相場展望10月16日号 米国株: 反発相場が終わり、下落に転じるリスクに注意 中国株: 「失った30年の日本」を超えそうな中国 日本株: 「売り方の買い戻し」相場はここまでか、注意
2023年10月16日 09:39
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)10/12、NYダウ▲173ドル安、33,631ドル(日経新聞より抜粋)
・朝方発表の9月の米消費者物価指数(CPI)の前年同月比の上昇率が市場予想を上回った。米長期金利が上昇し、株式の相対的な割高感を意識した売りが出た。午後に長期金利が一段と上昇した場面では、NYダウの下げ幅は一時▲340ドルを超えた。
・9月の米CPIは前年同月で8月と同じ+3.7%上昇となり、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想+3.6%を上回った。米連邦準備理事会(FRB)による追加利上げ観測が再燃し、米債券市場では長期金利が上昇。米財務省が実施した30年物国債の入札が「低調」な結果と受け止められると、米長期金利は前日に比べ+0.17%高い4.72%を付ける場面があった。
・市場では「金利の動きを見ながら取引する市場参加者が増えており、金利の上昇で株式には機械的な売りが出やすくなっている」との声が聞かれた。
・NYダウは前日までの4営業日で+680ドル余り上昇していたため、主力株には目先の利益を確定する売りが出やすかった。イスラム組織ハマスとイスラエルの軍事衝突で中東の地政学リスクが高まっていることも株式相場の重荷になった。
・一方、FRBは今後の利上げを慎重に判断するとの姿勢を示している。9月のCPIでは食品とエネルギーを除くコア指数が前年同月比+4.1%上昇と市場予想と一致。8月の+4.3%上昇からは伸びが鈍化した。利上げの決め手となるほどではなかったとの受け止めもあって、NYダウは上昇に転じる場面があった。
・高金利が景気を冷やすとの見方から景気敏感株や消費関連株に売りが出た。航空機のボーイング、機械のハネウェル、外食のマクドナルドなどが下げた。半面、朝方に決算を発表したドラッグストアのウォルグリーンズが買われた。
【前回は】相場展望10月12日号 米国株: 政策金利引上げ停止観測強まるが、インフレ抑制が抜ける 日本株: 買いエネルギーが高まらず、NYダウ比で割安感薄まる
2)10/13、NYダウ+39ドル高、33,670ドル(日経新聞より抜粋)
・朝発表の四半期決算が好感された金融株などを中心に買いが入った。一方、中東情勢を巡る緊張が一段と高まっており、株式相場全体の重荷になる。
・金融のJPモルガンチェースは前日比+2%弱上昇した。朝に発表した2023年7~9月期決算では1株利益などが市場予想を上回り、買いを誘った。NYダウの構成銘柄ではないが、同業のシティーとウエルスファーゴも同日に決算を発表し、市場の想定を上回る内容が評価され、買いが入った。
・医療保険のユナイテッドヘルスも+3%弱高で終え、指数全体を+91ドル押し上げた。朝発表した7~9月期決算は増収増益となり、売上高と1株利益がいずれも市場予想を上回った。NYダウは上げ幅が一時+300ドル超となる場面があった。
・半面、中東情勢の緊迫化は株式相場の重荷となった。イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突が激化することへの懸念は根強い。積極的に運用するリスクを回避しようと、相対的に安全資産とされる米国債や金に資金を移す動きも見られた。
・原油価格の大幅な上昇で、インフレが再燃するとの懸念も株売りを誘った。ミシガン大が10/13に発表した消費者態度指数は63.0と、前月68.1から悪化。1年先の予想インフレ率は3.3%と前月の3.2%から上昇し、5カ月ぶりの高水準となった。「様々な不安が市場を取り巻いている」との声が聞かれた。ハイテク株を中心に売りが出やすく、NYダウは下落に転じる場面があった。
・JPモルガンのダイモン最高経営責任者(CEO)は10/13の決算資料で、インフレ高止まりのリスクや米金融引締めの影響、ロシアのウクライナ侵攻の長期化やイスラム組織ハマスのイスラエル攻撃といった地政学リスクに言及した。「世界は過去数十年で最も危険な時期にあるかもしれない」との見解を示し、投資家心理が悪化した面もあった。
・個別銘柄では、外食のマクドナルドや日用品のP&Gなどが買われた。石油のシェブロンも高かった。半面、映画・娯楽のディズニーと航空機のボーイングは下落した。顧客情報管理のセールスフォースやスマートフォンのアップルといったハイテク株も安かった。
●2.米国株:今回の反発相場から、下落基調に転換するリスクに注目
1)10/13の米国株式市況はまちまちながらも、総じて下落基調に転換
・NYダウは金融株の買いで+39ドル上昇も、他の株価指数は軒並み下落。
NYダウ +0.12%上昇 (前日比)
ナスダック総合 ▲1.23%下落
SP500 ▲0.50%下落
PHL半導体 ▲2.70%下落
・10/13のNYダウは、好業績発表で金融株高が相場を支えたが、上値は重い。ただ、最近の反発相場を牽引してきた半導体株指数のPHL半導体(SOX)の下落率が一番大きいところに注目したい。
2)10/13は、安全資産に資金が向かい、金利は低下・金が買われた
・イスラム武装組織ハマスがイスラエルを奇襲攻撃、イスラエルは反撃に出る。中東情勢の地政学リスクから、安全資産といわれる米国債が買われ10年物利回りが10/13に4.56%にまで急落した。
・NY金先物も安全資産と見られ、中東情勢の一段の悪化を警戒し、前日比+62.9ドル高の1,945ドルとなった。
3)反発相場の流れが転換する可能性が出てきた
・急反発を牽引してきた主力の半導体株に、変調の兆し。
・SOX指数は、10/13の下落率が他の株価指数よりも大きい。
・長期金利低下で株式が割安と見られていたが、金利上昇の懸念が増すリスク増。
・中期的には株式相場は下落基調に転換済で、今回の反発は自律反発の範囲内との見方をする。
・恐怖指数(VIX)は、10/12の16.69⇒10/13の19.32と+2.63急増は不安示す。
●3.米利上げ終了か、物価高の減退で=フィラデルフィア連銀総裁(ロイター)
●4.世界の株式ファンドから▲89.3億ドル流出、金利上昇と地政学緊張(ロイター)
●5.ブラックロック、長期投資ファンドから資金純流出、コロナ初期来(ブルームバーグ)
1)7~9月期で▲130億ドル(約1兆9,400億円)が純流出。
●6.米9月消費者物価指数(CPI)は前年比+3.7%、予想+3.6%、8月+3.7%(フィスコ)
1)9月コアCPI指数は前年比+4.1%、予想+4.1%、8月+4.3%。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)10/12、上海総合+28高、3,107(亜州リサーチ)
・当局の株価対策が期待される流れとなった。
・「国家隊」と呼ばれる中国政府系投資会社・中央滙金投資は10/11、4大国有銀行のA株を買増している。さらに向こう6カ月内に流通市場で一段の買増を続ける方針を示すなか、本土株の下値不安も薄らいだ。
・業種別では、金融が相場を牽引し、自動車の上げも目立ち、ゼネコンもしっかり。発電・設備・素材・医薬・運輸なども買われた。
2)10/13、上海総合▲19安、3,088(亜州リサーチ)
・中国経済の成長鈍化が意識される流れとなった。
・朝方公表された9月の物価統計では、消費者物価指数(CPI)が前年同月比で横ばいの0.0%にとどまり市場予想の+0.2%と前年実績の+0.1%を下回った。
・一方、生産者物価指数(PPI)は▲2.5%。下落率は前月実績▲3.0%から縮小したが、市場予想の▲2.4%より大きな下げとなった。また、昼前に報告された9月の貿易統計に関しては、前月ほどではなかったものの、輸出と輸入の縮小が続いた。
・もっとも下値を叩くような売りは見られない。当局の株価対策が期待されている。外電が10/13、消息筋情報として伝えたところによれば、株式市場を下支えするため、中国政府が株価安定化ファンドの創設を検討している模様だ。また、「国家隊」と呼ばれる中国政府系投資会社・中央滙金投資は10/11に4大国有銀行のA 株を買増している。中央滙金投資はさらに、向こう6カ月内に流通市場で一段の買増を続ける方針という。
・業種別では、酒造・食品の下げが目立ち、非鉄や鉄鋼・建材などの素材も冴えない。ゼネコンも安く、ハイテク・不動産・運輸・公益・証券も売られた。半面、銀行はしっかり、エネルギー・医薬・自動車の一角が買われた。
●2.中国株:「失われた30年の日本」を超えそうな中国
1)世界的に中国離れが進行中
・8月貿易は前年同月比▲8.2%減(輸出▲8.8%減、輸入▲7.3%減)。
・外国の中国投資が減少。
・反スパイ法の拡大、査証取得の厳格化など外国人入国の困難増加。
2)デフレ傾向が進む
・8月消費者物価指数(CPI)は前年同月比+0.1%増、前月の▲0.3%減からは持ち直したものの、依然として消費の低調が続く。
3)不動産不況は深刻
・8月新築住宅価格指数は70都市中、52都市が前月比で下落。
・ゴーストタウンが増加中。
4)その他の経済条件が後退
・人口減少(女性の出産率1.09と急速な人口減)、高齢化の急進行。
・若年層の失業率増加が急。
・消費を抑制し、貯蓄に励む傾向が強まる。(将来への不安感)
5)主要人事が不安定化(夏以降)
・外交部長(外務大臣)の更迭
・国防部長(国防大臣)の消息不明
・中国人民銀行行長(中央銀行総裁)の更迭
・財政部長(財務大臣)の更迭の噂
●3.中国、事業環境の悪化が影響し、日系企業の47%が前年より投資に消極的(共同通信)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)10/12、日経平均+558円高、32,494円(日経新聞より抜粋)
・前日の米ハイテク株高を受けて半導体関連の値がさ株が急伸し、日経平均を押し上げた。海外短期筋と見られる断続的な株価指数先物への買いが上昇に弾みを付け、終日上値追いの展開となり、この日の高値引けとなった。
・米長期金利の低下を背景に、前日の米株式市場でNYダウなど主要株価指数が上昇した。東京市場でも米株高を引き継いだ買いが先行し、半導体関連など主力の大型株は軒並み高となった。足元の急速な相場上昇を受けて損失確定と見られる売り方の買い戻しも加速し大引けにかけて日経平均は一段高となった。
・高値圏では一進一退となる場面も多かった。今週の日経平均は一方的な上昇が続いており、上値では相場過熱を警戒した利益確定売りが出た。市場では、国内機関投資家による持ち高調整の売りも観測された。
・個別株では、日経平均への寄与度が高い東エレク・ファストリ・ソフトバンクGが買われた。半導体関連のレーザーテクは年初来高値を付けた。トヨタ・三菱UFJも高い。一方、日本製鉄・INPEX・KDDIは下げた。
2)10/13、日経平均▲178円安、32,315円(日経新聞より抜粋)
・米金融引締めの長期化懸念から前日の米長期金利が上昇し、株式相場の重荷となり、日経平均の下げ幅は一時▲240円を超え、4日営業日ぶりに反落した。もっとも、値がさ株の一角が買われて相場の下値を支え、一時は小幅上昇に転じた。
・10/12発表の9月の米消費者物価指数(CPI)の伸びが市場予想を上回り、金利の高止まりで景気が下押しされる懸念が強まった。同日の米株式相場が下落し、東証プライムの9割強の銘柄が売られた。
・日経平均は今週に入って前日までに+1,500円上昇。前日の終値でチャート上の25日移動平均や75日移動平均を上回ったため、利益確定の売りも出やすかった。中東情勢を巡る不透明感も強く、午後にかけては持ち高調整の売りが強まった。
・半面、前日に良好な業績見通しを発表したファストリなど値がさ株の一角が買われ、相場の下値を支えた。ファストリは1銘柄で日経平均を+190円ほど押し上げた。
・個別銘柄では、セブン&アイの下げが目立った。一方、住友ファーマ・アステラス、INPEX・スクリンが買われ、東エレクも上昇、キーエンスも高かった。
●2.日本株:「売り方の買い戻し」相場はここまでか、注意
1)日本株の需給は弱さ示めす
・証券会社自己部門は売り転換:10月1週(~10/6)▲1兆1,032億円大幅売越し。
・前週は今年最大の買い残高+5兆0,272億円⇒+3兆9,240億円に減少
・短期筋の外国人の株価先物買い越しは、日経平均の上昇に寄与したが、買い枚数は本格的な買いとは見られない少なさである。
・日経平均の上昇は、「売り方の買い戻し」が大きく寄与したと見られるため、急騰は一時的なもので自律反発の域内と思われる。
2)新高値銘柄数が減少し、弱気が浮上
・値がさ半導体関連株が主導した株価上昇で韓国サムスン電子の増益をきっかけにしたもので、新鮮味に乏しい材料であった。
・急伸した銘柄の利益確定売りが目立つ展開となった。
3)自律反発はここまで、下落リスクに注意
・新安値銘柄数が増加傾向にある。
・日米の金利差は縮小傾向にあり、「円高」の様相を示している。円高は、日本株にとって「逆風」となる可能性が高い。
・日経平均はNYダウと比べて割高感が出ており、海外投資家の日本株買いはしばらく期待できないと見る。
●3.出光とトヨタ、バッテリー用全個体電池の量産実現に向け協業開始(ロイター)
●4.ホンダと三菱商事、EV普及拡大で新事業検討、蓄電池を活用(日経新聞)
●5.東芝、12/20に上場廃止、日本産業パートナーズ中心の国内連合の下で再建(共同通信)
●6.ファストリ、2021年8月期純利益+2,962億円、前期比+8.4%増(WWD)
●7.キオクシア、米半導体・ウエスタンデジタルと経営統合で最終調整(NHKより抜粋)
1)キオクシアの株主のSKハイニックスが統合に合意するか不透明で今後の焦点。
2)統合が実現すれば、世界トップの韓国サムスン電子と並ぶ。
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・2579 コカ・コーラ 業績改善期待。
・4912 ライオン 業績回復期待。
・6302 住友重 増配期待。
・8113 ユニ・チャーム 業績向上期待。
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