米国の債務上限問題、デフォルトが近いか?
2023年5月11日 16:28
●米政府の債務上限問題に警戒強まる
米国政府の債務が31兆4000億ドル(約4240兆円)の法定上限に達し、議会で上限引き上げや利用停止を決めなければ、早ければ6月1日にもデフォルトに陥るという。
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債務上限問題と消費者物価指数(CPI)を見極めたいという思惑から、為替、株価共に上値が重い展開となっている。
バイデン米大統領は、「債務上限問題が解決するまでここに留まる」として、5月19日から21日に開かれる広島での先進7カ国首脳会議(G7サミット)の欠席やオンライン出席を示唆している。
議会と政権の綱引きが度々繰り返されて生きた債務上限問題は、政争の具とも揶揄されてきたが、今回の深刻度とその市場への影響はどのようなリスクとなるだろうか?
●両者の思惑
今回の債務上限問題は、昨年の米国中間選挙で共和党が下院で過半数を奪還し、“ねじれ状態”にあることによるものだ。だがこれも今回に始まったことではない。
共和党は債務上限引き上げの条件として、大幅な歳出削減を提示しているが、バイデン民主党側はこれを拒否している。
歳出削減案は、電気自動車販売支援や学生ローンの減免措置など、バイデン大統領肝いりの政策が含まれており、これらを削減することとなれば、再選を目指す来年の米国大統領選挙に大打撃を与えることは避けられない。
イエレン財務長官は議会が適切な対応を怠れば憲法上の危機を招くと、警告を発している。
●回避への解決策はあるのか!?
イエレン氏は債務上限が引き上げられない場合、金融市場に重大な影響を及ぼすと主張している。
想定される最悪の事態としては、米国債が売られて長期金利が上昇し、銀行が保有する債権が含み損を抱えるということである。
そうなれば、SVBやファーストリパブリック銀行の取り付け騒ぎによる倒産という悪夢が、繰り返されかねない。
もちろん、今までのように期限直前で逆転合意となれば問題無いが、今回は平行線の様相を呈している。
この騒ぎが長期化し、株価への影響、物価への影響が顕著となれば、双方も妥協せざるを得なくなる可能性もある。
一旦は、サミット直前までが1つの山となるだろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)