オリエンタルランド、入園者数増で業績はコロナ前まで回復 デジタル投資や新エリア開発等、体験価値も向上
2023年9月29日 08:55
本日の説明内容
横山豊氏(以下、横山):みなさま、こんにちは。オリエンタルランドの横山です。本日はお忙しい中、株式会社オリエンタルランドの会社説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。
本日の目次です。まず会社紹介として、当社の沿革や概要、強みについてご説明します。次に、現在の東京ディズニーリゾートについてご紹介します。1983年の東京ディズニーランドの開園以来、コロナ禍を乗り越え、当社は40年にわたり成長を続けてきました。どのように東京ディズニーリゾートが進化し、成長しているのかをご説明します。
そして、今後の成長の可能性として、当社ならびにリゾートの成長の方向性について、考え方や計画している具体的なコンテンツなどをお伝えします。さらに、株主還元についてご説明した後、最後に質疑応答の時間を設けています。
ここは、永遠に完成しない場所。
横山:スライドの写真をご覧ください。当社の歴史におけるハイライトを表した4枚です。ディズニー社を創設したウォルト・ディズニーの言葉に、「ディズニーランドは永遠に完成しない。この世界に想像力が残っている限り、成長し続ける。」という言葉があります。本日は、私からもオリエンタルランドが成長を続ける企業であることをお伝えし、みなさまに「今後が楽しみだな」と感じていただけたらと思います。最後までよろしくお願いします。
会社概要
横山:当社の会社概要です。夢と感動、喜びとやすらぎの提供を使命としており、事業領域は「心の活力創造事業」と位置づけています。
沿革
横山:これまでの当社の歩みを振り返ると、4つのステージを経験してきたと考えています。第1ステージは、1960年の会社の設立から、浦安沖の埋め立てを行い、ディズニーランドを誘致するまでの期間です。浦安の漁師の方々、千葉県、銀行、そしてディズニー社などと長期にわたる交渉に臨んだ期間です。
第2ステージは、1983年の東京ディズニーランド開業後の1パーク時代です。日本で初めて、それまでの遊園地とは大きく異なるテーマパークという概念を持った施設を建設し、運営してきました。
第3ステージは、2001年の東京ディズニーシー開業後の2パーク時代です。「アーバンリゾート」というコンセプトのもと、周辺にはホテルやモノレール、商業施設の「イクスピアリ」などを開発し、おおよそ現在の東京ディズニーリゾートになりました。2001年以降、テーマパークから滞在型のテーマリゾートへと大きく変貌を遂げています。
そして現在は、第4ステージとして東京ディズニーシーでの大規模開発が進捗しており、新たな体験をお客さまにお届けする予定です。
東京ディズニーリゾートの全景
横山:スライドは、浦安市の舞浜にある東京ディズニーリゾートの全景です。浦安の土地を埋め立て、一大テーマリゾートを経営・運営しています。
東京ディズニーランドは、アメリカ国外における初のディズニーテーマパークです。また、東京ディズニーシーは世界で唯一、海をテーマとしたディズニーテーマパークとなっています。
東京ディズニーリゾートの主要施設
横山:東京ディズニーリゾートの主要施設についてご説明します。当社の売上高の8割を占めているのが、ご存じのとおり、東京ディズニーランド・東京ディズニーシーのテーマパーク事業です。
また、ホテル事業には、現在ディズニーブランドのホテルが5つあります。さらに、舞浜駅前の商業施設「イクスピアリ」や東京ディズニーリゾート内を走っているモノレールなども当社が経営・運営しています。
経営資源が持つ「独自の競争優位性」
横山:当社の1つ目の強みは、抜群の立地です。当社の土地は、半径50キロメートル以内に約3,000万人の人口を有しています。また、東京ディズニーリゾートがある千葉県浦安市は都心に近く、東京駅から電車で約15分です。高速道路も隣接し、非常にアクセスの良い場所となっています。この広大な土地を自社で所有しています。
テーマパークにはまとまった広さの土地が必要となりますが、これ以上に好条件がそろう土地は、世界中どこを探しても存在しないと言われています。
経営資源が持つ「独自の競争優位性」
横山:2つ目の強みは、ディズニー社との長期にわたるライセンス契約です。契約の対象範囲は、ディズニーのテーマパークやホテルの建設と運営です。契約期間は最長で2076年まで延長できます。当社はディズニー社と強固なリレーションシップのもと、日本国内で唯一ディズニーのテーマパークを運営しています。
経営資源が持つ「独自の競争優位性」
横山:3つ目の強みは人材力です。ウォルト・ディズニーも生前に「It requires people(夢を実現するには人々の力が必要だ)」という言葉を残しています。
どんなにすばらしいアトラクションや施設を作っても、それを運営するのは人です。当社の事業の一番の魅力は人であり、なによりの財産だと考えています。ゲストの体験価値を高めるために、ホスピタリティに長けた人材の育成に日々努めています。
社内では、ディズニー教育を核として、褒め合う文化の醸成などにも取り組んでいます。ゲスト満足度と同じように、従業員満足度も重要視しています。
増井麻里子氏(以下、増井):スライド8ページの売上高比率について質問です。御社はテーマパークからテーマリゾートへ発展してきましたが、現在のホテル事業の比率は15.3パーセントとなっています。今後この比率は上がっていくのでしょうか?
横山:現時点で明確な数値目標はありません。当社としては、リゾート全体での体験価値の向上を目指しています。そのため、テーマパーク事業だけではなく、ホテル事業やその他の事業も含めて、リゾート全体として事業を発展させていきたいと考えています。
この後のプレゼンテーションでもご説明しますが、2024年度にオープンする東京ディズニーシーの新開発エリアでも新しくホテルが開業します。そのため、ホテル事業の売上高はさらに増えていく見通しです。
八木ひとみ氏(以下、八木):先ほど半径50キロメートル圏内に3,000万人が住んでいるというお話がありましたが、関東圏の来園者の割合はどれくらいですか?
横山:現在、関東圏からの来園が全体の約6割を占めています。
八木:私自身もそうなのですが、アクセスがあまりに良いと、夕方から来園したり日帰りにしたりしようと思ってしまいます。先ほどのホテルのお話に関して、日帰りのお客さまが多くなってしまうのではないかと思いますが、いかがですか?
横山:ディズニーホテルに宿泊される方の地域別の構成比を見ると、テーマパークの来園者の構成比と大きく変わりません。テーマパークと連続して特別な体験ができるところがディズニーホテルの魅力です。その需要が非常に強いということから、日帰りできる首都圏の方も一定数ホテルに宿泊している状況です。
増井:関東圏からの来園者は6割であり、泊まる方もそれに近いということですね。
横山:おっしゃるとおりです。
八木:先ほど「ライセンス契約は2076年まで延長が可能」というお話がありましたが、条件はあるのでしょうか?
横山:2024年度にオープン予定の「ファンタジースプリングス」の開業が延長の条件となっています。また、延長した際には主要な条件も変更はしないことになっています。
八木:観光業全般で人手不足が高まっていると思いますが、御社はいかがですか?
横山:当社は幸いにも今のところ人手不足の影響はありません。テーマパーク事業ならびにホテル事業は計画どおり必要な人材を採用できています。
2024年度には新しいエリアを開業しますので、当然新しく多くの人材を必要としますが、現在順調に採用を続けています。
当社の強みとして、ディズニーという場で働くことへの憧れもあると思いますが、それだけでなく、時給の改定や職場環境、教育の体制を日々改善していくことで、魅力ある職場環境になるよう努めています。
成長し続けてきた東京ディズニーリゾート
横山:現在の東京ディズニーリゾートについてお話しします。2019年度より新型コロナウイルス感染症の拡大が続き、休園した時期もありましたが、パークに対するハード・ソフト面で投資を続けてきました。
その中で、ゲストの体験価値を向上するために実施してきた内容を3つご説明します。ハードの投資としてのパークコンテンツの拡充、インフラとしてのデジタル投資、そしてリゾートの魅力向上についてです。
主な大型投資(2019年度~2022年度)
横山:スライドは、直近2年から3年で実施した大型投資の内容です。東京ディズニーランド、東京ディズニーシーにそれぞれ新たなアトラクションやエリア、エンターテインメントを導入しています。また、新しく「東京ディズニーリゾート・トイ・ストーリーホテル」もオープンしています。
①パークコンテンツの拡充
横山:パークコンテンツの拡充についてです。2019年に「ソアリン:ファンタスティック・フライト」、2020年に東京ディズニーランド大規模開発、2022年に「ビリーヴ!〜シー・オブ・ドリームス〜」を導入しました。
①パークコンテンツの拡充
横山:東京ディズニーシーに導入した「ソアリン:ファンタスティック・フライト」は、もともと海外のディズニーテーマパークに導入されており、非常に高い人気を誇るアトラクションでした。東京ディズニーシーでは、ここだけでしか見ることができない、日本オリジナルのシーンを追加しています。
①パークコンテンツの拡充
横山:東京ディズニーランド大規模開発についてです。こちらのエリアには、3つのアトラクションとエンターテインメントが楽しめる屋内シアターが新しくオープンしています。こちらは東京ディズニーランドの開園以来、最大規模の投資となっています。
『美女と野獣』をテーマにしたアトラクションなど、導入された施設のすべてが世界中のディズニーテーマパークにはない、東京ディズニーランドオリジナルのアトラクションとなっています。
①パークコンテンツの拡充
横山:2022年11月には東京ディズニーシーの新規ナイトエンターテインメントである「ビリーヴ!〜シー・オブ・ドリームス〜」を公開しました。こちらは、メディテレーニアンハーバーの水域全体を活用し、「東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ」の壁面にプロジェクションマッピングを投影するなど、東京ディズニーシーのレイアウトやデザインを活かした大迫力の演出がみなさまの目の前に広がります。
②デジタル投資を通じた利便性向上
横山:ITを活用したゲストの利便性向上にも取り組んでいます。人と人とのコミュニケーションを大切にするという東京ディズニーリゾートの本来の魅力を保ちながら、最新のテクノロジーを活用し、ゲストの快適さの向上を目指していきたいと考えています。
その中でアプリの投資に注力してきました。スライドは公式アプリ「東京ディズニーリゾート・アプリ」です。アプリの導入に伴い、お客さまの利便性が向上し、体験価値の向上につながっています。
デジタル投資の強化により、パーク体験をより豊かに
横山:アプリでは、パークチケットの購入はもとより、アトラクションの優先チケットの取得やショーの抽選、レストランの予約など、さまざまな機能が統合されています。計画的にパークを楽しめるようになり、大変ご好評いただいています。
デジタル投資の強化により、パーク体験をより豊かに
横山:「東京ディズニーリゾート・アプリ」は、入園中だけでなく、パークの外にいてもご利用が可能です。例えば、入園前に地図を見て当日の計画を立てたり、レストランの事前予約をしたり、商品をオンラインで購入したりすることも可能です。また、入園後には引き続きパーク限定商品を購入したり、パーク内で撮影した写真をアプリで閲覧・購入したりできます。
デジタル投資の強化により、パーク体験をより豊かに
横山:2022年5月には「ディズニー・プレミアアクセス」が導入されました。有料ですが、こちらのチケットを取得すると、指定した時間にアトラクションやエンターテインメントをスムーズに体験できるようになっています。
「ディズニー・プレミアアクセス」は、いつでもどこでもアプリを利用して取得することができます。そのため、以前の「ファストパス」とは異なり、各アトラクションの発券所にわざわざ足を運ぶ必要がなくなりました。
デジタル投資の強化により、パーク体験をより豊かに
横山:また、今年7月には、東京ディズニーリゾート40周年記念の「プライオリティパス」を導入しました。こちらは無料のサービスとなっており、時間の指定はできませんが、「プライオリティパス」を取得いただくと、短い待ち時間でアトラクションをご体験いただけます。
デジタル投資の強化により、パーク体験をより豊かに
横山:スライドは、「ディズニー・プレミアアクセス」と「プライオリティパス」を利用できるアトラクションとエンターテイメントの一覧です。
東京ディズニーランド、東京ディズニーシーともに、多数のアトラクションに当該サービスが導入されているため、より効率的にパークをお楽しみいただけるようになりました。
デジタル投資の強化により、パーク体験をより豊かに
横山:アプリから「プライオリティ・シーティング」という、レストランの予約サービスを利用することもできます。「プライオリティ・シーティング」でご予約いただくと、少ない待ち時間で優先的にレストランのお席にご案内します。
デジタル投資の強化により、パーク体験をより豊かに
横山:また、閉園時間が近づくと商品を販売している店舗は大変混雑しますが、こちらのアプリをご利用いただくと、お店に並ばなくても、また退園された後でも当日の23時45分までパーク内の商品をご購入いただけます。
③リゾートとしての体験の拡充
横山:当社は、パークだけではなくリゾート全体でも体験を拡充しています。本日は3つのコンテンツについてご説明します。
③リゾートとしての体験の拡充
横山:今後のパーク拡張に伴う宿泊需要の高まりに対応するため、映画『トイ・ストーリー』をテーマとする新しいディズニーホテルをオープンしました。約600室を有する客室とパークに隣接している抜群の立地で、リゾートステイの選択肢を増やすことができました。ゲストご自身がおもちゃになったかのような世界観を体験できる魅力溢れるホテルになっており、昨年4月のオープン以降、大変ご好評いただいています。
③リゾートとしての体験の拡充
横山:リゾートやパークの魅力溢れるコンテンツを余すことなく体験していただくため、「東京ディズニーリゾート・バケーションパッケージ」をご用意しています。ディズニーホテルを選択していただいた上で、パークチケットやショーの鑑賞券などと組み合わせて、より有意義なリゾートステイをご体験いただけます。これにより、ゲストの宿泊体験を含む体験価値がさらに向上しています。東京ディズニーリゾート内での時間は、より充実したものになると思います。
③リゾートとしての体験の拡充
横山:昨年10月から「舞浜アンフィシアター」で劇団四季による『美女と野獣』のロングラン公演を上演しています。先ほどお伝えした「バケーションパッケージ」と組み合わせたプランなどにより、魅力的なリゾートステイを実現しています。
業績はコロナ以前の水準に回復
横山:当社は、7月28日に第1四半期の決算発表を行いました。今年度は入園者数ならびにゲスト1人当たり売上高が大幅に増加したことにより、増収増益となりました。
今年度は東京ディズニーリゾート40周年のイベントを開催しています。ゲストには好評で入園者数が増加しています。また、40周年関連イベントの商品が大変人気であり、ゲスト1人当たり売上高の向上にも寄与しています。
業績は感染症拡大以前の水準に回復
横山:先ほどご説明したとおり、新型コロナウイルス感染症拡大前から体験価値を向上させる取り組みを続けてきたため、感染症の拡大を乗り切り、業績は感染症拡大以前に近い水準まで回復しています。
増井:デジタル投資によってゲストの快適性が向上したことで、ますますゲストの足が向くのではないかと思います。御社の経営にとって、どのようなインパクトがあったとお考えですか?
横山:アプリを通じてゲストの利便性・快適性が向上することで、お客さまがテーマパークで遊んでいただく際の選択肢が増えました。選択肢が増えることでそれが付加価値となり、顧客満足度にポジティブな影響を与え、結果として売上高の向上につながっていると考えています。
増井:アプリが売上高や単価を向上させたということですね。
横山:おっしゃるとおりです。その一例として、先ほどお伝えした「ディズニー・プレミアアクセス」があります。以前の「ファストパス」は、開園後にアトラクションの近くにある発券所まで行く必要がありました。しかし、アプリがあれば園内のどこにいても購入できるようになったため、発券所に行く必要がなくなりました。
したがって、パーク内でより計画的でスムーズにお過ごしいただけるようになりました。お食事や商品の購入に時間を使えることになり、単価の向上につながったのではないかと考えています。
八木:「ディズニー・プレミアアクセス」は、「ファストパス」をデジタル化したものということでしたが、他に何か違いはありますか?
横山:「ディズニー・プレミアアクセス」は、アトラクションを少ない待ち時間でご利用いただけることがサービスの核となっております。「ファストパス」との大きな違いは、時間指定ができる点です。ご希望の時間に体験できることで、ゲストは1日をより計画的にお過ごしいただけるようになりました。
また、ショーやパレードなどのエンターテイメントに導入されていることも「ファストパス」との大きな違いです。
八木:入園者数について聞かせてください。10年前からコロナ禍前まで、入園者数は安定的に年間3,000万人を超えていましたが、今年度はいかがでしょうか? 3,000万人を大きく上回りそうですか? また、個人投資家の方から「入園者数はコロナ禍前の水準まで回復しているのですか?」というご質問がありました。
横山:今年度の入園者数は2,510万人を想定しています。コロナ禍前から方針が変わり、入園者数だけを追求するのではなく、お客さまの園内での体験価値・満足度をより重要視し、入園者数と単価のバランスを踏まえた上で業績を伸ばしていきたいと考えています。
具体的な施策としては、1日あたりの入園者数の上限をコロナ禍前より下げることで、年間3,000万人以上が入園していた時代に発生していた、過度に混雑した日をなくしたいと考えています。そのため、現時点では1日あたりの入園者数の上限をコロナ禍前の水準には戻さない方向です。
ただし、我々が閑散期と呼んでいる1月から3月期や平日については、入園者数の上限に対してまだ余裕がありますので、何らかのかたちでそこが埋まれば、将来的にはコロナ禍前と同水準の入園者数になる可能性はあると思います。
東京ディズニーリゾートの価値
横山:今後の成長の可能性として、東京ディズニーリゾートのこれからについてご説明します。スライドは、東京ディズニーリゾートの価値を示しています。パークの開業以来、ゲストのことを常に考えて行動できるホスピタリティ溢れる「キャスト」、魅力的な「ハード」、そしてリゾートを愛してくださる「ゲスト」の3つの好循環によりハピネスを創造しています。この先も全役職員で永続的にハピネスを作り、みなさまの笑顔とともに成長していきたいと考えています。
2030年に目指す姿
横山:長期的な成長と持続可能な社会への貢献を両立させるため、2030年に当社が目指す姿を「あなたと社会に、もっとハピネスを。」としました。当社は、より多くのハピネスの創造や新規事業などを通じて、東京ディズニーリゾート以外にも価値提供の範囲を広げていきます。そして当社グループのステークホルダーだけではなく、社会のためにもハピネスを創造し続けられる企業を目指します。
2024中期経営計画の概要
横山:「2024中期経営計画」では、新型コロナウイルス感染症拡大による影響からの回復と将来に向けたチャレンジを行っていきます。ゲストの体験価値向上を最優先に進めながら、同時に財務数値の回復を図ることが目標です。財務目標については、昨年度の時点でおおむね達成できていますので、今年度の中間決算でのアップデートを予定しています。
2023年度以降の主な大型投資
横山:本日はテーマパーク事業戦略とホテル事業戦略を中心にご説明します。スライドは、来年度以降に開業を予定している大規模開発です。2024年度に東京ディズニーシー、そして2027年には東京ディズニーランドでの大型投資を予定しています。
ファンタジースプリングス
横山:2024年度に開業を予定している、東京ディズニーシーに新しく建設される8番目のテーマポート「ファンタジースプリングス」についてです。こちらは3つのエリアとパーク一体型のホテルで構成されるテーマポートであり、東京ディズニーシーの開園以来、最大の投資となります。このプロジェクトの記者発表で、当時会長の加賀見は「世界のどこにもない、オンリーワンのテーマリゾートに向けて新しいスタートを切る」という強い意志を表明しています。
テーマパークエリアでは、「魔法の泉が導くディズニーファンタジーの世界」をテーマに、『アナと雪の女王』や『塔の上のラプンェル』『ピーター・パン』といった人気のディズニー映画がテーマの4つのアトラクションがオープンします。現在、来年のオープンに向け、すべての施設の工事が順調に進捗しています。
ファンタジースプリングス
横山:「ファンタジースプリングス」には、6つ目となるディズニーホテルの建設も含まれています。こちらは、最上級ランクであるラグジュアリータイプの客室を備えたパーク一体型ホテルとなっており、ゲストのみなさまに今まで体験したことのないホテルステイをご提供します。
新たな2つのホテルの誕生により、ディズニーホテルは合計で6つ、客室数は約3,500室となります。ホテル事業においても体験価値を向上させる取り組みを続けることにより、リゾート全体で収益の増加を目指します。
今後の開発方針
横山:また、東京ディズニーランドのグランドオープン以来、みなさまに長らく愛されてきました「スペース・マウンテン」も、周辺環境とあわせて一新します。こちらはすでに建設工事が始まっており、オープンは2027年の予定です。
今後の計画
横山:年度ごとに今後の計画をまとめています。大規模開発がオープンする年度以外には、リゾート全体が大変盛り上がる周年イベントの予定があります。今後もパークとリゾートのさらなる発展にご期待ください。
長期的な成長方針
横山:東京ディズニーリゾートの今後についてです。ポテンシャルを最大限に発揮するための基盤づくりを考えています。オンステージでは魅力の向上につながる投資を行い、常に変化し続けるパークをゲストに提供していきます。またバックステージでは、キャストが働きやすい労働環境を整備すると同時に、将来の開発用地の創出も進めていきます。
東京ディズニーリゾートは今年4月で40周年を迎えました。今後のさらなる成長に向け、オンステージ、バックステージともに投資を続けていきます。
増井:大型投資に関してうかがいます。まず、「ファンタジースプリングス」や、「スペース・マウンテン」とその周辺環境を含めたリニューアルについて、このような大きな決断をされた背景を聞かせてください。
横山:「ファンタジースプリングス」の導入目的は2点あります。1つ目は、魅力的なエリアや施設を導入することで、お客さまに新しい魅力を訴求して需要を喚起し、業績を向上させることです。
2点目は、キャパシティの面です。東京ディズニーシーには海があるため、東京ディズニーランドと比べると、お客さまが遊べるエリアが狭くなっているのが現状でした。今回の「ファンタジースプリングス」への投資により、敷地面積が10万平米ほど増加するため、お客さまの遊べるエリアが東京ディズニーランドと同等になります。したがって、両パークで同じ規模の需要を受け入れることができるようになり、長期的な開発計画をより進めやすくなると考えています。
増井:需要喚起とキャパシティ拡張の両面があるということですね。
横山:おっしゃるとおりです。
増井:チケット価格についておうかがいします。先日、10月から1デーパスポートの最高金額が1万900円になるというニュースが大きく報じられました。変動価格制のため最低価格帯もありますが、アップサイドについてお聞かせください。将来的にさらに価格が上がる可能性はあるのでしょうか?
横山:確かに、チケットの価格はお客さまからも投資家のみなさまからも非常に関心の高い部分だと考えています。チケットの価格については、テーマパークが提供している価値をベースに、お客さまに対する調査、需要と供給の動向等を踏まえて総合的に検討し、設定しています。
今後についてですが、今年度の業績やマクロ環境の状況によっては、将来的にさらに高い価格帯を設定する可能性も否定できません。ただし、今おっしゃったとおり変動価格制であるため、最高価格だけではなく最低価格帯との差もかなり重要になってくると考えています。
増井:事前に個人投資家の方から「海外に比べたら日本のパークは安いのではないか?」というご質問をいただいています。将来的には、価格帯を海外に合わせていくのでしょうか?
横山:海外のパークとよく比較されることは私たちも承知していますが、実際にはマーケットが違うと考えています。先ほどプレゼンテーションと質疑応答でもお話ししたとおり、当社の場合は関東圏から繰り返しお越しになるお客さまが6割を占めています。そのような点では、海外とはお客さまの遊び方が違うと考えています。したがって、海外の価格を基準に考えるのではなく、日本のマーケットを意識しながら価格設定しています。
OLC株価の動向
横山:株主優待制度の改定等についてお伝えします。スライドは当社の株価の動向です。昨日の時点で約5,000円台という状況ですが、ここ10年の株価の推移を見ると、パークの成長とともに株価も向上していることがわかります。これは、創出したキャッシュをテーマパークなどの成長投資に充当し、企業価値向上を果たしているからだと考えています。
配当について
横山:しかし、2020年度から新型コロナウイルス感染症の拡大により厳しい経営環境が続いていたことから、手元流動性の確保や成長投資の資金確保を優先するため、年間の配当額を過去の水準と比較し、減配していました。
現在は「2024中期経営計画」の期間中に新型コロナウイルス感染症拡大前の数字に戻すことを目指し、今期は1株当たり年間配当額を9円としています。
個人投資家様に配慮した株式政策
横山:個人の株主の方々が多いという当社特有の状況に鑑み、株主還元の充実も図っていきたいと考えています。本日お伝えしたい内容は3点あります。
株式分割による投資単位引き下げについて
横山:1点目は株式分割です。今年の3月31日を基準日として、1株につき5株の割合をもって分割しました。
株主優待制度の配布基準変更について
横山:2点目は、長期保有株主さま向け優待制度の変更です。当社は、所有されている株式数に応じて株主用パスポートをお配りしています。現在は最小単元の500株で年間1枚、1,000株で年間2枚、以降は2,000株ごとに配布枚数が増えていき、最大で年間12枚を配布しています。
今後は2023年9月末から実施される長期保有株主さま向け優待制度により、100株保有している方にも1枚配布されることになります。長期保有株主さま向け優待制度については、詳しくは次のページでご説明します。
2023年9月からの長期保有株主様向け優待制度の変更
横山:こちらが、100株の方でも株主優待としてパスポートを受け取ることができる長期保有株主さま向け優待制度です。2023年9月30日の基準日以降に当社株式を100株以上かつ3年以上継続して保有していただいた方に、2026年9月30日に株主用パスポートを1枚配布します。つまり、こちらの優待制度により100株保有すると、2026年から毎年1枚の株主用パスポートを受け取ることができるようになります。
株主用パスポートでの入園方法
横山:お伝えしたいことの3点目は、株主用パスポートでの入園方法の変更についてです。新型コロナウイルス感染症が拡大していた最中はパークの入園者数を大きく制限していたため、株主用パスポートも抽選入園の対応を取っていました。しかし、現在は日付指定での入園が可能となっており、より利便性高くご利用いただけます。
ここは、永遠に完成しない場所。
横山:本日ご説明したように、当社は今後も成長を続けていきます。東京ディズニーリゾートは「永遠に完成しない場所」です。みなさまの期待に応えられるよう、常にパークを、そしてリゾートを発展させ、多くのみなさまにハピネスを届けていきたいと思います。
私からのご説明は以上です。
質疑応答:新たな土地の拡張やアトラクションの開発計画について
八木:「東京ディズニーリゾートのある舞浜の土地は拡張できるのでしょうか? 『スペース・マウンテン』以降の新しいアトラクションの開発計画などはありますか?」というご質問です。
横山:現在「スペース・マウンテン」以外に発表している計画はありません。しかし、舞浜にはまだまだ活用できる土地があります。代表的なものは、テーマパークの平面駐車場です。平面駐車場を立体駐車場にして、そこを次の開発用地にするという施策を過去にも実施しています。
さらに、東京ディズニーシーについては園内に未使用の土地が複数あるため、そこを新しく開発することも考えられます。加えて、先ほどご説明した東京ディズニーランドの「美女と野獣“魔法のものがたり”」のエリアや、今回の「スペース・マウンテン」のリニューアルのように、アトラクションのエリア自体を刷新することで既存施設の魅力やキャパシティを増やすことができると考えています。これを私たちはスクラップ&ビルドと呼んでいます。
八木:かなり大掛かりなスクラップになりますね。
横山:その他にもう1つ、非常に長期的・将来的なお話にはなりますが、舞浜には本社のオフィス用地もあります。私たちはこれを「バックステージ」と呼んでおり、東京ディズニーランド・東京ディズニーシーに隣接したところに裏方の土地があります。
現在は、そこでキャストが働きやすくなるような労働環境の整備を進めているのですが、今後は、例えばオフィスのレイアウトの見直し等を進めることによって開発用地の創出などもできると思っています。
質疑応答:地震リスクへの対策について
増井:舞浜エリアに一極集中しているため、地震リスクに懸念を抱かれる投資家もいると思うのですが、何か備えはされているのでしょうか?
横山:ご質問のとおり、地震は私たちの事業にとって最大のリスクの1つだと考えています。ハードの面では、これを非常に強固なものにすべく、建物だけではなく地盤の改良工事も行っています。
東日本大震災の際には、近隣の浦安市内の一部で液状化が起きていましたが、私たちのテーマパークに関しては大きな損害はなく、液状化現象もありませんでした。
さらに、地震に関連して津波のリスクもあります。しかし、実はパークは少し高い位置にあり、周囲に防波堤もあるため、今想定している範囲の津波であれば、パークに大きな被害がおよぶことはないと考えています。
加えて、財務的な面に関しても当然リスクを想定しています。例えば、パーク自体は無事でも、社会の経済状況やインフラ等が通らなくなることによってパークを閉鎖せざるを得ない事態になった時のために、地震のリスクファイナンスを導入しています。
具体的には、予期せぬ事態になった際に、金融機関からキャッシュを機動的に借り入れることができる仕組みです。これによって、数ヶ月程度パークを閉めても企業として確実に存続できる資金調達の仕組みを整えています。
危機管理をどこまで徹底して行うのか限度を見極めるのは難しいですが、現在想定し得るリスクに対してはこのような施策を取っています。
質疑応答:インバウンドの旅行者の入園者数について
八木:入園者数に関して関東圏の方が6割というお話がありましたが、インバウンドの旅行者の方はどれくらい来園しているのでしょうか?
横山:入国制限が緩和されたことに伴い、現在はインバウンドの方が増え、海外のお客さまの割合は徐々に増加しています。新型コロナウイルス感染症拡大前は、入園者数のうち約10パーセントが海外のお客さまでしたが、この第1四半期はそれを上回っています。
今期の期初予想では、年間6パーセントから8パーセント、人数にして150万人から200万人の方が来日すると見込んでいましたが、現時点ではこれを上回る可能性があると考えています。
増井:中国の団体旅行の解禁も影響があるのですか?
横山:そのとおりです。大きな影響が出るのはこれからだと思うのですが、ポジティブに働いていく要素だと考えています。
八木:海外の方に向けたインバウンドの集客としては、どのようなことをされているのでしょうか?
横山:社内にインバウンド集客を専門にしている部署があります。インバウンドの旅行者が増加していくことはテーマパークの集客チャンスだと考えていますので、来訪の多い国を中心に、その国の大手オンラインの旅行代理店と連携するなどの施策を進め、集客の強化に努めていきたいと考えています。
質疑応答:「ディズニー・プレミアアクセス」と「プライオリティパス」の違いや顧客の反応および有料化の方針について
増井:みなさまが注目されている単価について、「『ディズニー・プレミアアクセス』と『プライオリティパス』の違いとその反応を教えてください。今後もパークの体験は有料にしていく方向なのでしょうか?」というご質問です。
横山:「ディズニー・プレミアアクセス」と「プライオリティパス」は、両方ともアトラクションを短い待ち時間でスムーズに体験できるという点では同じ仕組みとなっています。
ただし、「ディズニー・プレミアアクセス」は有料であり、利用時間を指定することができます。それがひとつの価値として価格に反映されています。
一方、「プライオリティパス」は無料です。利用時間を指定することはできませんが、「ディズニー・プレミアアクセス」と同じように短い待ち時間でアトラクションを利用できます。
増井:利用できる時間帯の設定はあるのですか?
横山:以前の「ファストパス」と同じように、それぞれ利用できる時間帯があります。「ディズニー・プレミアアクセス」は、枠が埋まらない限り時間帯を指定することができます。一方、「プライオリティパス」は早い時間帯の枠から順に取得していただくため、より「ファストパス」に近いかたちになっています。
有料の「ディズニー・プレミアアクセス」については、私たちも導入当初はお客さまの反応が気にはなりましたが、実際販売してみると非常にご好評いただけました。購入されないゲストの方からの反応も見ていますが、特に強いネガティブな反応はなく、着実に販売を拡大しています。
今後も有料化していくのかというご質問については、現時点で決まっている方針はありません。ただし、今までと同様にゲストの方々のパーク内での選択肢の拡充につながり、お客さまにとって価値があると判断できるものについては、有料化するチャンスはあるとは考えています。
八木:そのほうがお客さまも存分に楽しめるかもしれないですよね。計画が立てやすくなるのは、来園者にとってもプラスではあります。
質疑応答:賃金の改定について
八木:コストに関して、「足元で賃上げの動向があり、各社が給料を上げているようですが、御社も対応しているのでしょうか?」というご質問です。
横山:従業員への投資は当社にとって非常に重要であると位置付けています。そのため、賃金の改定を行っています。2022年4月には、テーマパークで働くパート・アルバイト従業員の方々を対象に時給を一律100円引き上げています。また、2023年4月からは当社の社員およびパート・アルバイトを含む従業員に関して、平均で一律7パーセントの賃金改定を実施しています。
さらに本日ご説明したように、当社は2030年に目指す姿を実現するために、ESGマテリアリティの1つに「従業員の幸福」を定めています。仕事のやりがいの向上、働きやすさの整備を目指す取り組みを行うという方針で、OLCグループで働くすべての従業員が働きがいを感じられることや、当社がこれからも働きたい場所として選ばれ続けることを目的に、この取り組みを行っています。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:足元の猛暑の影響(入園者減少など)はいかがですか?
回答:2015年度には猛暑により入園者数が減少したことがあります。今後も猛暑が続いていくことは考えられるため、注視していく必要があると考えています。打ち手については、昨年の有価証券報告書でもTCFDを踏まえて影響度を含めて開示していますが、長期的に見るとこのリスクは極めて大きいため対応が必要であり、ソフト面・ハード面で対応しなければならない課題であると考えています。
足元ではゲストとキャストの安全が第一であり、今できることに対応しています。一例としては、今年からの施策で、屋外で働くキャストについては任意で空気を送るファンが付いたコスチュームを着ることを可能としました。また、計画的に昼間のパレードを夕方に実施しており、場合によっては、ゲストと出演者の安全を最優先に考えてパレード自体をキャンセルしています。
<質問2>
質問:新規事業としてパーク以外のお取り組みを差し支えない範囲でお聞きしたいです。
回答:東京ディズニーリゾート事業の課題解決、価値向上、成長機会に繋がる新規事業開発を目指し、2026年度までに累計100億円レベルの投資、2030年までに1セグメント化を目指しています。
現在は、グループ会社にあるコーポレートベンチャーキャピタルのオリエンタルランド・イノベーションズが、こちらの方針に沿ってベンチャー企業やベンチャーキャピタルの複数社に出資しています。今までは幅広い分野に投資をしてきましたが、今後は投資先分野の絞り込みや優先順位付けをしたいと考えています。