悪性度が高い大腸がんの転移、骨髄が促進に関係 抑制の治療法開発へ 京大
2023年11月1日 08:06
京都大学は10月27日、悪性度が高い大腸がんについて、その転移にトロンボスポンジン-1(以下THBS1)と呼ばれるタンパク質が重要な役割を果たしていることを突き止めたと、発表した。
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THBS1は、骨髄から腫瘍組織に呼び寄せられた細胞から分泌されており、腫瘍間質において免疫細胞の働きを抑制することで、転移を促進するという。
■腫瘍間質とは?
大腸がんは、がんによる死因のなかでも男性で2位、女性では1位を占める。これは、大腸がんのなかに、治療が難しく、転移しやすい、悪性度の高いものが20%ほど含まれているためだ。
ところでこのような悪性度が高い大腸がんには、ある特徴がある。腫瘍組織のなかにがん細胞以外の細胞や組織が多く含まれているのだ。これを腫瘍間質という。
研究グループは、この悪性度の高い大腸がんの特徴である腫瘍間質に着目。その構成要素である細胞外基質タンパク質THBS1について、研究を進めた。
■THBS1が免疫細胞の働きを抑え、転移を促進
まず研究グループは、ヒトの大腸がんを詳しく調べた。すると腫瘍間質においてTHBS1が多くつくられていることが判明。
そこで、THBS1をつくれなくしたマウスに大腸がんを移植したところ、肝臓やリンパ節への転移が抑制され、生存期間も改善した。さらに研究グループが詳しく解析や実験等を進めたところ、THBS1が免疫細胞の働きを抑制することで転移を促進していることがわかった。
では、どのような細胞がTHBS1を分泌しているのだろうか?
これを解明するため、研究グループがさらに遺伝子解析と実験を重ねたところ、骨髄から呼び寄せられた細胞がTHBS1を分泌していることがわかった。
また今回、研究グループは、骨髄から腫瘍組織にTHBS1を分泌する細胞を呼び寄せるタンパク質も明らかにしたが、このタンバク質の働きを阻害したところ、転移が抑制されることが示された。
研究グループでは今後、THBS1の働きを阻害する有効な方法の開発を進める方針。またTHBS1は、大腸がん以外の悪性度の高いがんでも強く発現しているところから、今回の研究成果を、大腸がん以外のがんに応用する研究も進めていきたいとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)