともない食がずらりと並び、見ているだけでワクワクする、「こんなおいしさがあったのだ!」という新しい食との出会いや発見の喜びは、慌ただしい日常生活ではなかなか味わうことのない、心が躍る体験でした。

「MeKEL」の商品コンセプト

そんなアジアのマーケットでの体験と重なったのが、創業者である良三会長の幼少期の思い出です。良三会長の父は業務用の食品問屋を経営しており、品物が保管されていた倉庫は、幼い子どもたちにとって格好の遊び場になっていました。倉庫には、海外から輸入された香辛料の入った麻袋が天井まで高く積まれており、良三会長はその中で、兄弟でかくれんぼをして遊んでいたそうです。

「MeKEL」の商品コンセプト

何かを見つけたり、新しいものに出会ったりするのは、誰にとっても人生を豊かにする大切な経験です。そのようなワクワク感をみなさまに味わっていただきたいと考え、長野の方言である「めっける」から、「MeKEL(メケル)」というブランド名にしました。

また、キャラクターの白熊は、倉庫内で遊んでいるお子さまを連想しています。「少しでもお客さまにお買い物を楽しんでいただきたい」という思いから、このキャラクターにしました。

商品戦略

「MeKEL」の商品戦略についてご説明します。「MeKEL」では、「日常の食」にフォーカスをしています。日々のおかずや肉・魚介などの素材も取り揃えて、「冷凍庫の定番品」を目指します。

大きな方向性として、日本とアジアを含めた世界の食を、「冷凍」「常温」の2温度帯で品揃えしています。

冷凍は、時短ニーズがある完成品の惣菜や、手作り感を実感できるミールキットを揃えています。国内の協力工場を開拓し、オリジナル商品を開発していくことで、「MeKEL」でしか買えない、独自性のある冷凍食品を揃えています。

商品戦略

これまでに選んできた商品数は約1,600SKUになります。冷凍と常温が半々で、海外の食品が約3割を占めています。

商品戦略

カテゴリごとに見ると、魚の惣菜は150SKU、肉の惣菜は90SKUです。さらにお菓子は170SKUで、海外食品は600SKUほどの点数があります。この中で特に売れた商品をいくつかご紹介します。

売れ筋商品

売上ランキングの上位にランクインしている商品の中で目立っているのが、タイ料理です。特に、グリーンカレー、カオマンガイ、パッタイなど、今回、力を入れてオリジナルで開発したタイ料理シリーズは、オープン直後からすべてのアイテムが即完売し、これまでに何度も再入荷しています。

売れ筋商品

韓国から直輸入している参鶏湯(サムゲタン)や韓国のりなど、韓国料理も非常によく売れています。

売れ筋商品

メインのおかずになる惣菜も非常に人気で、オリエンタルカレー、かつおのたたき、鶏ももチキンステーキなど、解凍してすぐ食べられる商品がよく売れています。

カテゴリ別売上構成比(2023年9月)

オープン月全体の商品カテゴリ別売上構成比です。41パーセントが惣菜、15パーセントが穀物・麺類というカテゴリの商品が占めています。想定したとおり、「MeKEL」はメインのおかずやご飯など、まさに私たちが狙っていた、「日常の食」を求めるお客さまがご来店されていることがわかります。これは、調味料が主力である「久世福商店」とは大きく異なります。

実際に、「今夜、食べるものを買いに来ました」とお話しされるお客さまもいらっしゃいました。「MeKEL」によって、メインである主食のマーケットに参入することができ、「久世福商店」「サンクゼール」とは異なる顧客層の獲得につながっていることを実感しています。

出店戦略

「MeKEL」と「久世福商店」の出店戦略の違いについてご説明します。これまで「久世福商店」では、広域からお客さまを呼び込めるショッピングモールを中心に出店を行ってきました。それとは異なり、「MeKEL」では地方都市のロードサイド型独立店を計画しています。

日常の生活圏に出店することによって、地域のお客さまが車で10分以内にご来店いただけるお店を作りたいと考えています。便利でおいしい、世界の食を取り揃えたお店は地方都市にはまだ少ないため、「MeKEL」の強みが活かせると考えています。

店舗運営の特徴

「MeKEL」は店舗運営にも特徴があります。1号店では、私たちの店舗で初めてセルフレジを導入しました。これによってレジの混雑を緩和し、少人数での店舗運営が可能になります。

また、ショッピングセンターではなくロードサイドに出店することで、固定家賃で契約しやすくなります。その結果売上が伸び、利益を出しやすい店舗の収益構造を作ることができます。

冷凍食品の自動販売機

店舗の入口付近には、冷凍食品を販売する自動販売機を設置しています。店舗の営業時間外でも、自動販売機で商品をご購入いただけます。

現在、自動販売機で販売動向をテストしており、商品によっては補充後すぐに売り切れてしまう人気商品もあります。小さなスペースで設置可能なため、今後はいろいろな場所で展開できる可能性があると考えています。

ブランドポジショニング

「MeKEL」のブランドポジショニングはスライドのとおりです。既存の「久世福商店」「サンクゼール」よりも、主食やおかずにそのまま使える商品が多く、価格帯も低めに設定されているため、幅広い年代のお客さまにご利用いただけるブランドになっています。

年代別売上構成比(2023年9月)

実際に会員登録していただいたお客さまの年代別の売上構成比を見ると、「MeKEL」は30代から50代が多く、20代の比率も一定数あります。ちなみに、「久世福商店」の場合は、50代から60代がボリュームゾーンとなっています。

「MeKEL」の場合は、先ほどのブランドポジショニングの図のとおり、若い方を含む幅広い年代のお客さまにご利用いただいています。

成長戦略

「MeKEL」の中長期的な成長イメージを共有します。まずは1号店でさまざまな商品や販促をテストして、その後、多店舗展開につなげていきたいと考えています。

最初は車で10分以内にご来店いただける、20万人商圏の立地から開発していき、将来的には5万人、10万人の商圏も狙っていきたいと考えています。あくまでも仮定になりますが、そこまで広げることができると800店舗以上の出店が可能となり、非常に大きな可能性を感じています。

以上で、新業態「MeKEL」に関するご説明を終わります。ご清聴いただき、ありがとうございました。

質疑応答:国内既存店のプラス転換の見通しについて

質問者:国内既存店について、前年にテレビ番組で取り上げられた効果の反動や残暑の影響で、9月、10月は秋冬商材が不調だったとのことですが、11月に寒くなってきた状況もあり、今後プラス転換する見通しはついているのでしょうか?

久世良太:今後の見通しについては、11月に入って寒さが増してきたため、冬物の商材の動きが見えてきており、日々の売上を確認すると復調傾向が感じられます。

一方で、お客さまは秋口以降に生活防衛をしていく動きがかなり見られると思いますので、このような動きにすばやく反応するために、価格を弾力的に下げていくことも含めて、柔軟に価格政策を取り入れていきたいと考えています。

私どもは食品のSPA(製造小売業)ですので、自社で製造した商品の比率がかなり高いです。強みを持つ商品を中心に弾力的な価格政策を行うことで、「久世福商店」10周年の目玉として客数増、来店動機に促していきたいと考えています。

お客さまの生活防衛の視点から、私たちがしっかりご提案していくことが数字につながると確信しています。

質疑応答:価格戦略以外の販促施策について

質問者:価格戦略以外の販促施策で手応えを感じられるものはありますか?

久世良太:今は、インフレにいかに対抗するかということだと思っています。定番商品については、価格上昇を意識せざるを得ない消費もあると思いますが、現在、コストコ社も含めた好調な企業は、例えばトレジャーハンティングなど、新しい価値を訴求する新商品の開発、導入を行っており、価格ではなく価値にフォーカスしていく戦略をとっているからではないかと考えています。

私どもは定番商品の改良を地道に続けてきましたが、この局面では、価格施策とともに新しい価値を訴求する新商品の投入を積極的に図っていくことが必要で、おもしろい展開になるのではと考えています。

質疑応答:グローバルチャネルの内訳について

質問者:グローバルチャネルが下期から増えていく見通しとのことですが、納品店舗数見通しやそのための営業施策など、背後にある数字や内訳について、もう少し具体的に解説をお願いします。

久世直樹氏(以下、久世直樹):久世直樹です。よろしくお願いします。基本的に、アジア、米国のコストコ社の戦略が1つの大きな柱だと考えています。上半期は残念ながらお伝えした数字になりますが、下半期はしっかりと売上が計上できると考えています。

先ほど良太社長からもお話ししたとおり、コストコ社からは、トレジャーハンティングな商品を次々と開発・提案することを求められており、グローバルで成功している商品は、グローバルで展開してほしいと言われています。つまり、日本のコストコ社で売れているものを台湾や米国に持っていき、米国で売れているものを台湾や日本に持ってくるという戦略です。

その中で、私たちは2月くらいから戦略を変更し、次々に新たな商品を生み出して提案したことが、下半期の売上に乗ってくると考えています。例えば、日本のたれ3本セットは、4つの地区でそれぞれ約20パレットから30パレット、多いところで60パレットの受注があり、納品しています。

他にもお菓子などの商品を続々と提案し、高い確率で採用が決まってきていますので、下半期、来期の上半期の数字に大きく表れると考えています。

また、6月に買収したオーガニックケチャップを展開しているPortlandia社も売上が計上できていますので、しっかりと伸ばしていきます。「Kuze Fuku & Sons」など、コストコ社以外の業態も売上が伸びてきている状況です。

「Kuze Fuku & Sons」については、ブローカーを活用した販売強化と、問屋を活用した物流、納品などの仕組みも整いつつありますので、今後はしっかり伸ばしていけると考えています。

質疑応答:ECの増収要因と施策について

質問者:ECに関して、「店舗と同様に前年同期の大型テレビ番組露出の反動減が要因」とご説明がありましたが、前年同期比で5.9パーセントの増収となっています。どのような施策を行ったのか、詳細を教えてください。

久世良太:基本的に、私どもは福袋などのイベントを販促に活用してセールを打っています。会員アプリは店舗・ECと連動していますので、店舗で購入いただいているお客さまに積極的にお伝えすることがECへの流入につながっています。既存顧客を中心にあまり広告費をかけずに成長できていると考えています。

質疑応答:フルフィルメント機能の外部移管によるEC売上への影響について

質問者:ECの売上について、9月実施のフルフィルメント機能の外部移管による出荷遅延が影響したとのことですが、それがなければもう少し伸びていたのでしょうか?

久世良太:そうですね。本来あるはずの在庫がタイムラグによって欠品し、出荷が遅くなってしまったり、サプライチェーンがやや滞り、本来売れ筋の商品を「今は欠品しています」と表示せざるを得なくなったりしたことが続いていました。このようなことが改善されると売上の損失がなくなり、回復してくると考えています。

質疑応答:「MeKEL」の今後の展開について

質問者:「MeKEL」の取り組みについて、1号店が長野市に開店し、今後は5万人、10万人と商圏規模を展開するというお話でしたが、どのような時間軸で考えていらっしゃいますか? 1号店で売れる商品や客層などマーケティングをチェックされると思いますが、ビッグピクチャーのようなものがあれば解説をお願いします。

久世良太:今期は1号店の実験店舗を開業することが目標でしたが、来年度は冷凍物流が到着できる範囲で店舗の密度を上げられるよう、長野県もしくは近隣県に2店舗目、3店舗目の出店を考えています。1号店とは商圏や立地場所を変更し、全国展開に耐え得るかをテストしていくための直営店です。それ以降は、早くて来期、遅くても再来期には、フランチャイズ展開を試みていきます。

このような巡航速度に乗って、「MeKEL」業態でも5店舗、10店舗と重ねていくことをビジョンとして計画しています。まずは1号店について、新しいマーケットの情報をしっかり取り入れて開発していきたいと思います。

質疑応答:「MeKEL」と「久世福商店」の棲み分けと、成長の余地について

質問者:物価高騰により、消費者の買い控えや価格を抑えたPB商品を買うなどの備えの動きが出ていると思いますが、「MeKEL」は地方において価格に敏感な方も取り込めると思います。既存の「久世福商店」と棲み分けもできると思いますが、インフレ時代に成長の余地があると見ていらっしゃるのでしょうか?

久世良太:私どもは、インフレ時代を見据えてお手頃価格に設定しています。20代の方や男性の方、単身世帯の方などが積極的に活用されている姿を見ると、ブランドとしてしっかりと訴求できていると手応えを感じます。

ただし、それだけではおもしろくはないため、特に地方都市においては、スーパーの品揃えだけでは物足りない部分について豊富な選択肢を提供するなど、新たなニーズも狙っていきたいと思っています。

質疑応答:フルフィルメント移管の理由について

司会者:「フルフィルメントの混乱が顧客の離反につながらないか心配です。移管の理由は何でしょうか? 今後のギフト商戦に問題はないのか教えてください」というご質問です。

久世良太:顧客の離反は、絶対にあってはならないことだと考えており、経営陣として優先度を高めて対応しています。フルフィルメントは、これまで自社で行ってきましたが、現在10億円台のEC売上が今後2倍、3倍の規模となった時には、今のフルフィルメントの坪数では対応しきれなくなります。

より多くの受注に応えるための戦略的な転換を考えた結果、フルフィルメントを他社に移管し、現在の3倍の面積を確保して対応することにしました。この移管によってリードタイムも大幅に短縮できると考えており、結果的にお客さまの利便性を高める施策だと思っています。

おっしゃるとおり、1ヶ月、2ヶ月ほどはフルフィルメントが混乱しましたが、第2四半期で解消できたと認識しており、第3四半期以降、特に12月商戦はしっかり戦えると思っています。

私たちのメンバーも移管先に常駐し、1つのチームとして対応していきたいと考えています。

質疑応答:米国での展開状況について

司会者:「米国でのスーパーの配荷戦略、エージェントの活用、買収した工場やブランドの現状はいかがでしょうか?」というご質問です。

久世直樹:スーパーの配荷戦略については、基本的にはミドルからハイエンドのスーパーへの配荷を目指し、そこを得意とするブローカーを活用して販売強化を図っています。ただし、ブローカーだけでは物流が回りませんので、現在は全国をカバーするディストリビューター、問屋との契約も進めています。

今まさに、米国西海岸をカバーする問屋との契約が進み、そこからのディストリビューションが進んでいます。この年末には、ナチュラル系の食品を扱う大手問屋2社との契約がクローズする見込みです。そのようなところからディストリビューションが進むと、さらに高い確度で売上が上がっていくと捉えています。

また、2017年4月に買収した食品加工工場について、最初の2年間、3年間は、基本的に日本の「サンクゼール」、もしくは「久世福商店」に配荷させるための工場として活用してきました。その中で、米国内での売上も意識し、徐々に増やしてきたという背景があります。

数年前から続く円安の影響で日本への出荷はほぼ「0」になっており、米国の工場の売上のほとんどは、米国内もしくは台湾、香港、オーストラリア、カナダへの出荷がベースになっています。この数年でかなり様変わりしました。

久世良太:補足します。最近買収したPortlandia Foods社はファブレスですので、私どものグループ傘下に入ったことで私どもの工場が活用できるようになり、それによって稼働率が向上します。

また、第2四半期においてはPortlandia Foods社の売上は1ヶ月分しか計上されていなかったのですが、第3四半期以降はすべて計上されます。業務用市場でも非常に強いブランドですので、私どもが捉えている小売市場だけでなく、業務用市場にもオーガニックケチャップの安定した売上を付加することが大切だと考えています。

Portlandia Foods社の売上は当初の想定以上に伸びていますので、さらなる拡大を目指して努力していきます。

質疑応答:新業態「MeKEL」の展開について

司会者:「『MeKEL』について、資本力のある大手の模倣と参入を懸念しています。模倣を困難にする工夫はあるでしょうか?」というご質問です。

久世良太:そのような懸念はもっともだと思います。「サンクゼール」は長野の市場を攻めていき、「久世福商店」は食のセレクトショップ、さまざまな食材を集めたグローサリー・ストアとして国内で展開してきました。

立ち上げ当初は「市場が大きすぎるのではないか」「模倣されてしまうのではないか」という懸念があったのですが、現在まで勝ち抜いて、和のグローサリー・ストアとして確立できています。食のSPAビジネスとして横展開できた強みが、今後、冷凍食品でも発揮できるのではと考えています。

この12月までに商品開発ラボが完成する予定ですが、こちらに冷凍食品の装置を導入して、そのような商品をコアに「MeKEL」のプライベートブランドを作っていきたいと思っています。

現在はまだ1店舗のみで、9割がNB商品です。いずれも各地域でチョイスしたこだわりの商品ですので、なかなか模倣しづらいかと思うのですが、さらにそれをPB化していくことで差別化を図れると考えています。

冷凍食品メーカーは中小企業が多く、そこまで開発力は高くないと思っています。商品開発力やそれを展開する力は、まさに私たちの強みです。流通の小回りの良さ・企画開発力の高さや、500社のサプライヤーネットワークをうまく結合させることで、独自性のある食品ラインナップを拡充していきたいと考えています。スピード感を持って取り組み、「MeKEL」の成功につなげていきます。

質疑応答:ロードサイドでの「MeKEL」の展開について

司会者:「ロードサイドは新フォーマットの小売を渇望しているため、「MeKEL」へのFC引き合いは強いのではないでしょうか?」というご質問です。

久世良太:現在、複数のフランチャイズ候補先の企業と商談を重ねていますが、非常に良い反応をいただいています。

書店やロードサイド型の食物販、カフェチェーンなどを複数展開されているフランチャイズオーナーのほか、地域で存在感のあるホームセンターなどの小売企業、商品開発力の乏しいスーパーなどとシナジーを発揮できるのではないかと考えています。

地域ごとに取り組みを進めていきたいと考えており、引き合いは非常に高いと正直に申し上げることができます。

質疑応答:「MeKEL」の多店舗展開について

質問者:「MeKEL」の多店舗展開に際して、商品ラインナップへの工夫や、リピート促進の施策はありますか?

私も実際にお伺いして、商品の豊富さなど非常に体験価値の高いものを感じることができたのですが、アジア食は比較的ニッチな分野ではないかと思います。

「久世福商店」にあるような和食材や、一般的なスーパーで売っているお弁当などと比べると、週に何回も食べるものではないというイメージがありますが、どれだけ需要を作れるのか、リピートを促すような施策があればお聞かせください。

久世良太:商品のラインナップに関してはご指摘のとおりで、チューニングする必要があると考えています。新奇性があることで20代、30代の若い方から注目いただけるのは素晴らしいことだと思っていますが、より50代、60代と幅広い年代のお客さまに支持されるためには、冷凍食品やグロッサリーでなじみのある商品を取り揃える必要があります。

キー商品とも言える強い商品が複数あることにより、ご来店いただく流れができ、購入頻度やリピートを高めることにつながっていきます。一方で、目新しさだけではなく、安心感を入れ込んでいくことも必要です。

そのような商品を戦略的に投入することで、スムーズな多店舗展開につなげていきます。この点に関しては私どもが非常に得意とする分野でもありますので、しっかりと向き合っていきたいと思います。

質疑応答:人材戦略について

質問者:人材戦略について、ベースアップなどのお話もあり、人材投資を進めているとのことですが、御社の従業員の中には一流企業からサンクゼールに転職された方もいると聞いています。どのようなノウハウやスキルを持った人材を積極的に採用されているのでしょうか?

また、なぜ一流企業からサンクゼールに入社を決意するのか、従業員が感じている御社の魅力について、良太社長のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

久世良太:当社で働きたいと考えてくださる方がいることは、非常にありがたく思っています。実際に一流企業を経験されている、大変有能な方が多いです。そのような方が経営や意思決定に直接携わり、自分が会社を動かしている実感を持って働けるというイメージが、サンクゼールの魅力になっていると思います。

私どもは食品のSPA企業としてグローバルに戦える組織であり、その点に大きな可能性を感じ、自ら商売を展開できる環境・ビジネスを魅力的に思う方が多いのではないかと考えています。

人材戦略としては、現在は特にコーポレート部門を強化したいと考えています。全社戦略としてのM&Aや、グローバル展開をさらに推進するための成長戦略などについて、大胆に踏み込んで構想できるような人材を求めています。

もう1つはマーケティングです。BtoC、BtoBのビジネスにおいて、しっかりとしたノウハウを持っている方に推進していただけたらと思っています。

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