ノーベル生理学・医学賞、mRNAワクチン開発を可能にした2氏が受賞
2023年10月4日 08:48
headless 曰く、 2023 年ノーベル生理学・医学賞はハンガリーのカタリン・カリコ氏と米国のドリュー・ワイズマン氏が共同受賞した。授賞理由は COVID-19 に効果を示す mRNA ワクチン開発を可能にしたヌクレオシド塩基の改変に関する発見(プレスリリース)。
1980 年代には細胞を培養することなく効率的に mRNA を作り出す in vitro 転写と呼ばれる手法が導入され、mRNA をワクチンや治療目的で使用する研究も進められた。しかし、in vitro 転写による mRNA は不安定であることなどに加え、炎症反応を引き起こす問題があったため、医療目的での開発は限定的だった。
1990 年代初め、ペンシルベニア大学の助教だった生化学者のカリコ氏は研究資金提供者に医療目的での mRNA 技術開発の重要性を納得させるのに苦心していたが、樹状細胞に興味を持っていた免疫学者のワイズマン氏が同僚となって研究は新たな展開を迎えた。
カリコ氏とワイズマン氏は in vitro 転写による mRNA を樹状細胞が異物と認識することに気付く。哺乳類の細胞内で RNA の 4 つの塩基は繰り返し化学的に改変されるが、in vitro 転写による mRNA では改変されないことに注目した 2 氏は塩基を改変した mRNA を作成。これを樹状細胞に導入したところ、炎症反応がほぼ起こらなくなることが判明した。2 氏は後に塩基を改変した mRNA では未改変の mRNA と比べてタンパク質の生成量が大幅に増加することも確認している。
2 氏の研究成果は前例のない速度でのワクチン開発を可能にし、COVID-19 パンデミック中に効果的な mRNA ワクチン開発に重要な役割を果たした。ノーベル会議事務局長のトーマス・パールマン氏は個人的にカリコ氏を知っており、研究者として認められずに苦労する様子や、2013 年にバイオンテックの(シニア)バイスプレジデントに就任した時のエピソードも語っている(動画)。