アステリア、幅広い業界のDX需要でノーコード製品のニーズが増加中 ソフトウェア事業拡大がさらに加速

2023年3月24日 08:53

多様性&ガバナンス重視の経営

平野洋一郎氏(以下、平野):みなさま、こんにちは。アステリア株式会社代表取締役社長の平野でございます。私たちアステリアはソフトウェアのメーカーです。いわゆるプロダクト開発のみをしている会社で、日本を含め5ヶ国に展開しています。

当社の経営メンバーは非常に多様性のあるメンバーで、社外取締役が過半数とガバナンスの効いた経営をしています。

アステリアの主力事業

平野:当社の主力事業は3つあります。創業時からのソフトウェア事業、2017年に開始したデザイン事業、そして2019年に開始した企業投資事業です。後者2つの事業がソフトウェア事業の成長を支える構成になっています。

アステリアの主力事業

平野:現在、ソフトウェア事業が売上全体の約85パーセント、デザイン事業が約15パーセントを占め、企業投資事業は損益のみ計上される事業となっています。

ソフトウェアで世界をつなぐことを目指している中で、ソフトウェアそのもののデザインを世界レベルに引き上げて世界をリードしていくとともに、ソフトウェアに先行投資をするため、企業投資を含め人・技術を獲得するための投資事業を行っています。

主力事業の構成

平野:それぞれの事業の中身についてご説明します。ソフトウェア事業は現在4つの製品があり、主力の「ASTERIA Warp」のほか、3つのソフトウェアもすべて「つなぐ」ための先進的なソフトウェアです。

デザイン事業は、2017年に買収したThis Place社という企業のブランドで展開しています。イギリスを中心にアメリカでも大きく伸びており、2023年3月期から日本でも事業を開始しました。

企業投資事業は、スライドに記載の5つの会社と、他1社の合計6社に投資しています。投資事業は2019年に本社から切り出したかたちで、米国テキサス州に拠点を構えています。

主力製品「ASTERIA Warp」

平野:ソフトウェア事業に関してご説明します。主力の「ASTERIA Warp」は企業の中と外にあるシステムをつなぐ製品で、1行もコードを書かずにノーコードでつなぐことができるのが特徴です。2002年から出荷を開始して2022年に20周年を迎えた、ノーコードの老舗と言える製品となっています。

ノーコードとは?

平野:ノーコードについて簡単にご説明します。スライド左側の画面が従来のコードを書くプログラミングの画面です。さまざまなコンピューター関係の映画などでこのような画面が出てくるかと思います。

一方、ノーコードとは、スライド右側の画面にグラフィカルなフローチャートが書かれていますが、このフローチャートを書くだけでコンピューターが動きます。こちらは設計の画面ではなく、この画面そのものがコンピューターを動かす指示になっており、これがノーコード、つまり1行もコードを書かないということです。

少し似た言葉でローコードというものがありますが、ローコードとノーコードは大きく違います。ローコードは書く行数が少ないのですがコーディングの必要があります。一方でノーコードは1行も書かないため、エンジニアでなくても使えるという特徴があります。

16年連続シェアNo.1を獲得

坂本慎太郎氏(以下、坂本):このノーコードを含めた御社の強みである「ASTERIA Warp」についておうかがいします。

データ連携がコーディング不要でできることは、私たちの生活や仕事においてスキルがなくても使えるという利点があると思います。それ以外になにかプラスになるようなことがあって御社のシェアが非常に高く支持されているのか、その背景をもう少しお聞かせください。

平野:現在、国内EAI/ESB市場においてシェア48.1パーセントで、16年連続シェアNo.1を獲得しています。その理由の1つはノーコードですが、それ以外に使い勝手や品質に対する満足度も非常に高いです。

また、100パーセント間接販売で行っており、パートナー企業が全国をカバーしています。

1万社に迫る導入企業

平野:販売パートナーとして、NTTデータグループやSCSK、パナソニック系、NECといった当社以上に有名な会社にご協力いただいていることがシェアNo.1の理由です。現在、導入企業は1万社に迫る9,800社超となっています。

坂本:前回は確かもっと少なかったと思います。

平野:導入企業はどんどん増えており、1万社に迫っている状況です。

API時代の要となるWarp

平野:クラウドの時代になり、システムをつなぐことはかなり当たり前になってきています。その方法としてAPI(Application Programming Interface)を使っており、これによりつなぎ口ができるのですが、ここにつなぐためにはプログラミングが必要です。それをノーコードでつなぐことができるのが「ASTERIA Warp」の特徴で、これから出てくるいろいろなクラウドソフトやサービスも、ノーコードでどんどんつないでいくことができます。

坂本:現在は、どちらかと言いますとクラウド化された状況のほうが御社の「ASTERIA Warp」が活きてくるのでしょうか?

平野:そのとおりで、より広がります。

特に中堅・中小企業では、これまでどこにもつながっていないコンピューターが多かったと思いますが、クラウドでより多くの企業につなぐ価値を提供できることになります。

坂本:導入社数について、これまでは大手が中心だったと思いますが、ここ数年は中小企業の数も増えているのでしょうか?

平野:増えてきています。

坂本:クラウドを使える中小企業は5万社から20万社ぐらいあると思いますが、その範囲で売ることができるということですね。

平野:おっしゃるとおりです。

iPaaS市場への布石

平野:クラウドへのアプローチをさらに展開しており、「ASTERIA Warp」を自前で持たなくてもクラウド上で使うことができるクラウドデータプラットフォームを、IIJとともに開始しています。国産クラウドのNo.1企業のIIJと、データ連携No.1の我々が組んで、クラウドのデータ連携も「お任せあれ」というかたちです。

Handbook X

平野:2つ目の製品が「Handbook X」です。こちらは2009年から展開していた「Handbook」をリニューアルしたものです。

10年以上通用するアーキテクチャ

平野:従来のクラウドは、センターのクラウドにサーバーがあり、そこですべてを処理します。一方で「Handbook X」は、当社の4つの製品で第1号となる自立・分散・協調型のまったく新しいアーキテクチャを採用しています。

従来のように、サーバーやクラウドがないと使えないものではありません。必要がない時にはつなぎ先を切ることができて、つながるときだけつなげられるような、これからの組織・社会に適したものとなっています。

10年以上通用するアーキテクチャ

平野:これからの時代はクラウドだけでなく、クラウド”プラス”モバイルがシステムの形態になり、モバイルがあることで個人やチームをパワーアップできます。現在、テレワークや本業以外のコミュニティでの副業、いろいろな場所で仕事をするワーケーションなどが基本の形態として増えており、従来のように会社に行って仕事をする形態から変わってきています。このような時代を見据えた製品が「Handbook X」です。

Handbook Xで適用領域を大幅拡大

平野:2022年2月にリリースした「Handbook X」は、新しいアーキテクチャにより、これから10年以上販売し続け価値を出せる製品です。実際には、自分の手元にあるものだけではなく、例えば、ネット上にある「YouTube」の映像やWebページに点在する情報など、さまざまな情報を共有し1ヶ所に集めて管理することができます。

Platio(プラティオ)

平野:3つ目の製品が「Platio(プラティオ)」です。こちらは誰でも簡単に自社の業務にフィットするモバイルアプリを作成できるノーコードアプリ作成ツールで、アプリを3日以内に作れるのが特徴です。この「3日以内」というのが肝です。

「Platio」を使うと、スライド左下の画面のように、出来上がりイメージを見ながらアプリを簡単に作ることができます。また、100種類以上のテンプレートをベースに自分がカスタマイズしたいところだけカスタマイズして作るため、3日で作ることができるのです。

さらに、一度アプリを作った後はどうしても変更を加えたくなります。そのようなときにも、フィードの文字の調整の他、地図・GPS情報を付け加えたり、写真・動画を入れたりといった改造・改善が自分の手元でできます。

「Platio」のアプリの作成・使用はAppleやGoogleの審査が不要です。なぜなら、「Platio」はアプリの中でアプリが動くスーパーアプリという形態を取っており、私たちが一括して承認を取っているためです。作っても改造しても、その日のうちに配布してその日のうちに使い始められます。

Platioの事例が続々登場

平野:導入企業も続々と増えており、京セラや島津製作所のような大企業から、熊本県にある小国町森林組合という、職員が70名しかいない非常に小さな自治体でも導入されています。

積極的な販促活動が奏功

平野:「Platio」を世の中に広めていくために積極的な販促活動も行っています。タクシーの広告やテレビCMにおけるマーケティングが奏功し、MRRがどんどん伸びています。

様々な業界で現場のDXに貢献

平野:「Platio」はさまざまな業界で現場のDXに貢献しており、特に机のないようなところのDXを進めていくことができます。

スライド左上の写真は杉の木の入札の現場で、これまで紙で行っていたものをスマートフォンで行っています。また、左下の写真のようなフォークリフトの現場では、業務報告をわざわざ事務所に行って書くのではなく写真を撮ってその場で送ることも可能です。さらに、大学でのデジタル教育などにも使われています。

Gravio(グラヴィオ)

平野:4つ目の製品が「Gravio(グラヴィオ)」で、こちらはさまざまな周辺機器をつなぐIoTです。例としては、センサーやアクチュエーターという、画面を表示したりライトをつけたりいろいろな動きをする装置をノーコードで作ることができます。

スライド右上がノーコードのロジック定義画面で、1行もコードを書くことなく機器を動かすことができます。こちらに関しては自社設計のセンサーとハブがあり、これを使ってエンジニアでなくても簡単にセンサーをつなぐことができます。

自動化、遠隔化に向けた事例

平野:実際に使われている事例をご紹介します。ぺんてるでは、オフィスのデジタル化、スマート化を進めている中で、「Gravio」を使ってさまざまなものを自動化しています。また、今注目を浴びている旅館業界では、インバウンドが戻ってくることで人手不足が叫ばれていますが、「Gravio」で自動化することでおもてなしの度合いを減らさずにいろいろな対応が可能となります。

時代の変化を捉えた事例

平野:サッカースタジアムでは、何十ヶ所もあるトイレの混み具合が手元のスマートフォンで一目で分かります。アシックスでは、アスリートの靴底の厚さを違反がないようにきっちり計る距離センサーとして使われています。

豊洲のやまもと眼科では、待合室の人数をカメラで数えています。従来のAI製品では、データそのものをクラウドに上げて判別しますが、そうしますと写真が漏洩した場合にプライバシーで大変なことになりますし、クラウドですのでアタックの危険もあります。

「Gravio」では、クラウドにデータを上げずに処理できるエッジコンピューティングという新しい仕組みを採用しており、このようなプライバシーの度合いが高いデータの処理では「8」という数字だけをクラウドに上げます。

坂本:すごいですね。やまもと眼科は実は私の子どもが通っているところで、ITが非常に発達している眼科だと思っていたのですが、裏側を今回知りました。

平野:このような秘密がありました。

増井麻里子氏(以下、増井):私も、バレーボールの試合でボールが当たって内出血した時に行ったことがあります。

坂本:意外と通っている人がいましたね。

ソフトウェア×デザインの重要性

平野:デザイン事業です。ソフトウェアにおいても、機能が重要な時代からデザインが重要な時代に変わってきています。そこで、私たちはデザインファーストのソフトウェアをどんどん作っていこうと、イギリスの会社のデザイン事業を買収しました。

デザインファーストになる理由は、ソフトウェアの形態が変わってくることです。企業は従来、情報システム部門が「Excel」で200や300ものチェックを行い、点数をつけたりマルバツをつけたりしてソフトウェアを選んでいました。

今や企業用ビジネスツールもクラウドサービスやアプリになっているため、情報システム部門が一生懸命チェックしなくても、サインアップすれば現場でその日のうちに使えるようになっています。

例えば「Excel」は関数が500個ありますが、実際に使う関数はだいたい決まっており、現場で全部をチェックすることはありません。これと同じように使う機能も決まっているため、ソフトウェアにも最低限の機能があればよく、それよりも使い勝手や簡単に使えるデザインがより重要になると思っています。

欧米に加え日本での事業を開始

平野:2022年11月に発表しましたが、いよいよ日本でも事業を開始します。決算発表会でもご説明したとおり、日本で初受注が取れ、幸先のよい状況となっています。

欧米に加え日本での事業を開始

平野:企業投資事業は、国内のみならず海外にも展開しており、海外の有望な企業に投資し利益を得てソフトウェアに先行投資を行う事業です。

私たちは投資を行うポイントとして、私たちの開発のフォーカスと同じ領域である「4D(Data、Device、Decentralized、Design)」に絞っています。投資委員会というその道のエキスパート4名で検討し、私たちの知見のあるところにのみ投資しています。

「4D」に基づき6社に出資

平野:具体的な投資先の1つはGorilla社で、こちらはAIに関する台湾の会社でしたが、2023年1月にイギリスのロンドンへ本社を移しました。

また、ステーブルコインという安定した仮想通貨・暗号資産を扱う日本のJPYC社、グラフェンという新しい素材を使うオーストラリアのImagine社、アメリカのWorkspot社、イーロン・マスク氏が率いるSpaceX社、その他1社の合計6社に出資しています。

2023年3月期第3四半期(4〜12月)

平野:2023年3月期第3四半期の決算概要をご紹介します。9ヶ月間の決算は増収増益となっています。売上収益は前年同期比19.8パーセント増、営業利益は前年同期比32.7パーセント増と大きく伸びている状況です。

売上収益と売上総利益(前年同期比)

平野:売上関連です。売上高はソフトウェア事業とデザイン事業の合計で、売上収益は前年同期比19.8パーセント増の25億4,700万円、売上総利益は前年同期比17.9パーセント増の21億400万円となっています。

営業利益と四半期利益(前年同期比)

平野:利益については、ソフトウェア事業とデザイン事業に加えて企業投資事業も含まれます。営業利益は前年同期比32.7パーセント増の12億9,100万円、親会社の株主に帰属する四半期利益は前年同期比37.7パーセント増の9億3,700万円となっています。

事業別:第3四半期実績

平野:各事業の状況です。ソフトウェア事業において、売上収益が第3四半期で初めて20億円を超えました。デザイン事業は米国を中心に増加し、前年同期比52.4パーセント増と大きく伸びました。

企業投資事業は前年同期比66.3パーセント増で、第3四半期に投資先の中で一番利益の大きいGorilla社の株価が下がった中でも、これほどの利益を確保している状況です。

増収の主な要因①

平野:増収の主な要因についてご説明します。1つ目は、ソフトウェア事業の強い伸びとニーズの継続です。クラウド化や法改正、さらにはコロナ禍からのオフィス回帰といった背景によってニーズが継続しています。

そして、ソフトウェアの売上増加は増収の要因にもなっています。当社はSI(システムインテグレーション)やカスタマイズ、導入支援といったものを一切行っていないプロダクトのみの会社であるため、ソフトウェアの利益が上がるとそのまま増益にもなるという構造です。

坂本:「ASTERIA Warp」が好調な理由について、前半でうかがいました。スライドに記載されている「法改正に伴うIT投資の拡大基調」についても、背景などを教えていただけたらと思います。

平野:こちらは大きく言いますと、デジタル化に関連した法改正です。内閣も「デジタル&グリーン」を掲げており、デジタル庁ができました。デジタル化に伴う法改正として、直近ではインボイス制度、その他改正電子帳簿保存法などがあります。いろいろなものが電子化されると、その電子化されたものを別のシステムにつなぐというニーズが生まれます。

坂本:そこで「ASTERIA Warp」が使われるということですね。

平野:おっしゃるとおりです。法改正によってニーズが増えていくため、どんどん改正してほしいと思っています。日本はデジタル化が本当に遅れており、世界デジタル競争力ランキングでは29位です。2022年からも1ランク後退しているように、デジタル化を進めないと国際競争力が落ちてしまいます。このような状況で「ASTERIA Warp」が貢献できるのです。

増収の主な要因①

平野:「ASTERIA Warp」は全体でも過去最高の売上ですが、内訳を見ると主に大規模システム向けのライセンス売上が前年同期比約18パーセント増となっています。

月額課金のサブスクリプションのCore売上は前年同期比約40パーセント増、サポート売上も第3四半期累計として過去最高の8億6,000万円を記録しています。社数は先ほど1万社間近とお伝えしましたが、具体的には9,879社となっています。

坂本:次の開示も楽しみにしています。

増収の主な要因①

平野:ソフトウェア事業では「Platio」が56パーセント増、「Gravio」が21パーセント増とその他のサブスクリプション製品も大きく伸びており、増収に貢献しています。

増収の主な要因②

平野:増収の2つ目の理由は、デザイン事業も前年同期比50パーセント超の増加率で大きく伸びていることです。こちらは特に米国のIT系の新規顧客からの売上が伸びています。

坂本:デザイン事業は企業のホームページやシステムのデザインを行っているとのお話でしたが、主要な事業内容などを詳しく教えてください。

平野:ホームページのデザインも行っていますが、より動的なECサイトのデザインやアプリも実施しています。特にDXという観点では、これまで大企業では事業部ごとに勝手にデジタル化を行っているような状況で、使い勝手や考え方も異なっていたため、そのようなところを統一して全体の戦略を立てるところまで実施しています。

そのため、当社のデザイン事業はデジタルデザインの戦略コンサルティングを提供しており、経営戦略コンサルティングのデジタルデザイン特化版として、非常に上流のコンサルティングを提供していると言えます。

坂本:大企業の仕組みをある程度わかっていないとできないものですね。大きい企業のほうが得意なのでしょうか?

平野:おっしゃるとおり、大きな企業を得意とする事業です。

増益の主な要因

平野:増益の主な要因です。ソフトウェアも増益の要因でしたが、それ以上に増益の要因としては企業投資事業があります。先ほどもお伝えした6社のうち2社の企業価値が大きく向上し、Gorilla社が約9億9,000万円、SpaceX社が約1億9,000万円の貢献となっています。

Gorilla社は第3四半期で株価が少し落ちたため、第2四半期の計上よりは低くなっていますが、これだけの利益を確保している状況です。

増益の主な要因 - トピック

平野:SpaceX社について、日本では打ち上げロケットがよく知られていると思いますが、私たちが着目しているのはSpaceX社が行っている分散型インターネットです。

私たちのフォーカス領域の「4D」の中の1つであるDecentralizedは分散・非中央集権という意味です。分散型インターネットは、スライドの絵のように地球上に何万もの衛星を打ち上げ、そこからインターネットを使えるようにします。よくいわれる人口カバー率が無意味になる時代です。

これにより、どこでもインターネットが使用可能になります。こちらは第3四半期に日本でもサービスを開始しており、私も使い始めています。

販売管理費:推移と内訳

平野:経費についてお話しします。販管費はスライドの棒グラフのとおり大きく増えています。内訳としては、「中期経営計画STAR」をもとに人件費および広宣販促費の先行投資を実施しています。広宣販促費については、2022年と2023年が中計の第1・第2年度で、第3年度に向けて大きく伸ばすために特別予算を入れています。

増井:広告について、今回の第3四半期はかなり増えるとのお話でしたが、主にどの製品に使っているのでしょうか?

平野:一番使っているのは「Platio」です。「ASTERIA Warp」は大企業から始まりましたが、「Platio」は現場のDXを進めています。情報システムがないような企業でも使うことができるため、日本中の企業や自治体に幅広く知っていただけるよう、テレビ広告やタクシー広告を実施しています。

坂本:タクシー広告はよく見ます。

平野:そのようなところで、今まで「ASTERIA Warp」などでは行っていなかったマスマーケティングを実施しています。

坂本:特別予算はどのようなところに振り分けたのでしょうか?

平野:3つの事業ポートフォリオのうち、2022年と2023年は企業投資事業において大きな営業利益が出ています。その利益を、もともとの私たちの目論見どおりにソフトウェアの先行投資に回している状況です。このような企業投資事業とソフトウェア事業をリンクさせる先行投資のサイクルを作っているのは、日本でソフトウェア事業を行っている会社の中ではおそらく当社のみだと思います。

特別予算は2022年と2023年のみで、2024年は中計の第3年度として特別予算なしで利益を出していく計画です。

売上収益から営業利益までの内訳

平野:売上収益から販管費や投資評価益などを引いた営業利益は、企業投資における利益により増加しています。スライドのように売上収益・営業利益ともに2022年よりはっきりと伸びている状況です。

営業利益/税引前利益/四半期利益

平野:営業利益・税引前利益・四半期利益についてです。スライドの金融損益等は主に為替差益、四半期利益は税金および非支配持分です。最終利益は9億3,700万円となっています。

経営指標の推移(前年同期比)

平野:経営指標です。スライドに記載の項目は、私たちが経営に際してチェックし、投資家のみなさまにも毎回ご報告している指標です。当社は売上総利益が非常に高く、第3四半期の売上総利益率は82.6パーセントとなっています。ソフトウェア事業においてはなかなか見ることのない高い数字かと思います。

営業利益率は企業投資事業の利益があるため、お金を大きく使っても50.7パーセントです。継続型売上はリカーリングやサブスクリプションで、売上率は50パーセント以上となっています。海外売上はデザイン事業が伸びたため、売上率18.3パーセントと伸びている状況です。

財政状態計算書

平野:財政状態計算書についてです。日本基準では貸借対照表、英語で言いますとバランスシートです。自己資本比率が70パーセント以上あり、非常に健全な財務状況となっています。

中期経営計画

平野:会社全体のことを少しご紹介します。現在、3ヶ年計画の中期経営計画の第2年度であり、来年度が最終年度となります。

その柱として挙げているのが「STAR」です。Sは「Sustainable」で、持続的貢献に伴う持続的な成長、Tは「Top-line」で、ストレートに言いますと売上です。Aは「Acquisition」で、企業そして技術の買収によりスピードを手に入れていくこと、Rは「Refine」で、今持っているものをどんどん磨き続けていくことです。

これに沿っていくつもの活動を行っており、中でも私たちは「Sustainable」を非常に意識しています。「Sustainable」なことを付け足しで行うのではなく、私たち自身の活動を「Sustainable」にしていくということです。

脱炭素/地域創生等社会課題への貢献

平野:例えば、2022年はCO2排出量実質ゼロを目指すための脱炭素型株主総会を実施しました。こちらはシステムを駆使し、ブロックチェーンを使った最先端の株主総会で、完全バーチャルで行っています。さらに、ウェルビーイングやワーケーションなどの、これからの新しい働き方に積極投資しながら、生産性向上との両立に取り組んでいます。

人材活用推進と獲得競争力強化

平野:働き方のポイントとしてもう1つ取り組んでいることが、オフィスの5次元化です。コロナ禍前は、私たちも他の企業と同じようにオフィスに全員の机があり、全員が出社して仕事をするかたちでした。ところが2020年にコロナ禍に入り、政府から社員の7割から8割をテレワークにするようにと要請が出されたため、私たちもすぐに自宅などでテレワークをするように切り替えました。

今、多くの企業がオフィスワークに戻している中で、私たちはテレワークをさらに進めており、オフィスへの出社率はまだ1割を切っています。テレワークにはさまざまな形態が含まれます。「リモートオフィス」としてホームオフィスや、自宅近くのカフェで働くこと、あるいは「サテライトオフィス」としてWeWork、Regus、OFFICE PASSと契約しているので、北海道から沖縄まで全国700ヶ所以上のオフィスも無料で使用できます。

さらに、スライド一番上の「バーチャルオフィス」はインターネット上のオフィスです。「oVice」というソフトを使い、アバターを用いて気軽に声を掛けられる仕組みです。このように、自分の働きたい場所で働くことができます。

このような新しいことをするとコスト増になるのではないかと心配される方がいらっしゃると思いますが、これができていることには、私たちが「センターオフィス」と呼んでいる従来のオフィスに秘密があります。

都内の品川区にあった本社オフィスを渋谷区に移転し、広さを4分の1に縮小しました。個人の机はまったくなく、私の机もありません。都心でオフィスを4分の1に縮小すると、4分の3のお釣りがきますから、こちらをバーチャルオフィスの契約料や全国のサテライトオフィスの契約料に充てています。

さらに、リモートオフィスには法人・個人ともに毎月1万5,000円の補助を出しています。初期は机や椅子の購入費に充てましたが、電気代・ガス代などの光熱費へ充ててもかまいませんし、家で仕事をするせいで体が鈍るためジムへ行くなど、なにに使ってもいい補助金を3年間出し続けています。

センターオフィスが4分の1になったため、ここまでしてもまだお釣りがくるのです。

人的投資の拡充:軽井沢リゾートオフィス

平野:加えて、先ごろ軽井沢に「リゾートオフィス」を作ることを発表しました。こちらはカルチュア・コンビニエンス・クラブの、Karuizawa Commongroundsという書店やカフェなどいろいろなテナントや学校のある施設の一角に働く場所を作りました。軽井沢に会社や施設を作るというと保養所というイメージがありますが、私たちの場合はオフィスで、働きに行く場所です。

坂本:1軒なり1棟が御社のリゾートオフィスというかたちになるのですか?

平野:全部がリゾートオフィスです。これは、今いる私たち自身が働きやすくなり、生産性が上がるというだけではありません。これから世の中は人材獲得競争がより激しくなります。その中で私たちは優秀な人たちに来てもらうことを考えており、特にグローバルを意識しています。

軽井沢は、IT業界ではビル・ゲイツ氏の別荘もあるように、海外の方にもよく知られている場所です。そのような海外の方にとっても魅力的な場所に、「森の書斎」というコンセプトで働く場所を作っています。

SDGs 推進

平野:私たちはこのようなことをはじめとしてSDGsそのものを推進しており、17項目あるうちの11項目をカバーしています。

SDGs への取り組み

平野:例えば、ジェンダー平等やダイバーシティの推進をしています。

SDGs への取り組み

平野:SDGsの15番に当たる、森林保全や脱プラスチックの推進もしています。

物価上昇率を上回る賃上げ

平野:昨今、企業経営の関心事としてニュースでもよく取り上げられている賃上げについてです。物価高の状況も相まって、岸田総理大臣も賃上げに言及していますが、当社でも平均給与額を7パーセント上げるという目標を公表しました。

坂本:御社はもともと平均給与額が高いですよね。

平野:パーセンテージが高いと、もともとの給与額が低かったのではないかと思われるかもしれませんが、スライドに記載のように、低くはない現在の平均給与額をさらに7パーセント上げます。こちらは物価高への対応だけでなく、人材獲得力の強化にもつながります。グローバルに見ると日本の給料は本当に安いため、競争力を強化していくための賃上げです。

アステリア(プライム市場:3853)

平野:本日のまとめです。決算の状況については、第3四半期はソフトウェア事業、デザイン事業ともに好調で約20パーセントの大幅増収でした。利益についても、Gorilla株という非常に大きな要素が下がりましたが、それでも増益となっています。

中期経営計画「STAR」の達成に向けても、しっかりと先行投資を行っています。さらに、長期的視点で人的投資とESG経営を推進しています。

質疑応答:企業投資の基準や考え方について

坂本:企業投資事業について、Gorilla社の株価下落の影響があっても利益が確保されています。御社は本業のシステムと絡むようなかたちで企業投資も行っているとのお話でしたが、企業投資において、企業を選定する際の基準や考え方のようなものがあれば教えてください。

平野:スライドに記載している「4D」が私たちの基準です。Data、Device、Decentralized、Designは私たちの研究開発のテーマとまったく同じで、この4つの領域にはエキスパートがいます。投資委員会メンバー以外にも、研究開発としてその領域の技術を見ている人やコーディングをしている人がいて、自分たちの得意な領域だけを行っている状況です。

坂本:社内に詳しい人がいて「ここの会社はすごい」と一目置いている企業への投資を考えるということですね。

平野:そのとおりです。実際、先ほどから話題になっているGorilla社は、ソースコードも見せていただいています。普通の投資会社ではソースコードなどは見ませんが、そのようなところが私たちの特徴です。

増井:今回、Gorilla社の株価が下がったにもかかわらず業績が出たということですが、それは他の投資案件が好調だったなどの理由があるのでしょうか?

平野:第2四半期に上場した際に大きく価値が上がり、第3四半期に下がったため、トータルで上がっているということです。

増井:今後は、急に大きく利益が出ることは考えにくいのでしょうか?

坂本:株価次第ではないですか?

平野:今は中間報告ですが、こちらの利益は積み上がらず、3月末の株価次第と考えています。私たち自身はもう上場したため、できるだけ早く現金化するという方針です。

質疑応答:株の現金化について

坂本:「投資ステージ支援の有無について、自社での買収も検討するのか、Gorilla社株を持ち続けるのか、またIPOの全量売却はしないのでしょうか?」というご質問です。現金化のイメージを教えてください。

平野:私たちは、企業投資でテキサスにファンドを持っており、ファンドは基本的にリターン狙いです。Gorilla社について私たちは筆頭株主で、10パーセント以上の株を持っています。1年間のロックアップにより2023年7月までは株を持っておく約束ですので、それ以降のできるだけ早い時期に現金化していこうという方針です。

質疑応答:アスエネとのパートナー契約について

坂本:「先日発表されたアスエネとのパートナー契約について、どのような経緯で脱炭素化経営の推進をサポートするようになったのでしょうか? また、今後この事業が占める割合と方向性を教えてください」というご質問です。

平野:新しいニュースをウォッチしていただきありがとうございます。非常にホットなニュースで、この資料にも入れ込めませんでした。

アスエネは脱炭素の見える化・報告クラウドサービス「アスゼロ」を提供しています。今後、特に上場企業は脱炭素に関わる報告義務が出てくるのですが、サプライチェーンも含めて炭素の削減量や排出量の情報収集をする仕組みの構築は非常に大変です。メールや電話、FAXでは対応できません。

これらの情報はそれぞれの会社が管理していますが、連結会計のように炭素に関するデータをつなぐことで、炭素の使用量・削減量をできるだけ早く正確に出そうと、当社と連携しています。こちらはアスエネのほうからお話をいただいて行っています。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:投資事業を開始したいきさつについて教えてください。

回答:当初はアステリア本体での投資を行っていましたが、ソフトウェア事業の成長をさせる位置づけとして2019年に投資専門子会社「Asteria Vision Fund」を組成し、ファンドからの出資を行っています。

<質問2>

質問:今後、日本でも投資事業を開始するのでしょうか?

回答:現時点では、投資事業は米国テキサス州のAsteria Vision Fundから、世界中の企業を対象に投資を行っています。今後の予定については、開示するべき事柄が発生した際に開示します。

<質問3>

質問:ワーケーションについて詳細を知りたいです。どこでどのように、何人くらいが参加されたのですか?

回答:当社では秋田県(2017年)、シンガポール(2019年)、軽井沢(2020年)などコロナ前からもワーケーションの試行に取り組んでいました。コロナ禍以降、新たな働き方を推進する目的として、熊本県や沖縄県などでもワーケーションを実施しています。

毎回約5名くらいの社員がチームとなって参加し、地域住民や事業者のみなさまとの交流を通じて、地域課題の発見やその解決に向けたディスカッションなどにも取り組んでいます。

<質問4>

質問:リゾートオフィスの活用割合は?

回答:現在、長野県軽井沢町にリゾートオフィスを建設中で、6月竣工、7月稼働開始を予定しています。当社のパートナー企業や地域住民・事業者のみなさまとの交流や意識啓発の場としても積極的に活用し、自治体や地元企業のDXを含めたICTの利活用を推進する方針です。

<質問5>

質問:従来型のセンターオフィスは4分の1に縮小・削減されたということですが、数字・金額にはできない効果も表れたのですか? 従業員間のコミュニケーションの機会が逆に減ったのではないかと懸念します。

回答:当社ではオフィスの5次元化を進めたことにより、社員の生産性とウェルビーイングの向上を実現しています。センターオフィスの縮小は出社の禁止を意味するのではなく、必要な時に必要な人が集まる環境を整備しています。

さらに、バーチャルオフィスをはじめとするサービスやツールへの投資も実施し、オフィスで対面しなくてもコミュニケーションが快適にとれるように取り組んだ結果、新たなコミュニケーション機会の創出につながり、業績も向上しています。

<質問6>

質問:Gorilla社株を持ち続ける背景は?

回答:2023年7月まで1年間のロックアップ(売却不可の期間)があり、この期限が過ぎたら利益が確保できるタイミングで売却を検討する予定です。

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