公務員の副業は制限されるべきか?
2023年8月5日 16:44
民間だけでなく、公務員にも副業解禁が広がってきている。しかし、果たして公務員の副業解禁は全面的に受け入れられるものなのだろうか。本記事では、公務員の副業に関する問題点と、地域社会への貢献について考えていきたい。
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■公務員の副業と社会的公平性
2019年3月、政府によって国家公務員の副業が解禁がされた。その後、徐々に公務員の副業は広がり、現在では地方自治体でも副業を始める公務員が増えてきている。
そもそも、公務員の副業が禁じられていたのは、国家公務員法・地方公務員法における職務規定で「職務に専念する義務」が原則となっているからである。加えて、「信用失墜行為の禁止」と「守秘義務」も原則となっている。
公務員の副業について考える際、まず考慮すべきは社会的公平性の観点ではないだろうか。公務員は、その職務上、一般市民がアクセスできない情報を知る機会がある。その情報を副業に活用することは、公平性を損なう可能性があるからだ。
例えば、都市計画の情報を先んじて知ることで、不動産投資の副業に利用するといったケースが考えられる。これは、公務員が持つ特権的な立場を利用した行為となり、社会的公平性を脅かすものと言えるだろう。
また公務員が副業を持つこと自体が、職務に対する専念度を低下させ、公務員としての職務遂行能力に影響を及ぼす可能性が考えられる。これは、公務員が市民全体のために働くべきという原則に反するからだ。
さらに公務員が副業を持つことで、その副業と公務員としての職務との間に利益相反が生じる可能性もある。例えば、公務員が建設業の副業を持つと、その公務員が関与する公共工事の発注に影響を及ぼしかねない。
これらの観点から、公務員の副業が社会的公平性を損なう可能性は否定できない。そのため公務員の副業には、一定の制限が必要になるだろう。
営利企業に勤める民間人とは異なり、公務員が所属しているのは公的機関という特殊な組織だ。この違いから、民間人と公務員は副業に関して、一概に「平等」の観点で一括りにして議論すべきではない。そもそも、互いの置かれている環境が平等ではないのだから。
■公務員の副業による地域への貢献
公務員の副業解禁については、社会的公平性の観点から慎重に進められるべきだ。だが一方で、公務員の副業が地域社会への貢献として還元される場合、その価値は無視できない。公務員は、その職務を通じて得た専門知識やスキルを活用し、地域社会に貢献できるからである。
特に地方自治体において、地域社会の高齢化と人口減少から、人手不足は深刻な問題だ。例えば、地域を支える農業・畜産業・漁業をはじめ、各産業の担い手がいなくなれば、特産物を供給する術が失われてしまう。ここに副業人材として公務員が参加できれば、地域活性化に大きく貢献できるだろう。
他には、教育関連の公務員が、自身の専門知識を活かして、地域の子供たちに学習支援を行う副業を持つといったケースが考えられる。このような活動は、地域の教育水準の向上に寄与するとともに、公務員自身の職務にもプラスの影響を与える可能性がある。そして、公務員の副業が地域社会に貢献することで、市民や国民からの理解や支持を得やすくなるだろう。
しかし公務員の副業が、地域社会に貢献する形であれば許容されるという考え方には、注意が必要だ。地域社会に貢献する形であるとはいえ、その副業が公務員の職務と利益相反を生じる可能性がある。公務員が、職務上知り得た情報を不適切に活用するような場合は、その副業は制限する必要があるからだ。
公務員の副業についての議論は、これからも続けられるべきだ。一概に、公務員の副業解禁を否定するのでは、建設的で発展的な議論を阻害してしまう。社会的公平性と地域への貢献という2つの視点から、社会全体が納得できる形で、副業人材として公務員を活用する可能性を考えていくべきだろう。(記事:西島武・記事一覧を見る)