UAWスト、気になる市場への影響は?

2023年9月29日 16:16

●拡大するUAWストライキ

 全米自動車労働組合(UAW)は9月15日から、米3大自動車メーカーの3州3拠点でストライキに入った。ただ全従業員でなく、ミシガン州の組み立て工場など、UAW全会員の一部に過ぎない小規模でのスタートだった。

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 ただロイター通信の報道によると、UAWは進展がなければ、29日からさらに施設を加えて、追加ストを行うと予告している。

 景気への直接的影響は限定的と見られていたが、さらに広がりを見せると株価や世界経済にどのような影響が考えられるだろうか?

●UAWの要求は?ハリウッドもスト

 今年5月からは、ハリウッドの全米脚本家組合(WGA)が最低賃金と報酬体系の見直し、AI活用などを巡って、9月27日まで148日間に及ぶストを行っていた。7月からストを行っている全米映画俳優組合(SAG‐AFTRA)は、まだ終息の目途が立っていない。
 
 それぞれのストに共通していることが、インフレの長期化に対し、賃上げが追い付いていないことだ。UAWには、EV(電気自動車)シフトという脅威も背景にある。

 テスラには労働組合は無く、労組側はEVシフトによる雇用の不安定化と経営体力強化を優先することを脅威に感じている。

 UAWは賃金をインフレ率と連動させる生計費調整にし、4年間で36%の昇給(時給150ドル(2万2000円))とすることや、新たに雇用された労働者の賃金を低く設定する給与体系の廃止などを要求している。

●影響はどこまで?政争の具にも発展?

 BIG3(GM、フォード、クライスラー)の株価には、今のところ大きな影響はない。

 しかしUAWの要求する時給150ドルなどを受け入れれば、収益の悪化は避けられない。人手不足が深刻なことから、UAWも強気な姿勢だとも言われている。

 26日にはバイデン大統領がストのピケ現場を視察し、UAW側の要求の支持を表明した。

 労組は民主党の岩盤支持層であるものの、UAWは、主要な労組の中で2024年の大統領選挙において支持を表明していない、唯一の労組でもある。

 トランプ前大統領は声明で、バイデン氏のEVシフトが米自動車業界の職を奪うと批判しており、政争の具にもなりつつある。

 過去2回の大統領選挙ではミシガン州デトロイトのラストベルトが勝敗を左右したことから、民主・共和両党もこのUAWのストは無視できない。

 米国の自動車生産が滞るとなると、日本車メーカーへの期待が高まるなど、世界経済を左右するストに発展する事態もあるかもしれない。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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