覚えておきたい中国語の新語・ネット語10選
2023年10月5日 16:17
ネット流行語は、その国の社会や文化を理解するためのキーワードだ。インターネットが情報を運ぶ現代社会において、ネット上の新語・流行語はその国の人々の価値観や世相、社会状況を色濃く反映している。
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今回は中国の「語言文字週報」が発表した「十大ネット流行語2022」をもとに、中国語学習者が知っておきたい新語・ネット語の意味や使い方について解説したい。
■1.「栓Q(SHUANG Q)」
もともとは英語の「Thank you」という発音に似ていることから、栓Qという流行語が生まれた。後に皮肉のように使われるようになり「うんざりする」、「あきれる」といった気持ちを表現する流行語に変化した。
■2. PUA
漢字ではなくローマ字3文字の流行語。マインドコントロール、洗脳するといった意味。
英語の「Pick Up Artist」、日本語ではナンパ師を意味する言葉の頭文字から構成されており、巧みな話術で異性を魅了するといった意味を表していた。そこから転じて理不尽に誰かをマインドコントロールする人、人を操る行為、モラハラやパワハラでなどを表現する言葉に変化。恋愛、職場、学校、家庭など多くの場面で使われている。
■3. 冤种YUAN ZHONG(大冤种DA YUAN ZHONG)
もとは濡れ衣を着せられたり、不当に扱われたりする不運な人を表現する流行語であった。その後「愚かな人」、「バカなやつ」といった意味で使われるようになった。自分自身や親しい人に対して自嘲の気持ちを表現する際に使う場合もある。
■4. 小镇做题家XIAO ZHEN ZUO TI JIA
田舎のがり勉。小镇は田舎、做题家は試験問題を解く人という意味。転じて努力して良い大学を出たけど、応用が利かず、社会に出てからは成功や立身出世とは縁の無い人を指す言葉に。
「俺たちは結局田舎の努力家で報われないようなあ(我们不过是个小镇做题家,做何努力都没用)」などと、自嘲気味に使うこともあるようだ。
■5. 团长TUAN ZHANG
団長は、もともとは軍隊の1単位の最高指揮者を指す言葉。コロナでロックダウンになり団地単位で食料調達を分配するときに、先頭に立って活躍した人々を指した流行語。
■6. 退、退、退TUI TUI TUI
「下がれ!下がれ!下がれ!」の意。駐車場で屋台を営業していた中年女性が、駐車するスペースを探す男性と争いになり、剣で衝くような動作で「下がれ、下がれ、下がれ」と叫んだ勇猛な動画がネットで拡散されたことから生まれた流行語。
ちょうどコロナ禍でコロナの病魔に対し人々が抱く「退散しろ!」という願いと一体化して、拡散が加速したと言う。
■7. 嘴替ZUI TI
嘴は口、替は代わりという意味で、巧みな話術で大衆の意思を上手に表現する代弁者への賛美を表す流行語。大衆の代わりに意見を伝えてくれる、弁の立つコメンテーターや著名人などを指して言うことが多い。
■8. 一种很新的×× YI ZHONG HEN XIN DE ××
もとは、複雑な要素が混ざって理解が難しい音楽などに対して使われた言葉。その後、不可思議な物体、意味の分からない事柄全体を揶揄して使うようになった。
「这是一种很新的生活模式(これはある種とても新しいライフスタイルだ)」、「这是一种很新的母女关系(これはある種とても新しい母と娘の関係だ)」、「这是一种很新的减肥方法(これはある種とても新しいダイエット方法だ)」といった使い方をする。
■9. 服了你个老六FU LE NI GE LAO LIU
服了你は「お前には降参するよ!」といった意味、老六は6番目の人を指す。5対5で対戦するゲームで自分のチームの足を引っ張るプレイヤーを、「お前は相手チームがこっそり送り込んだ6人目のプレイヤーじゃないか?」などと言ったことから始まった流行語。だまし討ちをする人、インチキをする人などを指して言う言葉。
■10. ××刺客 ××CI KE
刺客は日本語で暗殺者の意味。最初は雪糕刺客(アイスの刺客)という言葉が流行した。雪糕はアイスのことで、コンビニなどで値札の無いアイスを深く考えず買い物かごに入れてレジまで運ぶと思いの他値段が高く支払いが高額になり、まるで暗殺者に刺されるような痛手を被る、などといったことを表現した。
同じように、水果刺客(果物の刺客)、文具刺客(文房具の刺客)、草莓刺客(いちごの刺客)などといった流行語も生まれている。
14億の人口、巨大な国土を擁する中国では、ほとんどの流行語は拡散の過程で意味合いが変化していく。流行語を正しく理解するためには、その言葉が生まれた背景、もとの意味、変化の過程と、現在の意味を順に理解する必要がある。
外国語学習において、その国のネット流行語を理解し、日常会話の中にも取り入れていけば、ネイティブとの距離が狭まり、テンポ良い言葉のキャッチボールが楽しめる。何気ない日常会話の中でもどんどん使ってみよう。(記事:薄井由・記事一覧を見る)