AI導入で企業の経営改革が今まさに必要となっている
2023年10月29日 08:01
ビジネスへのAIの導入は、大きな効果を上げることが期待されている。一般的にその導入効果としては、業務効率や生産性の向上、それによるコスト削減、データを活用した予測精度の向上が挙げられる。またパーソナライズされたきめ細かい顧客対応により、顧客満足度向上を図ることができると言われる。
【こちらも】【話題】「ChatGPT」がもたらすビジネスチャンスとリスク
例えばサイバーエージェントでは、オペレーション業務の6割削減を目指している。様々な企業でAIをどう活用するか、研究が行われており、今後その適用領域は拡大されるだろう。
一方で、AI失業が現実に起きている。AI失業とは、定型的な作業がAIに代替されたことで解雇されることである。アメリカの調査会社のレポートによれば、2023年1月から8月までに約4,000人が削減されたと言う(出典:Challenger, Gray & Christmas) 。
雇用が流動的なアメリカでは解雇が発生するが、日本の場合はそれが難しいため、人員配置を行うことになる。例えば、反復的な作業や定常的な作業を行っていた人員を、より付加価値の高い営業や企画、あるいはDXといった領域に振り向ける等の活動が実践される。
その際に必要となるのが、リスキリングだ。今後必要となる知識や技能を定義し、そのための研修制度や学習の場を設け、時間をかけて実務に適用していくことになる。DXは、ITに関する専門知識も求められるため、急にできるようになるものではなく時間がかかる。
但し、リスキリングも簡単には進まないのが実態だ。対象者の適正、スキルセット、意欲等の個人的な要因に加え、企業の組織分化や待遇、人事制度の改正も必要となることから、うまくいかないケースも多い。経済産業省の「デジタル時代の人材政策に関する検討会」においても、その点が指摘されている。
そういった中でもAIの導入は広がるだろう。業種によっては、AIはもはや企業競争力の源泉になりつつある。短期的には業務効率化を図り、中期的にトップライン向上を狙うような活動が、各企業で行われるはずだ。
しかし、リスキリングとそれに伴う組織文化の改正が伴わなければ、いずれ人材の確保ができずAI導入も行き詰まることになる。既に多くの領域で人材獲得の争いが発生しており、AI導入に伴う企業の教育、制度、文化の改革は、まさに今必要な経営施策の1つである。(記事:Paji・記事一覧を見る)