東証、PBR1倍割れ企業に改善依頼 その狙いは?
2023年4月7日 08:10
日本取引所グループ傘下の東京証券取引所(東証)は3月31日、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」と題するレポートを公表し、その中でPBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る企業に改善計画の提示を求めた。
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株式投資の世界では、PBR1倍を下回ると割安銘柄のサインと言われることもあるが、理論上は、株主からすると株式を保持するよりもその企業が解散して資産から負債を除いた純資産を分配した方が良いことになる。つまり、投下した資本から価値が生み出せていない企業と見られる。
PBR1倍を下回る企業は、プライム市場で922社、スタンダード市場で934社、グロース市場で32社、合わせて1,888社も存在する。プライム市場だけで見ると、半分が該当することになる。これは欧米と比べると突出しており、PBRが1倍以下の企業はインデックスのS&P500では約5%、STOXX600では24%しかいない。
資本効率が悪い企業とは言っても、PBR1倍以下には名だたる大企業も存在し、トヨタ、三井不動産、JR東海も該当する。日本経済を支える重要な企業であり、解散が許容されるはずがない。
冒頭に述べた東証のレポートでは、短期的な収益性を上げるだけでなく、中長期の価値創造を実現し期待を上げることで、PBRの向上を企業に依頼するものである。但し、短期的には自社株買いや配当を増やすことでもPBRは上げることができる。そのため、直近では自社株買いを進める企業が増えることが予想される。
だが根本的にはやはり日本市場に魅力がなく、海外投資家を呼び込めていないことが問題だ。プライム市場には経営が破綻状態にも関わらず政府や金融機関の支援で生き延びているゾンビ企業が多数存在。市場区分見直しで掲げた「グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場」という、プライム市場のコンセプトを実現できていない状態である。
もちろん、東証もそれは認識しており、過措措置の期限を設けて改革を推進している。市場そのものの改革と、上場企業個々の改善活動の両輪が回ることで、海外投資家からの期待向上と資本の流入が進むだろう。それによりPBRが向上することが望ましい姿である。(記事:Paji・記事一覧を見る)