日本の地銀はシリコンバレー銀行と同じ道を辿るのか
2023年4月21日 08:25
アメリカでシリコンバレー銀行、シグネチャー銀行が相次いで破綻し、金融不安は欧州にも飛び火してクレディ・スイスの買収にもつながった。信用不安の連鎖は、連邦準備制度理事会(FRB)と連邦預金保険公社(FDIC)による預金者保護の緊急措置や、UBSによる救済により、一旦落ち着きを見せている。
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シリコンバレー銀行はアメリカの中堅規模の銀行だったが、日本の地銀でも同じような事態が発生するかどうかは、起きるとも起きないとも色々な意見が出されている。
結論としては、シリコンバレー銀行の破綻原因や日本の地銀の業態を見る限り、同じ事態は起きないだろう。但し、地銀はそのビジネスモデルにリスクを抱えているため、安全とは言えない状態である。
シリコンバレー銀行は、ベンチャー企業や富裕層といった預金を引き出しやすい主体の資金を集めていた。一方で日本の地銀は、ベンチャー投資が少なく、すぐに資金を移すことがないことが相違点である。
またモバイルバンキングが浸透しているアメリカでは、預金の移動はスマホで簡単にできるため、銀行が資金調達する暇を与えず流動性ミスマッチが起きてしまった。日本ではモバイルバンキングの浸透度がアメリカに比べ低いため、急激な資金の移動は比較的起きにくい。
このように、預金構造とデジタル化の進展度の違いから、日本の地銀ではシリコンバレー銀行と同じような破綻が起きる可能性は低いだろう。
一方で、預金が集まりすぎて貸出先がないというのは共通の状況である。また欧米各国の金利が上昇する中で、債券の資産価値下落は続いており、アメリカではリセッションに突入し、それが世界に波及する可能性が指摘されている。
このような環境に加え、構造的に地方経済の停滞や日銀の金融政策のため、地銀の経営環境は非常に厳しい。日銀が2019年4月に出した「金融システムレポート」では、2028年に6割の地銀が赤字に陥るという内容であった。
新しく日銀の総裁に就いた植田和男氏は、所信聴取の中で金利政策を見直すことを明言しなかった。もし政策見直し発言があったとしたら、地銀が大量に保有する国債の資産価値下落を招き、大騒ぎになったであろう。いずれ見直しは起きるであろうが、少なくも時間稼ぎはできたため、この間に地銀は他行との統合やキャッシュの積み増し等の対策が必要となっている。(記事:Paji・記事一覧を見る)