日本郵政、楽天Gの株価下落で特損計上 提携の行方は?
2023年7月4日 16:07
●日本郵政が楽天G株で850億円の大損
日本郵政は6月30日、保有する楽天グループ(楽天G)の株式を巡り、2023年4-6月期の連結決算で約850億円の評価損を計上すると発表した。
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日本郵政は2021年3月、楽天Gに出資し業務提携を締結。楽天Gの株を8%保有する株主でもある。
ウィンウィンの関係と当時は期待された両社の提携だが、今後どうなっていくのだろうか?
●日本郵政と楽天Gの提携の経緯
当時は、かんぽ生命の不祥事と郵便事業の頭打ちに悩まされていた日本郵政と、独自の物流網がなく郵便局での楽天モバイルを販売することなども目論む楽天とが、利害関係の一致した業務提携として、期待の声が大きかった。
だが楽天Gのモバイル事業の不振は一向に改善されず、基地局整備の設備投資と利用者の伸び悩みという長年の課題も未だに解消されていない。
日本郵政が楽天Gに出資した2021年3月には、1株約1145円で取得したが、現在は半額以下の1株500円にも満たず、楽天Gの株価の低迷が顕著である。
●今後の行方は?
日本郵政は2015年、オーストラリアの物流会社「トール・ホールディングス」に約6200億円を投じて傘下に収めたが、トールが業績不振に陥り、2021年に一部の事業を7億円で売却。2021年3月決算で約670億円の損失計上ということもあった。
今回の楽天Gの件も、日本郵政には“買い物下手”という批判の声もある。完全な民営会社ではなく、日本政府が多くの株式を持つ会社の損失は、国民からの批判の誹りを免れない。
だが日本郵政は、簡単には楽天Gの株式を売却できない。
ドライバー不足などによる物流危機が訪れる2024年問題を控えており、生産性向上が不可欠で、DX化や人事確保などの面で楽天の協力が不可欠になるかもしれない。
楽天モバイル事業は改善の兆しがなく、日本郵政も無傷ではいられないが、今回の報道を受けても、日本郵政の株が大きく下落することはなかった。
株価が下落しなかったのは、好調な日経平均に支えられていたのかもしれないが、市場の受け止め方は意外にも冷静だった。すぐに両社の提携解消とはならないと見込んでいるのだろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)