相場展望4月6日号 米国2重苦か: 原油高・ドル安でインフレ再上昇も 日本の4/5下落は3月末の反動、外国人先物は買越し
2023年4月6日 11:12
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)4/3、NYダウ+327ドル高、33,601ドル(日経新聞より抜粋)
・原油先物相場が大幅高となり、資源関連を中心に買いが入った。景気の先行きに懸念が高まりディフェンシブ株が総じて上昇したことも相場を押し上げ、2/17以来およそ1カ月半ぶりの高値となった。
・サウジアラビアなど一部の産油国は4/2、自主的な追加減産を決めた。これを受けて、米原油先物相場は前週比+6%高となり、収益改善期待から石油のシェブロン、建機のキャタピラーに買いが入った。
・4/3発表の3月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数は前月比▲1.4低い46.3と、市場予想47.3を下回った。原油価格の上昇も先行きの景気懸念を強め、医療保険のユナイテッドヘルスや製薬のメルクなどディフェンシブ株の買いにつながった。
・一方、クレジットカードのアメリカン・エキスプレス、スポーツ用品のナイキなどの消費関連が売られた。顧客情報管理のセールスフォースも下落した。
・ハイテク株比率が高いナスダック総合指数は4営業日ぶりに反落した。1~3月期の世界販売台数が市場予想に届かなかった電気自動車のテスラが▲6%安。半導体のマイクロンも安い。
【前回は】相場展望4月3日号 米国: しばらく「楽観」が優勢な展開か 日本: やや「買われ過ぎ」も、需給の良さで「堅調」との見方
2)4/4、NYダウ▲198ドル安、33,402ドル(日経新聞より抜粋)
・4/3発表の2月米雇用動態調査(JOLTS)で求人件数が市場予想以上に減り、米景気の急減速を示したと受け止められた。NYダウは前日までの4営業日で+1,200ドル余り上昇しており、主力銘柄には利益確定の売りも出やすかった。
・JOLTSでは求人件数が993万件と2カ月連続で減った。1,000万件を下回るのは2021年5月以来となり、1,050万件程度を見込んでいた市場予想にも届かなかった。4/3には3月の米サプライマネジメント(ISM)製造業景況感指数が2020年5月以来の水準に低下しており、弱めの経済指標が続いたことで、米景気の先行き不透明感が強まった。
・JOLTSの発表後に米長期金利の指標である10年債利回りは▲0.1%余り水準を切り下げ、3.3%台前半に低下する場面があった。長期金利の低下を受けて、年後半に米景気が後退局面に陥るリスクが意識されたとの声もあった。
・サウジアラビアなど一部産油国が4/2に自主減産を決め、米原油先物相場が続伸したのも景気の重荷として嫌気された。
・NYダウは一時▲325ドル安まで下げ幅を広げる場面があった。建機のキャタピラーが▲5%余り下げ、1銘柄でNYダウを▲80ドルほど押し下げた。化学のダウなども下げ、景気敏感株が全般に売られた。一方、バイオ製薬のアムジェンなど業績が景気に左右されないディフェンシブのヘルスケア関連などは上げ、NYダウは小高くなる場面もあった。電気自動車のテスラは下げが続いた。
3)4/5、NYダウ+80ドル高、33,482ドル(日経新聞より抜粋)
・市場予想を下回る米経済指標の発表が相次ぎ、景気懸念が相場全体の重荷になった。一方、景気動向に左右されにくいディフェンシブ株に買いが入り、NYダウを支えた。
・4/5発表の3月のADP雇用リポートでは、非農業部門の雇用者数が前月比+14.5万人増と、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想+21万人を下回った。
・3月のサプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況感指数は51.2と、市場予想54.3に届かなかった。
・今週発表された3月のISM製造業景況感指数や、2月米雇用動態調査(JOLTS)も米景気の悪化や労働市場の軟化を示していた。
・米景気懸念が強まるなか、ディフェンシブ株の上げが目立った。医療保険のユナイテッドヘルスや製薬のメルクが高い。集団訴訟で和解案を示した医療・日用品のジョンソン・アンド・ジョンソンは+4.5%高となった。
・半面、景気敏感株や消費関連株は売りが優勢だった。航空機のボーイングや建機のキャタピラー、スポーツ用品のナイキ、ホームセンターのホームデポが下落。ハイテク株も売り押され、スマホのアップル、ソフトウェアのマイクロソフトが下げた。
・市場では非製造業の景況感の悪化を受け、「景気減速がサービス業を含む幅広い分野に広がり、主力ハイテク企業も影響を避けられないとの懸念を強めた」との声も聞かれた。ネット通販のアマゾン、電気自動車のテスラが下げ、半導体株も売りが目立った。
・3月は米長期金利の急低下などを背景に、主力ハイテク株が買われた。また、ディフェンシブ株や配当利回りが高い銘柄へ資金がシフトしやすかったと言う。
●2.米国株:米国2重苦か=原油高・ドル安でインフレ再上昇、景気後退懸念が浮上
1)米2月JOLT求人件数は993.1万件と予想外に下回り、2021年5月以来の1,000万件割れとなった。失業者1人当たりの求人件数は1.8倍程度から1.67倍に低下した。FRBの金利引上げの効果が波及し、労働市場が冷え込み始めた兆候の可能性がある。これを受けて、米長期金利が低下し、為替相場も131円台までのドル安となった。
・米長期金利の低下で、米ハイテク株の上昇。ところが、4/5は長期金利が低下したにもかかわらず、ハイテク株の多いナスダック総合指数が下落した点に注目したい。(景気後退を懸念か?)
米10年長期金利 3/1 3.993% ⇒ 4/3 3.411 ⇒ 4/5 3.309
・日米長期金利差の縮小により、円高へ
日米10年債金利差 4/3 3.041% ⇒ 4/4 2.954 ⇒ 4/5 2.841
2)米WTI原油先物価格は4/5、80.38ドル/バレルと急伸し、インフレ率上昇懸念が増す。
3/15 67.63ドル ⇒ 4/5 80.38 +12.75ドル高 +18.9%高
インフレ上昇の回避策として金(ゴールド)が買われ、4/4、2,086ドルに急騰
3/7 1,817ドル ⇒ 4/5 2,037 +220ドル高 +12.1%高
インフレ率の再騰からインフレ率の再上昇から景気悪化を懸念して、米長短金利は低下したと思われる。
3)強まる米景気後退への不安、米株式相場は不透明感がますます曇る視界へ
●3.米国の銀行危機なお進行中、影響長期化=ダイモンJPモルガンCEO(ロイターより抜粋)
1)市場が見込む景気後退の確率は高まっている。2008年の金融危機のようなものではないが、現在の危機がいつ終わるのか分からない。この危機で、銀行やその他の貸手が一段と保守的になるにつれて、金融条件が引き締まるのは、明らかだ。
●4.米原油先物、80ドル台に急伸、有力産油国の追加減産表明で1カ月ぶり(時事通信)
●5.米2月JOLT求人件数993.1万人と、予想1,050万件・1月1082.4万件を下回る(フィスコ)
●6.米株式相場は昨年の安値を再び試す=JPモルガンのコラノビッチ氏(ブルームバーグより抜粋)
1)4/3の顧客向けリポートで、
・現在の状況は「嵐の前の静けさ」だと指摘した。
・(1)銀行不安 (2)石油ショック (3)成長鈍化 による逆風が続くなかで、「株式相場は年内に弱含みになる」と警告した。
・「リスクセンチメントの反転を予想し、今後数ヶ月中に昨年の安値を再び試す」と付け加えた。
●7.米製造業新規受注、2月は2カ月連続で減少、設備投資の低調を示唆(ロイター)
■II.中国株式市場
●1.上海指数の推移
1)4/3、上海総合+23高、3,296(亜州リサーチより抜粋)
・中国経済の先行き楽観が続く流れとなった。
・国内景気の持ち直しを支えるために、中国当局は経済支援策を継続するとの観測が広がっている。
・民間集計の財新製造業PMIは50.0にとどまり、予想51.4を大幅に下回ったものの、本土マーケットではこれを嫌気する売りは限定的だった。むしろ景気懸念は経済対策につながるなどと予想された。
・また、半導体など先端技術を巡る米中摩擦が強まるなか、当局は産業支援の姿勢を続けるとの期待も大きい。関連銘柄が物色され、指数は引けにかけて上げ幅を広げている。
・業種別では、ITハイテク関連の上げが目立ち、石油関連の銘柄もしっかり、不動産・通信・インフラ関連・素材・保険・証券・軍事関連・空運なども買われた。半面、医薬品・公益・銀行・消費関連の一角が売られた。
2)4/4、上海総合+16高、3,312(亜州リサーチより抜粋)
・前日までの好地合を継ぐ流れとなった。
・先端分野を巡る米中摩擦を背景に、独自技術の確立と製品の国産化に向けて、当局が産業支援策を継続するとの思惑が続いた。
・ただ、米中対立の警戒感も同時に意識され、上値は限定された。
・業種別では、バイオ製薬の上げが目立ち、造船関連もしっかり、醸造関連も買われた。半面、家電・発電設備・プラスチックが売られた。
3)4/5、祝日「清明節」のため休場
●2.中国株:中国労働市場は課題(若者失業率の高さ・高騰する賃金)が山積み
1)大学卒業者の多くが「卒業⇒失業」となるなど若者の雇用に深刻な問題が発生する恐れ
・2023年の大学卒業者数は1,158万人。学生は失業予防で留年・大学院希望が増加。学生に人気の高給料のハイテク企業は、習主席のハイテク企業締め付けで雇用削減と新卒採用を抑制のため就職できない。16~24歳の失業率18.1%、過去最悪の水準。
2)地方政府には債務問題があり、地方政府の財政は、とっくに限界を超えている。
・財政収入の約4割が土地売買によると言われている。習主席の肝いりで「高騰する不動産」に対して企業の借入ガイドライン強化で、不動産業界は資金繰りに追い込まれ悪化、その反動で地方政府収入を直撃した。
・中国では公共投資は地方政府主導で行なっており、投資縮小は雇用減に直結する。
3)賃金が上昇し労働コスト高が進む
・北京市の中途採用の平均賃金は26万円と、高騰している。
4)中国で進む高齢化と生産人口減少
・2022年で人口減少に転換した。
・生産人口減少が始まっている。
・女性1人当たり出産指数の急速な減少。
5)中国政府は雇用に対して十分な対策を打てていない。
・中国では雇用を守るためには経済成長率は+8%を必要とされてきた。ところが、2023年の経済成長目標は「+5%前後」というのが政府。この成長目標では、中国の失業率問題が解消されない。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)4/3、日経平均+146円高、28,188円(日経新聞より抜粋)
・前週末の米株高で投資家が運用リスクを取りやすくなり、幅広い銘柄が買われた。PBR(株価純資産倍率)の低いバリュー(割安)株の上昇が目立った。日経平均の上昇は一時+200円を超えた。
・3/31発表の米物価指標が市場予想を下回り、米利上げの長期化観測が後退した。同日の米株式市場で主要な株価指数が上昇した流れを、東京市場でも引き継いだ。
・東京証券取引所が前週末、PBRが1倍を下回る企業に改善計画を要請したのを受け、資本収益性の向上を期待する買いがバリュー株に入った。東証株価指数(TOPIX)バリュー指数は+1%高となり、上昇率は同グロース指数の+0.4%を上回った。
・もっとも、金融機関が含み益のある保有株を売却する期初の「益出し」で、相場の上値は重かった。日銀が4/3発表した3月全国企業短期経済観測調査(短観)で大企業・製造業の景況感が悪化したのも重荷となった。
・原油先物相場の急伸を受け、INPEXなど石油や鉱業株の上昇が目立った。三菱UFJ・パナ・が高かった。一方、値嵩の東エレクなど半導体関連株が売られ、キーエンス・商船三井が下げた。
2)4/4、日経平均+99円高、28,287円(日経新聞より抜粋)
・前日の米NYダウの上昇を支えに買いが優勢となり、3/9以来の高値となった。半面、利益確定や戻り待ちの売りがあり、相場の上値を抑えた。
・米サプライマネジメント協会(ISM)が4/3発表した3月の米製造業景況感指数は好不況の境目である50を5カ月連続で下回り、米景気懸念が強まった。米市場では製薬など景気に左右されにくいディフェンシブ株が買われ、東京市場でも中外薬・アステラスなど医薬品に買いが向かった。
・4/3にニューヨーク原油先物相場が大幅上昇し、資源関連株の買いを誘った。前日まで軟調だった海運株の上昇も目立った。
・一方、今週に決算発表を控える安川電が下げ、アドテスト・ファナックも軟調だった。鉄鋼株も安い。ルネサス・エムスリー・セブン&アイ・第一三共が下落した。半面、任天堂・資生堂・東エレク・ダイキンが上昇した。
3)4/5、日経平均▲474円安、27,813円(日経新聞より抜粋)
・米景気への懸念から前日の米株式相場が下落し、東京市場でも運用リスクを避けるための売りが優勢となり、心理的な節目の28,000円を割込んだ。為替市場で円高・ドル安が進み、主力の輸出企業を中心に幅広い銘柄に売りが出た。
・米労働省が4/4発表した2月の雇用動態調査(JOLTS)で、求人件数が市場予想を下回り、米景気の減速懸念が強まった。米株式市場の主要な株価指数の下落を受け、東京市場も朝から売りが先行した。円相場が前日の132円/ドル台から、131円台に円高したのも投資家心理に響いた。
・国内の金融機関が含み益のある保有株を売却する期初の「益出し」も相場の重荷となったようだ。4/4に日経平均は約1カ月ぶりの高値をつけていた。「チャート上で28,000円を超えた水準はここ1年ほどの相場の上限となっており、投資家は利益確定目的の売りを出しやすかった」との声が聞かれた。
・日経平均の寄与度が高いファストリが下落、ファナック・トヨタ・第一三共・コマツも下げた。一方、川崎船など大手海運3社が上昇、パナ・オリンパスも上げた。
●2.日本株:4/5の下落は3月末の反動、外国人先物は買越し、指数は過熱感あり
1)日経平均PERは、4/4に17.35倍と「買われ過ぎ」を示す
PERの推移 3/16 4/4 4/5
16.16倍 17.35 17.05
PBR(1株利益は低下) 1,630 1,631 :3/1は1,670
PBRは、3/1の1,670円から低下しているにもかかわらず、日経平均はPERに依存して上昇する構図となっており、歪さが拡大している。なお、4/5に日経平均は大幅安となったにもかかわらずPERは17.05倍と高水準。
2)ストキャシティクス指標も、まだ「買われ過ぎ」のサイン
4/4 4/5
RSI 70 59
FAST 95 83
SLOW 93 90
3)日米金利差が縮小し、為替相場は円高・ドル安
日米10年債金利差 4/3 3.041% ⇒ 4/4 2.954 ⇒ 4/5 2.841
円・ドル 4/3 133.65円 ⇒ 4/4 132.72 ⇒ 4/5 131.44
4/5の日経平均下げ要因の1つに、「円高」が挙げられる。
4)4/5の下落は3月末の反動、ただし、外国人の先物は大量の買越しで相場を支えた3月末頃、金融機関までも株式を買い上がってきた。外国人は4/5、株式先物で+3,750枚の大量の買越し。
5)日本株の今後は、当面堅調⇒次第に警戒を深めるかに注目
日本株は、米国株に連動しやすい。当面は、米国株に連動して高値圏で推移すると思われるが、米国では景気後退懸念と金融不安が高まる可能性が出てきた。米経済指標の弱さが濃くなると、警戒信号が点灯するので、米国経済を注視したい。世界景気の「カナリア」と言われる日本株式は買いにくい展開となるか注視したい。
●3.企業動向
1)三菱UFJ 印ノンバンク「DMIファイナンス」に約317億円出資(時事通信)
■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)
・4516 日本新薬 業績底打ちか。
・6594 日本電産 業績堅調
・7012 川崎重工 業績好調。
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