相場展望9月21日号 米国株: FRBは9月金利据え置きも、インフレ懸念で金利上昇し株下落 中国株: 景気回復に向けて「空虚な進軍ラッパ」しか吹けない中国政府 日本株: 直近の下落は反動安の範囲、堅調な動きあり
2023年9月21日 12:03
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)9/18、NYダウ+8ドル高、34,624ドル(日経新聞より抜粋)
・原油高によるインフレ再燃への警戒があるなか、ディフェンシブ株の一部に買いが入り、指数を支えた。半面、原油高が企業収益や消費の下押しにつながるとの見方もあり、NYダウは下落に転じる場面があった。
・米原油先物相場は9/18、一時1バレル92ドル台前半と昨年11月上旬以来の高値を付けた。高インフレによって、米連邦準備理事会(FRB)が政策金利を長期にわたって高く維持するとの観測が強まっている。景気変動の影響を受けにくいディフェンシブ株の一部に買いが入った。バイオ製薬のアムジェンや医薬品・医療機器のJ&Jが高かった。スマートフォンのアップルも上昇した。新型スマホの予約が好調との見方から買いが優勢だった。
・NYダウは下げる場面もあった。FRBは9/20午後に米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を公表する。政策金利を据え置くとの予想が多いが、政策金利の見通しやパウエルFRBの記者会見を見極めたいとの雰囲気があり、積極的な買いの動きは限られた。
2)9/19、NYダウ▲106ドル安、34,517ドル(日経新聞より抜粋)
・原油相場の上昇が続き、インフレ圧力が高まるとの観測が広がった。米連邦準備理事会(FRB)の金融引締めが長期化するとの懸念につながり、米株に売りが出た。
・米原油先物相場は9/19、主要産油国の減産に加え、米国産の落ち込みへの懸念が高まり、一時93ドル台後半と昨年11月以来の高値を付けた。原油は幅広い産業の原材料と燃料となるため、物価上昇圧力が高まるとの見方が広がった。
・FRBが高い政策金利を長く維持するとの警戒感から、NYダウの下げ幅は一時▲300ドルに達する場面があった。
・米債券市場では、インフレが再加速するとの見方から、長期金利が一時4.37%に上昇(前日終値は4.30%)した。米株の相対的な割高感が意識されたのも売りを促した。
・FRBは9/20午後に米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を発表する。政策金利を据え置くとみられ、市場の関心は政策金利見通しやパウエルFRB議長の記者会見に集まる。パウエル議長が雇用や物価情勢を巡って、どのような発言をするのかが注目される。内容を見極めようと様子見の投資家も多く、取引終了にかけて株売りの勢いは鈍った。
・個別株では、化学のダウや工業製品・事務用品のスリーエムなど景気敏感株に売りが出た。半導体のインテルが大幅安となり、テーマパークへの投資を拡大すると表明した映画・娯楽のディズニーの下げも目立った。ネット通販のアマゾンや半導体のエヌビディアも下落した。半面、IT(情報技術)のIBMやスマートフォンのアップルは上昇した。
・9/19に新規上場した食品宅配サービス「インスタカート」運営のメープルベアは公開価格30ドルを40%上回る42ドルで初値を付けた。買い一巡後は伸び悩み33ドル台で引けた。
【前回は】相場展望9月18日号 米国株: 株価は支持線に支えられ堅調も、短期的に「変調の兆し」 中国株: 習主席の政府閣僚に「異常事態」が続出 日本株: 衆議院解散・総選挙期待で上昇した株価、削ぎ落ちる懸念も
3)9/20、NYダウ▲76ドル安、34,440ドル(日経新聞より抜粋)
・午後に米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が発表され、米連邦準備理事会(FRB)の金融引締めが長期化するとの見方が広がった。FOMCの結果を受けた売りでNYダウは下げに転じた。
・FOMCは市場の予想通り、2会合ぶりに政策金利の据え置きを決めた。参加者の政策金利見通し(ドットチャート)では2023年末が5.6%と、年内に+0.25%の追加利上げを示唆する水準を維持した。一方、2024年末は5.1%と▲0.50%の利下げを織り込む水準となり、前回予想の4.6%から切り上がった。
・パウエルFRB議長がFOMC後の記者会見で、足元の米景気の底堅さなどに言及し、追加利上げの可能性を否定しなかった。政策金利が十分に引締め的な領域にあるかについての明言も避けた。市場では「会見がタカ派寄りと受け止められた」との声があった。会見後に米長期金利が上昇に転じたのも株式の相対的な割高感につながった。
・FOMC前は買いが優勢でNYダウは+260ドル近く上げる場面があった。9/20発表の8月の英消費者物価指数(CPI)の上昇率が市場予想を下回った。グローバルなインフレへの警戒が和らぎ、米債券市場でも長期金利が低下する場面があった。米原油先物が一時1バレル90ドルを下回り、原油価格の急激な上昇が一服したことも株式市場の投資家心理の支えとなった。原油先物は前日に93ドル台後半と、昨年11月以来の高値を付けていた。
・個別株では、半導体のインテルやソフトウェアのマイクロソフト、スマートフォンのアップルなどの下げが目立った。動画配信のネットフリックスやネット検索のアルファベットが売られた。英半導体設計のアームが続落し、前日上場した食品宅配サービスの「インスタカート」運営のメープルベアも大幅安だった。一方、バイオ製薬のアムジェンや医療保険のユナイテッドヘルスなど業績が景気の影響を受けにくいディフェンシブ株には買いが入った。アナリストが投資判断を「買い」としたIBMも高かった。
●2.米国株:FRBは9月金利据え置き、インフレ見通しで金利上昇し株価下落
1)原油100ドル高(予想)が、米国にインフレ再加速と景気減速をもたらす可能性。
・サウジアラビアとロシアは減産し、米でも産油増産投資はなく減産が予想される。
・米国の石油の戦略的備蓄の補充もあり、原油価格の下落は見通せない。
2)FOMCは9月金利据え置き決定も、「タカ派的な据え置き」で金利上昇。
・朝方、NYダウは上昇して始まったが、FOMC決定とパウエル議長の記者会見を受け、インフレ懸念が強まり、長期金利が上昇した。長期金利の上昇で、割高感が相対的に意識される米国株式は下落に転じた。特に、成長株が売られ、ハイテク株の多いナスダック総合指数の下落率がNYダウよりも高かった。
3)原油など国際商品指数(CRB)は上昇しており、インフレの再加速が予想される。
●3.原油相場、100ドル/バレルへの回復が再び視野に、現物プレミアム急拡大(ブルームバーグ)
●4.米アマゾン、25万人を追加雇用へ、年末商戦向け採用で過去2年比+67%増(ロイター)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)9/18、上海総合+8高、3,125(亜州リサーチより抜粋)
・中国景気の持ち直し期待が改めて意識される流れとなった。
・先週公表された8月の経済統計では、不動産開発など投資関連の指標が低迷したものの、小売売上高や鉱工業生産は市場予想を大幅に上回った。
・また、中国人民銀行(中央銀行)は9/14、預金準備率を▲0.25%下げると発表している。
・業種別では、消費関連の上げが目立ち、医薬品もしっかり。金融・インフラ建設なども買われた。半面、不動産は冴えず、ハイテク・エネルギー・公益が売られた。
2)9/19、上海総合▲0安、3,124(亜州リサーチより抜粋)
・米中の金利動向が気掛かり材料となる流れとなった。
・米国では、米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が9/20午後(日本時間9/21未明)に公表される。国内では、中国人民銀行(中央銀行)が明日9/20(日本時間10時15分ごろ)実質的な政策金利となる最優遇貸出金利「ローンプライムレート(LPR)」を発表する予定だ。結果を見極めたいとするスタンスが重しとなった。ただ、下値は限定的。
・中国人民銀行が預金準備率を引き下げるなど、当局の景気支援スタンスが下値を支えている。
・業種別では、ハイテク関連の下げが目立ち、消費関連も安い。不動産・素材・軍事関連なども売られた。半面、エネルギーはしっかり、金融・運輸・公益も買われた。
3)9/20、上海総合▲16安、3,108(亜州リサーチより抜粋)
・米金利高が嫌気される流れとなった。
・原油市場が昨年11月以来の高値を付けるなど、インフレ圧力が高まるなか、昨夜の米債券市場では、米長期債利回りが約16年ぶりの高水準に達した。
・米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を9/20午後(日本時間9/21未明)に控え、結果を見極めたいとするムードも広がっている。
・当局の景気支援スタンスが相場を下支えしており、下値は限定的。
・寄り付き前に、中国人民銀行(中央銀行)が公表した実質的な政策金利となる最優遇貸出金利「ローンプライムレート(LPR)」に関しては、市場の予想通り1年物・5年物いずれも現行水準(それぞれ3.45%、4.20%)に据え置かれた。ただ、市場関係者の間では、年内の利下げ観測が流れている。
・業種別では、消費関連の下げが目立ち、医薬品も冴えない。エネルギー・公益・ハイテク・インフラ関連・素材などが売られた。半面、銀行はしっかり。不動産の一角は買われた。
●2.中国株:経済回復に向けて「空虚な進軍ラッパ」しか吹けない中国政府
1)抽象的で観念論的な総論でしか経済回復を鼓舞できない中国政府の実力を露呈
・「中国は景気回復を強固にするためにさらなる政策の導入を加速させる」と、中国国営中央テレビ(CCTV)が9/20、李強首相が議長を務める閣僚会議を引用して報じた。(ロイターより抜粋)
・報道によると、中国は改革深化とさらなる開放を堅持し、企業の熱意を全面的に結集させると指摘した。「中国は関連政策の導入と取り組み実施を加速させ、経済の上向き傾向をさらに強固なものとする」とした。
・また、地方政府および政府部門は中国の経済回復に関する調査で見つかった問題に細心の注意を払い、すでに発表された政策措置が効果を発揮するように後押ししなければならないと指摘。関連する政府部門は調査中に集められた意見に対応し、2024年の経済活動を考慮して綿密な調査を実施し計画を立てるべきとした。
2)中国経済の成長要因
・外資導入による高度・効率的な「生産」と「輸出」。
・輸出がもたらした貿易利益と外資導入による資金を元手にした対外融資・援助による輸出増と資源確保。
・不動産部門の成長。
・インフラ投資。
・民間によるIT部門の発展。
・安価で膨大な若い労働人口と消費の拡大。
3)成長の阻害要因
・覇権主義による威圧的行動がもたらした西側諸国の中国警戒感。
・米国の関税引上げと先端半導体関連の輸出規制。
・先進諸国の企業が保有する先端技術の強引な移転要求。
・中国への進出意欲の減退。
・中国からの撤退決定の増加。
・ゼロコロナ政策による中国優先主義がサプライチェーンを分断。
・サプライチェーン分断がもたらした先進諸国の安全保障への目覚め。
・不動産業界への強烈な融資規制。
・猶予期間1年と短く、あまりにも急激な融資規制のため、不動産会社は対応できず資金繰り悪化。
・資金繰り悪化が招いた値引き販売が、不動産価格下落につながる。
・個人の資産の7割が不動産投資であたっため、個人は住宅投資がリスクと認識し、家計と老後資金を守るため消費を削って貯蓄に回した。
・結果、中国の消費部門も低迷することになった。つまり、不動産会社への融資規制⇒不動産部門の減衰⇒消費部門の減退。
・民間IT部門に対する規制強化と民間活力の衰退。
・成長する民間企業を規制抑圧し、生産性の低い国有企業を保護する当局。
・インフラ投資の余力がない。
・地方政府は傘下の「融資平台」を通じてインフラ投資をしてきた。
・ところが、融資平台のインフラ投資の源泉は「土地譲渡益」にあった。不動産需要の減退と不動産価格の低下のため、土地譲渡益が得られないため、インフラ投資が困難となり、かつ融資平台そのものが借入金の金利支払いに難渋している。
・中央政府は、地方政府に債券発行枠の増大を認めたが、根本解決には至らないと思われる。問題先送りの処置にすぎない。
・若年労働者の高失業率
・6月時点で21%超の失業率、実家に戻った人を加えると46%超という試算。
・人口の減少と、高齢化の急速な進行、アジア諸国と比べて高額な賃金。
・年金制度の不備と介護保険制度のなさが負担となる政府。
・対象人口が多い分だけ、巨額負担の発生になると予想。
4)物事解決の中心を外した小幅な対策しか出さない中国当局
・外資歓迎といいながら、反スパイ法制定・ビザ取得条件の難しさなどで矛盾。実態は外国人排斥。
・不動産業界の資金繰り難の解決策を放置し、資金繰りのために安売りする実態。住宅の価格下落を放置しながら、住宅購入条件を緩和し、購入推進する政策。値下がりする住宅を誰が買うのか?
5)中国が成長回復するのに必要なこと
・不動産業界に対する大量の資金注入で、資金繰りのための投げ売りを抑制し、住宅価格の先高観を醸成すること。先高観が戻れば、購入者は現れる。
・外資の逃避抑制と、中国で安心して活動できる環境の再構築。そうすれば、雇用は回復傾向を取り戻すことができる。
・覇権主義・戦狼外交を止め、西側先進国・近隣国と友好な信頼関係を再構築。貿易の回復で、輸出力を再浮上させられる。
・中国国民の将来に対する不安感を取り除き、安心感を与える。
●3.中国進出の米企業調査、景気減速などで楽観見通しが過去最低(ロイターより抜粋)
1)要因:(1)地政学的情勢 (2)景気減速。
2)在中国の米商工会議所の会長は「持続的な景気回復が得られるとの幻想が崩れ去った」と語った。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)9/18、祝日「敬老の日」で休場
2)9/19、日経平均▲290円安、33,242円(日経新聞より抜粋)
・前週末の米株式市場でのハイテク株の下落を受けて、東京市場でも値がさの半導体関連を中心に売り優勢だった。日経平均は下げ幅を▲400円超に広げる場面もあった。
・東エレクやアドテストなどの下げが目立ち、値がさ株の影響が大きい日経平均の重荷となった。日経平均は直近まで堅調で年初来高値の更新も視野に入れていた。今週は米連邦公開市場委員会(FOMC)、日銀の金融政策決定会合と重要イベントを控えているとあって、イベント前に利益確定売りが膨らみやすいとの見方も出ていた。
・半面、9月に入り、続いているとみられる自動車を中心とした大型・割安株買いの流れは継続した。中間配当の権利取り狙いで三菱UFJなど銀行株が買われたほか、海運や鉄鋼株の上昇も目立った。
・個別株では、ソフトバンクG・リクルート・HOYA・信越化が下落した。一方、ホンダ・トヨタ・京セラ・三井物産が上昇した。コマツは上場来高値を更新した。
3)9/20、日経平均▲218円安、33,023円(日経新聞より抜粋)
・前日の米株式市場の下落で投資家心理が悪化し、東京市場でも幅広い銘柄に売りが出た。
・日本時間9/20未明に米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表を控え、これまで上昇基調が目立っていた銘柄を中心に持ち高調整の売りも出やすかった。大引け間際には33,000円を下回る場面もあった。
・前日の米株式市場での原油高を受けて米連邦準備理事会(FRB)の金融引締めが長期化するとの懸念が広がり、主要3指数が下落した。投資家心理の悪化で、東京市場でも売りが優勢となった。米長期金利の上昇も、相対的な割高感が意識されやすいグロース(成長)株の重荷だった。
・FOMCでは利上げは見送られる見通しだが、参加者らの政策金利見通し(ドットチャート)やパウエル議長の記者会見への注目度は高い。会合後の相場下落を警戒して、持ち高調整の売りが出やすかった。大引けにかけて、下げ幅を広げる展開だったが、日経平均の33,000円は下値の目途として意識され、同水準の前後では売り圧力は弱まった。
・個別株では、テルモ・トヨタは下落。中外薬・コナミの下げも大きかった。一方、アドテスト・ファナックは上昇。太陽誘電・ミネベアも買われた。
●2.日本株:反動安も一時的で、堅調に推移するエネルギーが内在する
1)日本長期金利が9/20に0.717%に上昇
・日本10年物金利の推移 : 9/1 0.621% ⇒ 9/20 0.717%
2)円相場、9/20に148.05円に下落、昨年11月以来
・日米金利差の拡大を反映。
・9/20後場は、為替介入を警戒した動きがあり、終値は147.97円。
・ただ、長期金利では米国の金利高を考慮すれば、年末にかかて150円台もあり得る。
3)日本株は、直近の急騰の反動安もあるが、新高値銘柄は依然として多く、堅調に推移する勢いを保有している。
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・6594 ニデック 業績期待。
・9697 カプコン 業績期待。
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