ストレージ王、トランクルームの業界全体の市場規模は約800億円 コロナ禍を追い風にさらなる普及に期待
2023年6月2日 11:28
今回のIRセミナーでお伝えしたいこと
荒川滋郎氏(以下、荒川):ストレージ王の代表取締役の荒川です。どうぞよろしくお願いします。本日のセミナーでは、スライドに記載の5点をご説明したいと考えています。また、トランクルームという業態は日本においてまだ認知度が低いため、私どもの会社のご紹介だけではなく、トランクルーム事業そのものについても簡単にお伝えできればと思っています。
倉庫業は鎌倉時代くらいからあると言われていますが、日本におけるトランクルームのサービスは、1931年に三菱倉庫が本社のビルで個人からの荷物を預かったのが始まりだといわれています。90年以上経っている歴史の長い業態ですが、伸びとしては年間で5パーセントくらいです。まだこれから普及するといえます。
ストレージ王について_経営理念とミッション
荒川:簡単に当社をご紹介します。私どもは、「顧客資産の持続的な価値向上を通じて、人々の暮らしや社会の未来を共創する」を経営理念に掲げ、トランクルームの企画、開発、運営を事業としています。
日々のトランクルーム運営のほかに、土地を仕入れてトランクルームを建てる、あるいは土地をお借りしてトランクルームを作ることもしています。また、それを投資家に売却する開発分譲事業も行っており、トランクルームの利用者、土地や建物を活用したい不動産オーナー、その不動産を所有して運用する投資家のみなさまがお客さまになります。
ストレージ王について_会社概要、沿革
荒川:私どもの会社は、2008年にコンテナ建設を手掛ける株式会社デベロップのトランクルームの運営部門が子会社化したことが始まりです。デベロップ自体は2007年にコンテナ建築を中心に設立された会社です。
その後、トランクルーム数を増やしながら、2015年に岡山のトランクルーム会社と合併しました。店舗は全国150ヶ所強ですが、そのうち3分の1くらいが岡山で、残りのほとんどが関東です。
もともとは運営管理事業で始めた会社ですが、企画開発に関しては、2019年からコンテナではなく屋内型の建物を使ったトランクルームを作り始めました。ここから自社開発を強め、開発分譲事業として企画や開発をセグメントし、その部分がかなり大きくなったことを背景に、2022年4月に東証のグロース市場に上場しました。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):ここからはご質問を挟みながら進めていきたいと思います。御社はトランクルームの企画、開発を行っているとお話しされていましたが、もともとはコンテナ建設の会社としてコンテナを作られていたのですか?
荒川:私どもが作っていたのではなく、デベロップという」親会社が建設していました。運営を専門に行うため、デベロップ設立の翌年に私どもの会社が作られました。
坂本:街中でよく見る、特に郊外ではコンテナが積み上がったようなものを見かけますが、最近は空きビルの1棟でコンテナ倉庫を運営しているところもあると思います。御社はその両方を行っているイメージでしょうか?
荒川:おっしゃるとおりです。のちほど写真でもご紹介しますが、最近は空調が効いているトランクルームが非常に人気です。コンテナ型は空調が効いていませんが、保管場所の近くまで車が付けられるなど使いやすさもあり、根強い人気があります。私どもはその両方を行っています。
ストレージ王について_保有・管理する店舗の分布
荒川:店舗は岡山と関東両方にあるとお伝えしました。今は全国で150ヶ所プラスアルファで展開しており、今年4月末時点で約9,000室を運営しています。分布としては約100店舗、つまり約6,000室が東京都をはじめとする関東地方、42店舗の3,000室弱が岡山の周辺です。さらに、関西、四国、九州の博多にも店舗があります。
トランクルーム運営会社は各地域に根ざして運営しているところもあり、全国で約1,000社から約1,200社あります。自社の調べとして、私どもの国内の拠点数は業界内で屋内型が20番目くらい、コンテナ型が15番目くらいです。
坂本:この規模でもそのくらいの順位なのですね。意外と多くの会社がありますね。
荒川:トランクルーム数が私どもの10倍くらいある会社もあります。
トランクルームについて_トランクルームとは
荒川:トランクルームは大きく分けて2種類あります。私どもはもともとコンテナ型を中心としていました。こちらは海上輸送で使うコンテナを使って建物を建てていますが、輸送用コンテナとサイズは同じでも、私どもが使っているのは建築専用のコンテナです。
海上輸送用のコンテナは輸送用に作っているため、建物として使うには少し強度が足りません。しかし、事業者の中には、海上輸送用のコンテナをそのまま空地に置いているところもあります。私どもは建築基準法で建物として認められるコンテナを、基礎工事を行い地面に固定しています。
どうして海上輸送用と同じサイズなのかといいますと、輸入する過程でコンテナ船に積むと運賃が安くなるためです。また、作る際に溶接部分が多いため、人件費の関係で中国から輸入していますが、「Rグレード」という国土交通省指定性能評価機関である日本鉄骨評価センターでも認められた溶接技術を持つ工場にお願いしています。
コンテナ建設のメリットは、現場での工期が短い点です。コンクリートで基礎を作ってボルトで留めるため、建物としても安全なだけでなく、据え付け自体は現場工期1日で終わります。そして、決定的なメリットは移設ができる点です。
坂本:あまり荷物が入らなかったコンテナを移設すると聞きます。
荒川:そのとおりです。実際に投資を軽くするために、借地上にコンテナを置いているケースもあります。例えば、土地のオーナーから「実は家を建てたいから、そろそろどいてください」と言われた時に、次の現場に持って行って移すことができます。無駄にならないという意味では、サステナブルで地球環境にも優しい構造物です。
ですので、みなさまもいろいろなところで見かけたことがあると思うのですが、ロードサイド型は非常に普及しており、私どもも全国100ヶ所くらいで運営しています。
坂本:御社はコンテナ運営の建築確認を取っていますが、意外とそうではない業者もあるのですね。自治体によっては、建築確認を取らなくてはいけないところと、取らなくてもいいところがあると聞きます。このあたりが曖昧だと思うのですが、御社はきっちりとしているのですね。
荒川:ブロックの上にコンテナを置いただけの業者もおり、国交省から「地震があれば倒れて危ない」と言われています。私どもはきちんと基礎を作り、地面にコンテナを固定して、建築確認が取れるようにしています。ただし、「空調が効かない」「扉が道路からアクセスできるためセキュリティが弱い」という点があります。
坂本:扉に鍵があるとはいえ気になりますね。
荒川:例えば、夜に女性の方が1人で荷物を出し入れしている時に、後ろから人が近づいてくると怖いと思います。そのため、スライド右側に記載した、屋内型というタイプがあります。こちらは私どもも2019年頃から力を入れており、業界でもコンテナ型に比べて屋内型が伸びています。
一部ではマンションやオフィスの1つの階に設置されているタイプもありますが、基本的には建物全体でトランクルームになっています。メリットとしては建物の入口でセキュリティをかけられる点です。1回中に入ると利用者しか入れないため、荷物を整理していても、利用者ではない人が入ってくることはありません。
また、ここでは空調を使うことができます。私どもの建物の場合は6階建てのものまでありますが、エレベーターで上がることができ、どのフロアでも荷物を運び入れやすいです。コンテナ型では夏場は温度が高くなりますが、屋内型は空調がきちんとしているため、クローゼットのような感覚でお使いいただけます。
私どもの屋内型の基本スペックは、すべて内部をカーペット敷きにしています。さらに空調が効いているという意味では、衣類を含め、いろいろな大切な思い出、例えばアルバムも長く大切にお預かりできます。このように、お手軽に使っていただけるコンテナ型と、空調も効いている屋内型の両方を運営しています。
トランクルームについて_サービス展開例
荒川:トランクルームは荷物を置くスペースですが、付帯していくつかのサービスを提供しています。まず、宅配ロッカーを備え付けたものです。ネットで注文した荷物をトランクルームに収納することができます。
画家やデザイナーなどの自分で作った商品を売っている方や、輸入している食材を売っている方などが、在庫をトランクルームに置いておいて、注文がある度にそこから発送するということもできます。個人に限らず法人もですが、商売される方がトランクルームを在庫場所とする時に、宅配ロッカーがあると荷物を受け取ったり発送したりできてよいと考え、備え付けています。
少し変わったものにはワインセラーがあります。温度を14度くらいに保ってワインを大切にお預かりしています。他にサーフボードを縦に保管できるような専用の場所もあります。
最近増えているものは、バイクをお預かりするタイプです。コロナ禍の影響もあり、大型バイクに乗ることがあらためてブームになりましたが、マンションの駐輪場には置きにくかったり、高額なものですので盗難を心配して屋外に置けなかったりします。そのため、屋内に収納できるタイプとして非常に人気があり、稼働率が高くなっています。
トランクルームについて_トランクルームの不動産特性
荒川:スライドは、私どもに限らず一般的にトランクルームが、不動産オーナーにとってどのようなものかをご説明した資料です。アパート・マンションを個人で作ったり投資されたりする場合と、トランクルームに投資する場合には、どのような違いがあるのかをお話しします。
まず、トランクルームには水回りがありません。最初に建築する時、レジデンスよりも水回りがない分だけ、建築費は少し安めになっています。また、水回りの配管は10年から20年で替える必要があり、アパート経営されている場合は、お風呂や台所も10年で入れ替えないといけません。対してトランクルームは、そのような修繕費用が少なく、建物のコストが増えていきにくいです。
商品として見ても、アパート・マンションでは入居者が築年数を気にされることがあり、新築のアパートと築20年のアパートでは家賃が違ってくるかと思います。しかし、私どもはトランクルームをきれいに保っていますので、「築年数は何年ですか?」と聞かれることはあまりありません。つまり、建物が清潔に保たれていれば、お客さまはあまり築年数を気にされませんので、収入部分においても劣化が少ないです。不動産投資家からは、ボラティリティが少ない不動産として評価をいただいています。
オフィスのリート、商業のリート、倉庫のリートは増えてきましたが、日本国内ではトランクルームリートはまだありません。トランクルーム投資自体は、不動産投資家の中で認知度はまだ低いものの、私どもは収益不動産としてトランクルームを売却しており、一度お取引した投資家からのリピートも多く、手間がかからず運用しやすい資産としてご評価いただいています。
トランクルームについて_ストレージ市場成長予測
荒川:スライドはトランクルーム業界の規模を示したものです。矢野経済研究所によると、トランクルームの業界全体の市場規模は約800億円と言われています。毎年4パーセントから5パーセントくらいの水準で、右肩上がりで伸びています。
新型コロナウイルスが発生した時、不動産としてトランクルームを作るにあたって、「来年以降どうなるのか」と半年くらい土地を買うのを控えた時期もありましたが、結果的に見るとあまり影響がなかったです。
坂本:むしろ市場規模は伸びていますね。
荒川:Web会議やテレワークで自宅にいらっしゃる方が増え、例えば共働きのご夫婦だと、部屋が少ないと感じたようです。
坂本:スペースの問題が生まれたのですね。
荒川:1人はキッチンでテレビ会議を行い、もう1人はどこでリモート会議を行うのか困った時に、物置として使っていた部屋の荷物をトランクルームに運び、そこを書斎にしたという声もありました。家にいる時間が長くなったことにより、トランクルームを借りてみようという動きがありました。
また、新型コロナウイルス感染症が拡大したことで、調理家電を充実させ、家で料理をするようになった方も増えました。その際に使った食料品の在庫が増えたため、これまでは自宅に収納していた扇風機やこたつなどの季節家電をトランクルームに預け、普段使うものを手元に置きたいというご要望がありました。おかげさまでコロナ禍の影響は小さく、業界全体で成長しています。
しかし、日本でのトランクルーム普及率は1パーセント未満と言われています。アメリカなどは11パーセントくらいです。
坂本:家が大きいにもかかわらず11パーセントなのですね。
荒川:家のサイズだけではなく、文化の違いなどもあると思っています。トランクルーム市場はこれから伸びると思っています。
トランクルーム事業について_ストレージ市場成長への対応
荒川:また、認知度が低いため、実際にトランクルームを使用したことがある方は少ないこともアンケート結果からわかっています。しかし、一度物置に収納されると、荷物を出すのは大変なため、解約率は低くなっています。
坂本:荷物を戻すためにはまた家のスペースを確保しなければいけないですものね。
荒川:断捨離をされる方もいますが、日本は四季があるため、夏物と冬物の衣料品や、家電を入れ替える作業が必然となります。
また、昔はマンション価値が上昇することに確実性があり、買い替える方も多かったのですが、現在は価格が上がっているため買い替えが難しい状況にあると思います。
さらに、昔の3LDKは75平米ぐらいが平均的だったと思いますが、現在は少しずつ狭くなっています。間取りがそのままとすると、狭くなった分は収納スペースが圧縮されていると考えています。
そのようなことから、普段使わないものを収納するためにはトランクルームが必要となります。私どものお客さまのほとんどは初めて預けるという方ですが、「一度預けてみたら家の中がスッキリしてよかった」というお声もいただいています。そのような状況から、日本でもトランクルームが普及すると期待しているところです。
当社の事業と強みについて_3つの力と当社のお客様
荒川:トランクルームの運営において、競合他社さまと比較した時に、当社の強みであると考えている点をお話しします。
まず、運営力です。2008年からトランクルームを運営していますが、初めてトランクルームを使う方も多いため、「この分量の荷物はこのぐらいのスペースがあればしまうことができます」などとご案内しています。また、お客さまへの電話でのご説明は正月を除き、土日も含めて毎日行っています。
続いて、仕入開発力です。物件を開発している関係から不動産情報も頻繁に入手することができるため、土地の仕入れにおいても力を発揮しています。
最後に物件売却力です。先ほど投資家さまにトランクルームをリピートしてお持ちいただいているとお話ししましたが、不動産投資家さまへの売却にも実績ができています。
このように、運営する力と仕入れる力、また完成した物件を売る力が、私どもの強みだと思っています。
当社の事業と強みについて_事業内容分類
荒川:トランクルーム運営管理事業での売上は2割程度です。業界も成長段階にあり、物件を作って売る開発分譲事業の売上が8割となります。
第4四半期に売上が集中するためご心配をおかけしていますが、トランクルームが出来上がるまで1年程度かかります。土地の仕入れは年末の12月あるいは年度末の3月に物件の売買が活発になるためその時期が多く、それから設計、建築期間が1年弱かかるため、1年間の中では第4四半期に店舗を売ることが多くなります。そのため、第1四半期、第2四半期は売上が少なく、ランニングとしては赤字となりました。しかし、第4四半期できちんと取り返し、最終的には黒字となっています。
坂本:投資家へ売却するにあたり、その投資家の開拓はどのように行っているのか教えてください。
荒川:当社には不動産業界に長く携わっている人材がいます。そのネットワークを使い、投資家の方を探しています。
最近は、信託受益権にするようなケースもあります。土地の仕入れも、信託銀行さまとのやり取りが多いため、金融機関から投資家さまをご紹介いただくこともあります。
また、リピートされる方が多いため、新しく投資家さまを探すだけではなく、同じ方に何軒も所有していただくこともあります。販売先は安定して確保できていると考えています。
坂本:投資家が購入した場合の利回りはどのぐらいになるのでしょうか? 場所や空室率によって変わると思いますが、基本的な利回りを教えてください。
荒川:コンテナ型トランクルームは借地に乗っている関係で、利回りが10パーセントぐらいあります。
建物型は立地にもよりますが、耐用年数が30年以上のもので5パーセントぐらいだと思います。キャップレートはマンションより0.5パーセントから1パーセント高いです。
立地的には住宅地の近いところにあります。マンションよりも売買の実績が少ないこともあり、少しキャップレートが乗ります。
坂本:御社の事業は、販売と運営管理があると思いますが、利益率はどのくらいなのでしょうか?
荒川:粗利ベースでお話しすると、運営管理が10パーセントから15パーセントぐらいです。これは不動産オーナーさまから物件をお預かりし、お客さまからいただいた収益のうち、10パーセントから15パーセントを手元に残し、残りの85パーセントから90パーセントをオーナーさまに還元しています。
物件の売却実績については、8パーセントくらいの物件もあれば、20パーセントを超える物件もあります。
実際に売る際には、キャップレートベースで売却価格が決まる一方、土地の値段は物件によってバラバラです。私たちは15パーセントぐらいを目安に物件を仕入れていますが、少し高くても立地がよい物件を購入した場合は、10パーセントを切ることもあります。土地の仕入れが順調に進むと、20パーセントを超えることもあります。
今お話ししたのは粗利ベースですので、販管費は別となります。
坂本:売却される際は、まず募集し、ある程度入居率を高めてから売却しているのでしょうか?
荒川:去年上場するまでは資金的に難しかったため、大型の物件は基本的に完成時に販売しています。これまで約10棟ぐらい売却していますが、残念ながら保持する資金力がありませんでした。
しかし、おかげさまで上場し、現在は2物件ほどをしばらく保持できるファイナンスを銀行さまから得ています。これからは余裕があれば自社保有の大型物件も出てくると思います。
コンテナ型の物件は、1件2,000万円から5,000万円くらいのサイズです。これはすぐにそのまま売却するケースもありますし、ある程度稼働率が上がってから売却することもできます。
そのような意味では投資家さまも、稼働率が低い新築の物件より、空きのない物件を好むため、コンテナ型はできるだけ稼働率を上げてから売却するようにしています。
当社の事業と強みについて_収益構造(1ストック収益)
荒川:スライドに記載しているのは当社のストック収益の事業構造です。当社がトランクルーム利用者からいただく利用料と不動産オーナーさまへ支払う賃料や地代の差額が、ストック収益となります。
当社の事業と強みについて_収益構造(2フロー収益)
荒川:フロー収益は、当社が土地を仕入れて建物を建て、その不動産を投資家さまに売却することで利益を確保します。
しかし、実際には当社が運営管理を引き受けたり、マスターリースを行ったりするケースが多いため、売りっぱなしではなく、売却した物件を運営することで、継続的にお取り引きを行っています。
当社の強みについて_利用者から見た強み1安心、安全な設備
荒川:運営管理の強みについてお話しします。まず、建物は非常に強度が高くなっています。また、監視カメラをつけるなど、セキュリティ対策も十分行っています。屋内型には空調もあります。
当社の強みについて_利用者から見た強み2キレイな店舗
荒川:スライドの写真は屋内型の室内イメージです。カーペットを敷き、エレベーターや空調も取り付けた、クローゼット感覚のトランクルームとなっています。
当社の強みについて_15年間、8000室の運営/リーシング経験
荒川:今、Web申し込みが増えていますが、初めて使う方にはわかりにくいため、「お客さまの課題にあわせてこのぐらいの部屋をご用意します」と、お電話できちんとご説明しながら運営しています。
当社の強みについて_土地所有者から見た事業の優位性
荒川:土地の仕入れについてです。コンテナ型の土地は移築ができるため、土地オーナーさまから見ると将来的にその土地をご自身で使うことができるため、堅固な建物を建てるケースより貸しやすいと聞いています。
当社のコンテナ型トランクルームは100坪から200坪ぐらいです。ロードサイドのコンビニなどは500坪程度と広いため、小さめの土地を有効活用しやすくなっています。
また、スライド右側の図は当社が東京都・新宿区で行った物件の建築レイアウトです。もともとはマンション建築のため地上げをされる予定でしたが、鍵型で地形が悪かったため、当社が購入してトランクルームにしました。
多くの窓が必要なレジデンスに比べると敷地の活用度が高いと思います。トランクルームはいろいろな敷地にフレキシブルに入るところが特徴です。また、駅から距離があっても問題ないため、マンションを建てづらい土地もトランクルームとして活用できます。
当社の強みについて_投資家から見た当社事業の優位性
荒川:スライド下部は実際に投資家さまに売却した物件の実績です。現在は屋内大型案件を積み上げています。投資家さまに売却した後も、私たちが借り上げて運営しているご提案の実績です。
当社の強みについて_投資家から見た当社事業の優位性
荒川:いろいろな契約のかたちがあります。土地を借地として借り、コンテナを乗せることもありますし、土地を買ってコンテナを乗せることも可能です。
今、マンションデベロッパーのタスキさまと組み、マンションの1階部分だけをトランクルームにしていただいた事例もあります。トランクルームはいろいろな契約のかたちが可能となっています。
当社の業績と取り組みについて_決算の推移
荒川:業績の計画と実績についてです。現在の売上規模は30億円くらいですが、これらを5パーセントから6パーセントぐらい伸ばしていこうと努めています。業界のトランクルームにおける成長率は4パーセントから5パーセントですので、少しでも競争力をつけてより高い成長率で売上を伸ばしていきたいと考えています。
坂本:たくさんのストック物件ができたことで、管理物件が増えるため、その部分の増収増益効果があるのですね。
荒川:管理物件が増えても規模の経済が働いてそれに比例して販管費は増えるわけではありません。そのため、管理物件が増えてくれば利益率は次第に上がってくると期待しています。
当社の業績と取り組みについて_直近の開発分譲実績
荒川:スライドに記載しているのは、昨年度の開発物件です。新宿あるいは豊島区等の大型物件は、すべて年内に売り切っている実績をご紹介しています。
坂本:高額ですが、購入したのはファンドなのか個人なのか、買われた主体を教えてください。
荒川:屋内型の物件を買われるのは個人の方ではなく、保険会社さまや事業会社さまです。コンテナ型の物件は、個人の方や、個人の方の資産管理会社の場合もあります。
坂本:竣工してすぐ売るのであれば、満室になるまで時間がかかるかもしれません。その期間を教えてください。
荒川:だいたい3年ぐらい経たないと、7割から8割には届きません。例えば月々3パーセント入ると、年間36パーセント、2年で72パーセントとなります。物件によっては月に2パーセントから3パーセントで埋まっていくため稼働率80パーセントになるには2年から3年ぐらいかかる計算になります。
稼働率があがるまでに時間がかかるということは、マスターリースしている当初は赤字が出ることもあります。
そのためマスターリース条件を傾斜型の固定家賃にする、あるいは売却時の利益率を少し下げてでもマスターリース条件を下げる場合もあります。売った時の粗利とマスターリースする賃料はバーターの関係にあるためです。
そのような調節をする一方で、マスターリースで出ている赤字を、開発分譲の売却益で補っているという側面もあります。管理物件が増えてストック収入が増えてくれば、いずれ開店から間もない物件の赤字を吸収して均衡するように調整していきます。
坂本:バランスを取りながら収益を立てているのですね。非常によくわかりました。
当社の業績と取り組みについて_運営管理の状況
荒川:毎月発表していますが、稼働率の推移についてです。2年を超える案件は87パーセントぐらい稼働率があります。コンテナの案件も含め、非常に高い稼働率になっています。一度埋まると稼働率は安定しているため、2年未満のところは数字が低い傾向にありますが、2年を超えると、全体として8割を超える稼働率になります。
坂本:借りようとしたら「待ちです」となっている時があるのですよね。「なかなか出ないな」と思っていたら、半年か1年ぐらい経って「空きました」と連絡がありました。
当社の業績と取り組みについて_新規利用者の獲得に向けた活動
荒川:トランクルームの開発にあたって、現在は1部屋あたりの面積を少しずつ小さくしています。コロナ禍で新しく利用される方などの中には「そこまでたくさんの荷物を入れなくていいけど、クローゼットが足りない分の1帖、2帖くらいのスペースが欲しい」という要望が増えてきています。大型物件の場合はだいたい坪あたりの値段が2万数千円ですが、1帖ですと1万円程度です。
「1万円ちょっとで部屋が広くなるなら借りてみようか」という需要もあるため、現在は部屋の広さを少しずつ小さくしているところです。
坂本:満室になった場合は、スペースが小さいほうが利益率も少し上がるのでしょうか?
荒川:単価としてはそのとおりです。
当社の業績と取り組みについて_パルマとの業務提携
荒川:昨年11月に、同業他社であり保証事業でお世話になっているパルマさまと業務提携しました。物件のオープンが重なった時には宣伝を手伝っていただいたり、物件売却の際には情報共有しながら連携したりと、協力しながら事業を進めています。
当社の業績と取り組みについて_クリアルとの業務提携
荒川:クリアルさまは不動産を流動化されている会社です。トランクルームも今後はそのような不動産流動化商品として組み込んでいきたいということで、業務提携しています。
坂本:クリアルさまは不動産投資のクラウドファンディングなどが有名ですよね。そのあたりも活用しながらトランクルームを運用していくということですね。
今後の計画について_成長戦略の進捗
荒川:こちらは新しい取り組みで、栃木県のガレージオフィスなどを積み上げて新しい運営資産を増やし、ランニングの利益を増やす計画です。
物件としては、初進出となる沖縄県の土地を仕入れて建設を進めています。地元の千葉県市川市では、マンション併設の倉庫だった物件を買い取り、今年の4月にトランクルームとしてオープンさせました。その他にも今年は豊島区と品川区、目黒区の土地を仕入れており、現在、設計作業中です。品川区と目黒区は初出店になりますが、城南などマンション価格が高いエリアへの進出も予定しています。
今後の計画について_2024年1月期の重点施策
荒川:2024年1月期の重点施策として、運営力・仕入開発力・物件売却力の強化に取り組みます。詳細はスライドをご覧ください。
今後の計画について_開発・出店予定
荒川:今年仕入れた沖縄県や目黒区、品川区の物件情報です。スライド右上が沖縄の店舗のパースです。その下に市川市のマンション併設店舗を載せていますが、これは既存物件の1階、2階部分をトランクルームに改装して利用いただく事例です。商業施設への出店実績も今後増やしていくことを検討しています。
坂本:これはマンションの1階、2階がトランクルームになっているということですか?
荒川:はい、そのとおりです。もともとはチョコレートを扱う会社の冷蔵倉庫でしたが、建物全体を買い取り、1階、2階の倉庫だったところをトランクルームに改装しました。3階から上はマンションです。
今後の計画について_運営管理
荒川:こちらは運営する部屋数です。前年同期比で10パーセント以上増えており、今のところの出店契約でいけば今年度末には1万室くらいになる見込みです。運営管理費も前年同期比10パーセント以上の増加を目指しています。
今後の計画について_トランクルーム以外も含む不動産による利益の獲得
荒川:私どもの経営理念は「顧客資産の持続的な価値向上を通じて、人々の暮らしや社会の未来を共創する」というものです。この実現に向けて、今後はトランクルーム以外の物件も扱っていきたいと考えています。
トランクルームを売却する際に不動産の投資家の方とお話しする中で「トランクルーム以外にもいい物件があれば持ってきてほしい」というお声をいただくことがあります。当社は不動産取引でさまざまなお付き合いがあり、オフィスやホテルなどいろいろな不動産の情報を持っていますので、今後はそのような幅広いニーズにもお応えできるよう、新しい提案を行っていきたいと思います。
今までは単一セグメントで事業を展開してきましたが、今年の株主総会で定款を変更し、その他の不動産もセグメントに加えました。今後は事業の幅を広げ、トランクルーム以外の不動産取得にも取り組んでいきたいと考えています。
質疑応答:日本におけるトランクルームの利用率について
坂本:「日本ではトランクルームを利用したことがあるのは人口の1パーセント程度ということで、馴染みがないように思うのですが、今後定着するのでしょうか?」というご質問です。
荒川:アメリカはトランクルームの利用率が10パーセントを超えるといわれています。アメリカのほうが日本より家が広いのに、と不思議に思われるかもしれません。アメリカの若者は大学に入学するタイミングで寮に入ることが多いのですが、学年ごとに部屋を変える必要があり、その時に荷物をトランクルームに預ける習慣があると聞いています。
坂本:私の友人にも留学の際にトランクルームを使っている人がいました。
荒川:そのような「学生時代に使ったことがある」という文化的な背景は利用率が高い理由の1つかと思います。あとは土地の値段も関係していると思います。アメリカは都心から車で15分も走れば郊外に出られ、土地の価格差がけっこう大きいです。ところが日本では、車で15分走ったからといって地価が10分の1になるわけではありません。
坂本:日本は山が多くて平野が少ないため、そうですよね。
荒川:土地の価格に大きな差がないというのは日本でトランクルームが普及しにくい理由の1つだと思います。一方で、収納が豊富な都市部のマンションは価格が高いという事情や、家事をアウトソーシングする習慣も以前より増えている流れがあります。
個人も企業も、すべて自分で行うのではなく、例えば年末の換気扇のお掃除はプロに頼むなど、お金を払って外の資源を利用することがこれからますます増えていくと思います。テレワークの影響で部屋を広くしたいというニーズも増しています。そのような要素が重なり、おかげさまで現在は業界の市場規模が4パーセント、5パーセントずつ伸びています。
トランクルームは一度使っていただくとなかなかやめにくいサービスです。いきなりアメリカ並みになるとは思っていませんが、今後じわじわと利用率が増えていくだろうと期待しています。
質疑応答:業務提携やM&Aの予定について
増井麻里子氏(以下、増井):「規模の経済を追求するというお話がありましたが、同業他社が多数いる中で、業務提携やM&Aは積極的に行うのでしょうか?」というご質問です。
荒川:実は現在、いくつかの同業他社さんから、「トランクルームの運営を受けてくれないか」というお話をいただいています。トランクルームの受付は土日に電話が入ることが非常に多いため手間がかかるとか、なかなか集客が厳しいという会社からのお声です。
矢野経済研究所の調査ではトランクルームを運営する会社は全国に1,000社から1,200社あるとのことですが、そのような中でこれから合従連衡が起きることはあると思います。
受付の電話はずっと鳴っているわけではなく、1日に数本という時もあります。一方、スタッフを抱えるコストは一定で、運営部屋数が多少増えても、それに比例してスタッフを増やさなければいけないわけではありません。
そのような意味では、運営上の規模の経済は当然ありますので、これから私どもに運営してほしいという会社さんもいらっしゃると思います。再編の進みやすい業界かなと思っており、そのような依頼はお引き受けしたいと考えています。
合併などは相手のあることですのでなんとも言えませんが、まだ合理化できる業界であることは確かです。
質疑応答:ストレージ王という社名について
坂本:「ストレージ王という会社名の由来を教えてください」というご質問です。
荒川:デベロップという親会社が名付けたそうです。ストレージ業界の中で伸びてほしいという理由から「ストレージ王」としたのだと思います。アメリカでは個人向けのレンタル収納スペースのことをセルフストレージと呼ぶということで、そちらを活かしてストレージという言葉を使ったようです。ストレージプラスという会社もありますね。反対にトランクルームという言葉を名前に使っている会社はあまりないですね。
質疑応答:クリアルとの業務提携について
坂本:「クリアルと提携する意味や、今後のシナジーについて教えてください。クリアルはクラウドファンディングが得意な会社だと思いますが、そのスキームにストレージ王を当てはめていくのか、それとも違うパターンをお考えなのでしょうか?」というご質問です。
荒川:いずれも考えられると思います。不動産そのものをクリアルさまにいったんお預けして、クリアルさまの中で不特法(不動産特定共同事業法)を利用して小口化するという方法もありますし、ブリッジで開発時の資金をつないでいただくということもあるかと思います。
上場した関係もあり、おかげさまで開発時の資金については金融機関から借り入れできていますので、クリアルさまにいったん不動産をお預けして小口化するのが一番考えやすいかと思います。
また、クリアルさまは私どもよりも知名度が高いため、トランクルームという収益資産をお客さまに認知いただく意味でも、その知名度を活用していきたいと思っています。
坂本:確かに、それはいい考えですね。
荒川:クリアルさまにトランクルームを扱っていただきたいという思いもあり、現在お話ししている段階です。
坂本:クリアルの社長にもよくお話をおうかがいしますが、やはり人気が高くユーザーも多いということで、けっこう瞬間蒸発してしまうらしいです。うまくいくといいですね。
質疑応答:インフレの影響について
坂本:「インフレの影響はありますか?』というご質問です。資材が高くなっているかと思いますので、状況を教えていただきたいです。
荒川:おっしゃるとおり、建築資材がかなり値上がりしている印象があります。コンテナのほうも鉄材の値上がりと円安の影響を受けています。すぐに価格転嫁するのは難しいところですので、利用料は上げずに、少しでも安く土地を仕入れるなど工夫しています。
トランクルームの価格設定は日々変えるようなものではないのですが、私どもはある程度柔軟に提供しています。そこをうまく調整して、そのようなインパクトが利用者さまになるべく及ばないように取り組んでいるところです。
質疑応答:仕入れと売却の状況について
坂本:「仕入れと売却が事業の両輪だと思いますが、どちらのほうが苦労している状況でしょうか?」というご質問です。
荒川:売却のほうは意外とうまくいっています。不動産を買ってくださる投資家の方は比較的リピートしていただくことが多く、その上、最近新たにお取引を始めたところもあります。
どちらかといえば仕入れのほうが苦労している状況です。まず、安くていい土地を仕入れたいという希望があります。また、土地自体は住宅地の近くでないとお客さまが利用しにくい一方で、低層住居専用地域には用途地域の面からトランクルームを建てられません。その意味で、住宅地に近い準工業地域や近隣商業地域のような用途地域を探す必要があります。
それに加えて、目立つ場所でないと「ここにトランクルームがある」と気づいていただけないため、ある程度大通り沿いで、その代わりに駅からは少し遠くてもいいという条件があります。特殊な立地なので土地探しはけっこう苦労しています。信託銀行に情報提供をお願いしたり、金融機関と連携したりしながら、一生懸命土地を探しているという状況です。
質疑応答:トランクルームの認知度・利用の拡大施策について
増井:「トランクルームの認知度や利用拡大のために行っている施策とターゲット層があればお聞きしたいです」というご質問です。
荒川:トランクルームを利用いただいている方は子育て世代が多く、特に30代から40代の方が多い印象です。施策としては、初めて利用いただく際にはハードルがあるので、最初の3ヶ月は利用料を半額にしたり、最初にお荷物を入れていただく時の運搬費用を私どもがサービスしたり、入り口のハードルを下げる工夫をしています。
もちろんWebからの申し込みもありますが、その他にもビラ配りなど地道な取り組みも行っており、意外とベタな方法で宣伝をしています。
一方で、「このような使い方をすると住環境がよくなります」という情報発信も今後は広く行っていきたいと思っています。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:今後、店舗を増やしたい地域はありますか?
回答:屋内型大型案件は、東京23区内や大阪、名古屋、福岡などの主要都市で可能性があると考えています。コンテナ型の案件は全国のいろいろなエリアで出店可能です。交通量が多い道路沿いで、200坪程度の土地があれば積極的に検討します。また、商業施設内、既存のオフィスビル、マンション内などの出店も検討していきます。
<質問2>
質問:テレワーク施設をトランクルーム周辺に設置という発想はないでしょうか?
回答:貴重な事業のヒントをありがとうございます。外に荷物を預けるのではなく、ご自身が過ごす空間を外に借りるという発想には当社も注目しており、過去に、新たに起業される方や事務所を独立したい方をターゲットにしたメゾネットタイプのガレージハウス「EERF新小岩」と「R9 OFFICE GARAGE藤岡」をオープンしています。「EERF新小岩」については満室とご好評をいただいています。
ニーズの深堀により、今後も新しいサービスを積極的にご提供していきたいと考えています。