ファースト・リパブリック銀行破綻と利上げの行方

2023年5月5日 09:05

●米ファースト・リパブリック銀行が破綻

 米国中堅銀行のファースト・リパブリック銀行が1日に破綻することとなった。リーマンショック後最大で、史上でも2番目の規模の銀行破綻となった。

【こちらも】米ファースト・リパブリック銀が経営破綻 2カ月間で3行目

 ファースト・リパブリック銀行は4月、第1四半期に約1000億ドル(13兆5000億円)の預金が流出したと発表していた。

 米連預金公社(FDIC)が公的管理下に置き、JPモルガンチェースが預金と資産を買収すると発表している。

 これを受けて株式市場は、米国地銀株を中心に下落し、NYダウなども小幅安となった。3日にはFRBがFOMCで0.25%利上げした。

 ファースト・リパブリック銀行は、第1四半期決算の発表後に、預金は安定しているとしていた中での破綻劇となった。その影響はどの程度か、また今後の利上げスケジュールはどうなるのだろうか?

●最後の利上げ?

 3日のFOMCでは、2022年3月から10回連続の利上げとなり、この決定は全会一致だった。

 FRBのパウエル議長はFOMC後の会見で、インフレは依然として高い水準にあると指摘おり、利上げの停止については時期尚早と述べている。

 しかし、“利上げには休息が必要”と、利上げ停止を示唆するようなことも話しており、玉虫色とも取れる対応だった。

 市場関係者にも、実質的な利上げの停止と受け取る一方で、先送りとの批判的な意見もある。

●ファースト・リパブリックの破綻が利上げ停止を後押しするか!?

 ファースト・リパブリック銀行の破綻は、サプライズだったことは間違いない。だが破綻自体は、ある程度織り込み済みだったのかもしれない。

 3日は当初上昇していた株価がパウエル議長の会見を受けて、下落しており、市場関係者には不信感の方が大きいとみられている。

 当然のことながら、これ以上の利上げは銀行のバランスシートの毀損を招き、いくら大手銀行が資金注入しても、焼け石に水になると破綻の連鎖が続くことも想定される。

 市場関係者にとっては利上げの停止と利下げへの言及に関心が移っている。今回のパウエル議長の発言で年内利下げが消滅したとの見方もあるが、サプライズで次回以降のFOMCで利下げへの言及があれば、ゲームチェンジとなることも予想される。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

関連記事

最新記事