住友林業と京大、木造人工衛星に向けた木材の宇宙曝露実験を完了
2023年5月14日 07:28
住友林業(東京都千代田区)と京都大学は12日、国際宇宙ステーションで実施していた10カ月の木材の宇宙曝露実験が完了したと発表した。試験体の劣化は極めて軽微だったという。実験を踏まえて、2024年に打ち上げる木造人工衛星に、ホウノキを用いることを決めた。こうした実験は世界で初めての試みとなる。
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試験体の木材は、宇宙から1月に帰還。NASAとJAXAを経て3月に受け取り、質量や外観などを測定する1次検査を実施した。宇宙線が飛び交い、温度差が大きな過酷な環境に10カ月さらしたが、木材の割れや剥がれ、反りなどは認められなかった。木材の探偵した材質と耐久性が証明できた。
試験体の樹種はヤマザクラ、ダケカンバ、ホオノキの3種類で、木造人工衛星に用いる最終候補としていた。いずれも劣化の差が無かったことから、地上で実施した強度などの試験結果や、加工性の高さも踏まえて、人工衛星にはホウノキを使うことにした。
住友林業と京都大学は2020年4月に「宇宙における樹木育成・木材利用に関する基礎的研究」に共同であたる、研究契約を締結した。宇宙木材プロジェクトを開始し、木造人工衛星打ち上げに向け、宇宙空間での木材の曝露実験を行った。
木材は電磁波や磁気波を透過させるため、姿勢制御装置やアンテナを衛生内に設置でき構造を簡素化できる。また衛星の運用が終了した後には、大気圏突入時に燃え尽きるため、微小物質が発生せずクリーンというメリットもある。環境に配慮した衛星開発につなげることができると見込んでいる。
住友林業は、1991年に筑波研究所を設立し、木の総合的な活用を目指し研究を進めている。今回の宇宙曝露試験によって、木材劣化メカニズムの解明にもつなげる。高機能木質建材や木材の新たな用途開発に役立てる。
京都大学は、今回の試験データや衛星1号機の運用データを基礎資料とし、2号機の設計や計測に向けて活用する。(記事:土佐洋甘・記事一覧を見る)