エルドアン大統領再選で気になる、トルコリラの行方
2023年5月30日 07:34
●エルドアン大統領が再選
5月28日に行われたトルコ大統領選挙の決選投票で、現職のエルドアン氏が勝利した。
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これまで20年間政権の座についていたエルドアン氏は、さらに5年間の長期政権が続くこととなった。
民族主義を掲げ、異例の財政政策と言われてきたエルドアン政権が続くことで、投資家の間では失望感が広がっている。
政権交代となれば、政策転換で利上げすると見られており、トルコリラが上昇することが期待されていた。29日の為替市場は1ドル=20トルコリラを維持しているが、今後どうなるかわからない。
●トルコ大統領選挙
5月14日に投開票された選挙では、過半数に届く候補がいなかったため、上位2名となったエルドアン氏と野党統一候補のクルチダルオール氏が、28日の決選投票では一騎打ちとなった。
選挙前は深刻なインフレ、2月に起きた大地震への対応で政府に対する不満が高まっており、クルチダルオール氏有利とも見られていた。
だが1回目の選挙3位で敗北したオアン氏が、決選投票でエルドアン氏支持を表明したことで、エルドアン氏有利が伝えられていた。
トルコも加盟するNATO(北大西洋条約機構)は、エルドアン氏がロシアのプーチン大統領と蜜月な関係で、警戒を強めると見られる。
プーチン氏はエルドアン氏に親愛なる友と祝意を示し、親ロシア派のオアン氏も要職につくと見られており、地政学リスクが緊迫化する恐れがある。
●トルコリラはさらなる下落?
エルドアン氏はインフレがトルコの最も喫緊の課題と述べており、危機感を強めている。トルコのインフレ率は40%を超えている。
政府与党内では、緩やかな利上げ路線に転換する政策や公的機関・政府補助金を通じて、的を絞った融資の実行が検討されているが、意見が対立しているとの報道もある。
しかし、“インフレには利下げ”という独特の政策はしばらく続けると見られている。
決選投票の2日前には、トルコの中央銀行の外貨準備高が2002年以来のマイナスになるなど、これから5年のエルドアン政権は課題が山積みである。
トルコリラにとってもしばらく“買い”要素は無さそうである。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)