米国債格下げの余波は?
2023年8月16日 16:15
●フィッチが米国債を格下げ
格付け会社のフィッチ・レーティングスは8月1日、米国の外貨建て長期債の格付けを「AAA」から「AAプラス」に1段階引き下げたと、ロイター通信などが報じている。
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これを受けて、米国S&P500は1%超の大幅下落となり、ナスダックも下落。米国株だけでなく、日経平均も約2%超下落し、その他の国も世界的に株が下落した。
世界3位の信用格付け会社のフィッチによる格下げは重く、今後はフィッチショックとして米国株のみならず、長期的に世界の株の下落につながるのだろうか?
●格下げの原因と米国政府の反応
フィッチは格下げの原因について、「今後3年間で予想される財政悪化、高水準かつ増加する一般政府債務」と説明している。
さらに、2023年5月~6月にかけて浮上した債務上限問題などの財務管理体制への不安も、影響していることを示唆している。
一方、イエレン財務長官は発表直後に「強く反対する」とし、「米国経済の力強さに照らして明らかに不可解だ」と、不快感をあらわにしている。
フィッチが指摘する財政への不安も、財政赤字削減法案の成立を根拠として、積極的に取り組んでいることもアピールしている。
5月にもフィッチは、米国の信用力格付けの見通しを「ネガティブ」と修正。債務上限問題で露呈している政治的なリーダーシップに疑問符を呈しており、今回の格下げへの布石だったという見方もある。
●影響は長引くのか?
格下げ以降、米国株の下落傾向は続いている。
株価の下落は夏枯れ相場と重なっているだけという見方もあり、今回の格下げが世界1位の経済大国としての米国の地位が揺らいだというわけではない。ムーディーズなどの他の格付け会社は見通しを変えていない。
だがコロナ禍での金融緩和、その反動による金利上昇という短期間での大幅な金融政策の変更という中で、“財政問題”が二の次になりつつあった。
今回の格下げは、忘れていたリスクを顕在化するきっかけになる可能性も否定できず、思わぬところに飛び火することも考えられる。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)