可視光によりCO2からギ酸を高効率的に合成する触媒開発 東工大ら
2023年6月1日 16:20
東京工業大学、関西学院大学などは5月30日、可視光を用いて、CO2からギ酸を高効率的・高選択的に合成する固体光触媒KGF-10を開発したと発表した。この光触媒は、スズ(Sn)を使うため、貴金属や希少金属を使う必要がなく、資源的な制約が少ない上に、コスト的にも有利であるという。
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■ギ酸とカーボンニュートラル
政府は2050年までに、CO2の排出を実質的に0にするカーボンニュートラルを目指すことを宣言している。このカーボンニュートラルを実現するために取り組まれているのが、いわゆるカーボンリサイクルだ。
カーボンリサイクルでは、CO2を資源として捉え、発電所や工場などから排出されたCO2を分離・回収して、有用化学品などとして再利用する。
このとき有用化学品として期待されているのが、ギ酸だ。ギ酸は、防腐剤や抗菌剤などさまざまな化学製品に使われている。
またギ酸は、再生可能エネルギーによってつくられた水素を貯蔵する素材としても期待されている。再生可能エネルギーを使ってつくられた水素を、一旦ギ酸に変換。ギ酸は触媒を使って分解すればいつでも水素が取り出せる。
■可視光を使いCO2からギ酸をつくる固体光触媒開発
今回研究グループは、金属-有機構造体(以下MOF)に着目して、固体光触媒KGF-10の開発に成功した。MOFは、1997年に発表された比較的に新しい素材で、金属イオンと有機配位体が結合した金属錯体が無数に連なったものだ。
これまで開発されてきたCO2変換光触媒は、銀やルテニウムなどの貴金属や希少金属が使われてきた。だがKGF-10は、金属イオンとして自然界に豊富に存在するスズイオンが使われているため、資源的な制約が少なく、コストの面でも有利だという。
また「固体」光触媒であるところから、反応後の反応物と触媒の分離や触媒の回収も容易だという。
なおKGF-10のギ酸の生成選択率は99%以上、みかけの量子収率は9.8%にもなる。これは貴金属や希少金属を使わない単一成分光触媒としては、世界最高値となる。
KGF-10は、触媒として反応中にその構造を変化させていると考えられるが、研究グループでは今後、この構造の変化をより詳しく調べることで、さらなる性能の向上を図っていきたいとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)