土壇場だった楽天モバイルが、大キャンペーンで攻勢に転じたワケ! (1)
2023年5月21日 16:07
「既存のプラチナバンドの再配分をして欲しい」と、当時の楽天モバイル社長山田善久氏が総務省の有識者会議で訴えたのが、2020年12月だったから既に2年半程の月日が流れた。
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携帯電話に欠かせない電波の中で700M~900MHzの帯域は、建物の奥などに回り込む特性を有しているので、携帯事業者にとっては使い勝手のいい存在だとして、プラチナバンドという呼ばれ方をされる貴重な電波帯だ。
この電波帯は現在、NTTドコモとKDDI、ソフトバンクに平等に50MHzが割り当てられている。楽天モバイルが携帯事業に参入した時にはこの割り当てが実施済みだったので、現在も楽天モバイルはプラチナバンドを持たない。
楽天モバイルの契約数が伸び悩んでいる理由として、通信品質(快適に繋がるかどうか)が槍玉に上がるケースが多いが、プラチナバンドを持たない楽天モバイルが競合3社と同等の通信品質を提供するためには、各社を凌駕するほどの稠密な基地局ネットが必要になるというハンディを負っていた。
だから、携帯事業者が4社体制となった今、楽天モバイルがプラチナバンドの配分を求めることには十分な妥当性があると言えるだろう。
電話は所有物ではないから、総務相から基地局整備計画の認定を受けて「一定期間」電波の利用が認められる。有効に電波が利用されていないと判断された場合には、再免許時に縮減の憂き目に会っても文句は言えない。もっとも、プラチナバンドに関わる巨額の設備投資に一定の配慮が必要なことは言うまでもない。
ちなみに、総務省が20年12月に公表した携帯電話の電波利用状況調査によると、KDDIに割り当てされている700MHz帯が「適切な利用状況とは認め難い」という評価になっている。700MHz帯の基地局計画が、NTTドコモやソフトバンクを超える大風呂敷のような計画となってしまい、実態の整備状況との齟齬(そご)が出ているということだ。
KDDIにとっては触れられたくないウィークポイントだが、プラチナバンドを巡るその後の展開の伏線になっているのは否めない。
22年12月以降、楽天モバイルの業務方針には大きな変化があった。1つ目は、楽天モバイルショップの閉店が目に見えて増えていると伝えられたことだ。日本郵便との契約で郵便局内に出店した店舗も含まれる。契約の増加を全社一丸で推進しているはずの楽天モバイルが、顧客獲得の最前線に当たるショップを減らすことは不可解である。
2つ目は、携帯基地局の設置スピードを大幅にペースダウンしたことだ。工事着工済みの基地局を除く契約済みの基地局工事も24年1月以降に繰延されたから、施工工事や資材販売業者に与えた影響は大きい。競合3社の人口カバー率と肩を並べる正念場の時期に、計画を繰り延べることに対する不自然さは否めなかった。
3つ目は、大幅な人員削減だ。22年12月末と、23年1月末の2回に分けて業務委託社員との契約を大量に打ち切った。いくら資金負担が大きいとしても、今の時期に基地局網の構築をストップして店舗も縮小し、人員削減を進めることは理解し難いから、周囲が色めき立ったのは当然であろう(続く)。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)