OPECプラスのサプライズ追加減産で原油価格急騰 今後の行方は?
2023年4月7日 16:27
●OPECプラスが追加減産
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの非加盟国で構成されるOPECプラスが、予想外の追加減産を発表した。
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ロイター通信によると、JPモルガンは供給過剰が及ばないための「先手を打った措置」と分析している。
この発表はサプライズとなり、1バレル=70ドル台だったブレント原油先物格は約10%上昇し、80ドル台中盤となった。
SVB(シリコンバレー銀行)の破綻などによる一連の金融危機や景気後退懸念により、原油価格は下落傾向と見られていた。
これで局面が変わり、再び原油高へと向かうのだろうか?
●減産の内容
今回の発表では、5月から年末まで、世界需要の約1%に相当する日量115万バレルの追加減産を行うとしている。
OPECプラスの追加減産は合計で世界需要の約3.6%にあたる。
大方の予想では、今回の会合でこれまでの減産幅を維持すると見られていた。
米国の安全保障会議の報道官は、「ロシアによるウクライナ戦争の戦争資金を抑制するためにも原油価格の押し下げ」が必要としており、減産を「望ましくない」としている。
OPECプラスの取りまとめ役であるサウジアラビアが、接近しつつあるロシアへの配慮ではといううがった見方もある。
●減産で原油価格は再び上昇傾向?
キーマンであるサウジアラビアによる“ロシアのための減産説”は、米国を刺激するデメリットを考えれば、可能性は低いと見られている。
OPECプラスとしては、現状の原油価格に対する危機感が強かったと見るのが一般的だ。
ただ米国とすれば、原油価格の高騰はインフレを招く。SBVを発端とする一連の金融危機により、利上げというインフレ抑制カードが使いづらくなっており、原油価格は抑えたいのが本音だ。
来年に大統領選挙を控えるバイデン政権にとっては、インフレに神経質にならざるを得ず、対ロシアという面でも過度な減産は好ましくない。
中国における新型コロナからの経済回復という需要面でのプラスがあっても、世界的な景気減速もあり、原油需要の高まりはあまり期待できない。
減産というカードにも限界があり、原油価格のさらなる上昇は期待できないだろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)