2023年最大のIPO、アーム株は失敗か?
2023年10月2日 16:09
●ソフトバンク傘下のアームがナスダック上場
英半導体設計大手アームが9月14日、米国証券取引所ナスダックに上場した。アーム社はソフトバンクが90.6%の株式を保有している。
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初日の終値は63.59ドルを付け、売り出し価格の51ドルを約25%上回り、期待を大きく上回った。時価総額は530億ドル(約8兆円)となり、2年前のリビアン以来の大型IPO(新規株式公開)となった。
しかしその後、21日には売り出し価格の51ドルを下回るなど、勢いは続かなかった。
前期は赤字だったソフトバンクビジョンファンドにとっては挽回のチャンスだが、これから先行き不安な株式市場でどうなるのだろうか?
●アーム社とは?
アーム(Arm)社は、1990年に設立された英国のケンブリッジに本社を置く、半導体設計大手のファブレス企業である。
一時は英国の上場企業であったが、2016年にソフトバンクが全株式を買収して子会社となり、非上場化した。
アーム社が設計開発したCPUは、iOSとAndoroidのスマホに採用されており、携帯市場では90%以上のシェアがあると言われている。
スマホだけでなく、NintendoSwitchなどのゲーム機、家電やパソコンなどにも幅広く採用されている。自動運転開発でも存在感を示している。
●アーム社にかかる期待と不安
上場後の株価下落は、FRBの利上げ長期化が嫌気されるなど米国株全体が低調だったという外部要因もあり、投機筋の空売りも影響したと見られている。
米国株全体でIPOがさえなかったが、アーム社の上場により、IPOが活発化することも期待されている。
だが10月以降の米国株全体の環境だけでなく、アーム株自身も課題がある。
中国の合弁会社の「アーム・チャイナ」をめぐり、前経営者との対立が噂されている。ソフトバンクの孫会長は解決済みとしているが、火種は残る。
AI分野の主要企業としての期待は高いものの、一方で、財務分析会社のバーンスタイン社がアーム社のAIについての期待が過大評価されているというレポートを出しており、株価の下落に拍車をかけた。
過度な期待はしない方がいいかもしれない。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)