相場展望3月23日号 米FRBは「金利引上げ」継続で、景気後退は不可避 日本株は4月にかけて「底堅い」展開を予想
2023年3月23日 11:01
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)3/20、NYダウ+382ドル高、32,244ドル(日経新聞より抜粋)
・欧州金融機関の経営不安から金融システムが不安定化するとの懸念が和らいだ。先週末にかけて大きく売られていた景気敏感株が買い直され、相場を押し上げた。
・経営難に陥っていたスイスの金融大手クレディ・スイスを、スイス同業のUBSが買収することで合意した。世界的な金融危機につながるリスクが後退したのと見方が広がった。米連邦準備制度理事会(FRB)など日米欧の6中央銀行が協調し、市場へのドル供給を強化すると発表したのも買い安心感を誘った。
・金融システムの不安定化が景気を冷やすとの見方が後退し、機械のハネウェルや建機のキャタピラーなど景気敏感株への買いが目立った。金融のゴールドマンサックスとJPモルガンチェースも上昇した。
・米長期金利が上昇し、相対的な割高感が意識された高PER(株価収益率)のハイテク株は上値が重く、ソフトウェアのマイクロソフトは下落した。
・地域銀行株が全体的に買われる中、資金繰り難が伝わっていたファースト・リパブリックバンクは▲47%安と急落した。新株発行による資金調達を計画していると報じられ、資本が毀損しているとの懸念を誘った。
・電気自動車のテスラと交流サイトのメタが上昇、追加人員削減方針が伝わった通販のアマゾンは業績悪化を警戒した売りに押された。
【前回は】相場展望3月20日号 資源価格は世界経済後退を示唆、株は売られやすい局面 日本株は「売られ過ぎ」示すも、警戒局面
2)3/21、NYダウ+316ドル高、32,560ドル(日経新聞より抜粋)
・米金融当局が金融システム不安の拡大防止策を続けるとの観測が強まり、市場心理の改善につながった。金融株や景気敏感株など幅広い銘柄が買われた。
・イエレン米財務長官が3/21朝、米国銀行協会のイベントで「中小銀行が預金流出に陥るようなら預金保護が正当化される」と述べた。「状況は安定しつつあり、米国の銀行システムは健全性を保っている」とも指摘した。
・市場では「必要となれば、金融当局が緊急対応に動くとの見方が投資家に安堵感をもたらした」との声が聞かれた。
・金融システムが不安定化するとの懸念が和らぎ、金融株への買いが目立った。JPモルガンチェースとゴールドマンサックスが+3%高となった。NYダウ構成銘柄ではないが、ファースト・リパブリックバンクが+30%高で終えるなど、地域銀行株も軒並み買われた。
・銀行危機が景気を冷やすとの警戒も後退し、景気敏感株や消費関連株も買われた。クレジットカードのアメリカン・エキスプレスやスポーツ用品のナイキ、建機のキャタピラーが高い。米原油先物相場が上昇し、石油のシェブロンは+3%上げた。自動車のテスラが+8%高、ネット検索のアルファベットやネット通販のアマゾンも買われた。
・買いの勢いが弱まり、NYダウは伸び悩む場面もあった。米連邦準備制度理事会(FRB)は3/22の米連邦公開市場委員会(FOMC)で+0.25%の利下げを決めるとの見方が多い。ただ、金融システム不安の高まりを受け、FOMCメンバーの政策金利見通しやパウエル議長の記者会見の内容を見極めたい市場関係者が多い。
3)3/22、NYダウ▲530ドル安、32,030ドル(日経新聞より抜粋)
・3/22に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で+0.25%の利上げを決めた。利上げが金融システム不安につながるリスクがくすぶる中、従来の引締め姿勢を維持した。景気悪化もリスクが高まったとの見方から、売りが優勢となった。
・米連邦準備制度理事会(FRB)はFOMCでは政策金利を+0.25%引上げ、4.75~5%とすることを決めた。四半期に1度公表する政策金利見通しでは、2023年末時点で5.1%と前回の昨年12月の予想から変えなかった。パウエル議長は記者会見で「委員らは年内の利下げを基本シナリオとしていない」と述べた。
・パウエル議長は量的引締め(QT)についても「変更すべき兆候はない」と指摘。金融システム不安が高まる中で、引締め姿勢を和らげるとの観測が一部にあっただけに、投資家の手仕舞い売りを誘った面がある。株式相場はパウエル議長の記者会見が終了した後に下げ幅を広げた。
・景気敏感株や消費関連株への売りが目立った。金融のJPモルガンチェースやホームセンターのホームデポ、建機のキャタピラーが売られた。決算発表したスポーツ用品のナイキは大幅安だった。
●2.米国株:パウエルFRBは利上げ継続で、「リセッション」避けられず
1)金(ゴールド)は、不安感の表れで、安全な逃避先として資金が流入している。
・金価格の推移 2/24 3/17 3/22
1,817ドル 1,993 1,966
・金価格は、3月の米シリコンバレー銀行の破綻後、安全な逃避先を求める資金の流入で急騰している。
・銀行部門への懸念が根強く、3/20は一時2,000ドル超となり、2022年3月以来の高値になった。
2)金融システム不安定化の懸念後退で株価上昇
・ファースト・リパブリックへの預金300億ドル(約4兆円)を資本注入への転換で協議(WSJ紙)
・UBSによるクレディ・スイスの買収合意を受け、金融混乱の収束期待で株価は3/20値上がり。
・日米欧の6中央銀行が協調し、市場へのドル供給強化発表が市場に安心感をもたらす
3)米リセッション懸念で利上げ観測が後退し、株価は3/21に大幅上昇した。
4)中央銀行の役割
・インフレとの戦い
・金融の安定を守る
⇒ 米連邦準備制度理事会(FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)で3/22、インフレ抑制のため、
・政策金利を+0.25%引上げ
・年内の利下げに触れず
・量的金融引締め(QT)の継続を決めた。
5)米FRBの金利引上げ決定で、米景気後退への懸念が増すことになる。インフレ退治のためには、「金利引上げ」と「量的引締め」は必要である。結果として、米景気後退(リセッション)は避けられない。問題は、「その深さ」であろう。
●3.イエレン米財務長官、「全面的な」預金保険の提供を検討せず=議会上院証言(ブルームバーグ)
●4.米利上げ継続に疑念広がる、今の利上げサイクルで初、銀行破綻で状況複雑に(ブルームバーグ)
●5.FRBはQT(量的引締め)継続へ、銀行がストレス直面でも=ダドリー前NY連銀総裁
1)3/22のFOMCでは金利据え置きを支持する(ブルームバーグ)
●6.銀行巡る混乱、投資家心理に大打撃=バンク・オブ・アメリカ調査(ロイター)
●7.ゴールドマン、原油相場予想を下方修正、年内100ドルもはや見込まず(ブルームバーグ)
1)(1)銀行セクターを巡る懸念 (2)リセッション(景気後退)の見通しが、中国の需要急増を打ち消すほどの影響を及ぼす、というのが理由。
●8.ガンドラック氏、クレディSの債券保有者を非難、リスク管理方法学べ(ブルームバーグより抜粋)
●9.クレディ・スイスが発行の2兆2,000億円の特定社債が無価値に=スイス金融当局(NHK)
1)金融市場では損失が広がることに警戒感が強まっている。
2)スイス金融最大手のUBSは、クレディ・スイスを4,200億円で買収に合意。
3)クレディ・スイスの株価は3/20に▲60%下落、金融不安が再燃(Forbes Japan)
●10.米アマゾン、追加で9,000人削減へ、今年1月に1万8,000人削減(NHKより抜粋)
1)景気減速への懸念が高まる中、米国ではIT企業を中心に人件費などのコストを減らす動きが相次いでいる。
●11.米2月中古住宅販売、13カ月ぶりに増加、価格は▲0.2%と2012年2月以降の下げ
1)年率換算で前月比+14.5%増の458万戸。(ロイター)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)3/20、上海総合▲15安、3,234(亜州リサーチより抜粋)
・外部環境の不透明感が重石となる流れ。
・欧米の金融システム不安が依然としてくすぶっているほか、今週開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が気懸かり材料となった。米金利動向によっては、世界経済の成長が鈍化すると懸念されている。もっとも、下値は限定的だった。
・中国の景気テコ入れスタンスを支えに、指数は小高く推移する場面もみられた。
・中国人民銀行(中央銀行)は3/17、預金準備率を▲0.25%引下げると発表した。3/27付で実施する。
・朝方公表された3月の最優遇貸出金利に関しては、予想通り1年物と5年物がそれぞれ7カ月連続で据え置き。ただ、市場には、特に住宅ローン金利の指標となる5年物金利について、今年上半期中の引下げ余地が残るとの見方も出ている。
・業種別では、通信・ネットワーク関連の下げが目立ち、医薬品も安く、酒造・食品も冴えない。半面、ITハイテクは物色され、銀行・自動車・インフラ建設関連が上昇。
2)3/21、上海総合+20高、3,255(亜州リサーチより抜粋)
・海外株高が支える流れとなった。
・昨夜の欧米市場では、過度な金融システム不安が後退し、主要株価指数が軒並み上昇している。また、内需の弱さが指摘される中、当局の景気テコ入れ策に対する期待感も高まる状況だ。
・中国人民銀行(中央銀行)は3/17、預金準備率を3/27実施で0.25%引下げると発表。ただ、当局は緩和スタンスを強めているが、流動性はタイトなままで、上値は限定的。3/21の中国銀行間市場で翌日物レポ金利は、この2年内の最高水準で推移している。
・市場の一部からは、さらに景気対策が打ち出される、との見方も流れた。
・業種別では、消費関連の上げが目立ち、医薬品も高く、素材・半導体なども買われた。半面、銀行は冴えず、エネルギー・公益・海運が売られた。
3)3/22、上海総合+10高、3,265(亜州リサーチより抜粋)
・中国景気の持ち直し期待が相場を支える流れとなった。
・内需の弱さが指摘される中、当局が景気テコ入れスタンスを強めていることが引続き好感されている。
・米金融システム不安が後退し、昨夜の海外市場で主要株価指数が軒並み上昇したこともプラスだ。ただ、上値は重い。
・ロシアや台湾、半導体などを巡り、米中対立の警戒感がくすぶっている。米商務省は3/21、国内半導体企業に対し、中国やロシアなどとの取引を規制する法案の詳細を公表した。
・業種別は、ITハイテクの上げが目立ち、医薬品もしっかり、エネルギー・金融が上昇。半面、発電は冴えない。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)3/20、日経平均▲388円安、26,945円(日経新聞より抜粋)
・米金融機関の経営破綻をきっかけに、米国の景気悪化の懸念が強まっている。東京市場は明日3/21が祝日とあって、幅広い銘柄で手仕舞い売りが優勢となり、終値で心理的な節目の27,000円を下回った。
・米銀シリコンバレーバンク(SVB)の破綻に端を発した混乱で、銀行が融資を抑制して景気悪化が早まるとの警戒が強まっている。前週末の米株式相場が下落した流れを、東京市場も引き継いだ。3/20の欧米の株式相場が下落するとの警戒から、祝日を前に保有株を売却して、持高を整理する投資家が多かったようだ。
・経営不振に陥っていたクレディ・スイスについて3/19,スイスの金融大手UBSが買収で合意したと伝わったことが支えとなった。日銀と米連邦準備制度理事会(FRB)など6中央銀行が金融機関の資金繰りの目詰まりを回避する目的で、協調してドル供給を強化すると発表したこともあり、朝方は日経平均が上昇する場面もあった。
・三菱UFJ・三井住友FGは朝方には上昇する場面もあったが下落して終えた。レーザーテックが大幅安、郵船の下げも目立った。一方、日本電産・エプソン・コニカミノルタが上昇した。
2)3/21、祝日「春分の日」で休場
3)3/22、日経平均+520円高、27,466円(日経新聞より抜粋)
・欧米の金融システムへの不安が和らぎ、金融株や景気敏感株を中心に買いが広がり、上げ幅は1/18以来の大きさだった。
・イエレン米財務長官は3/21、中小銀行が預金流出に陥れば当局による預金保護が正当化されるとの認識を示した。金融システム不安の防止に向けた対策への期待が強まり、3/21の米株式市場では銀行株が軒並み上昇した。
・海外投資家を中心に心理が改善し、東京市場でも三菱UFJや野村・第一生命など金融株が幅広く買われた。
・午後に入ってからも株式指数先物への買いが続き、現物株に波及した。欧米の金融システム不安を背景に下値警戒感から先物を売っていた短期目線の投資家の買戻しが活発化したとの見方があった。
・東エレク・ダイキン・信越化・TDK・キーエンスが買われ、楽天が+5%上昇した。半面、三菱地所・三井不・住友不など不動産株が安く、味の素・HOYAも下落した。
●2.日本株:日本株は、しばらくは「底堅い展開」を予想
1)クレディ・スイスが発行のAT1債を日本の投資信託で5億5,000万円、影響は限定的。
2)日本株の個別銘柄の多くが、年初からの上昇局面も3/9がピーク⇒下洛へ
3)日本株は底堅い環境へ
・3月配当権利取りの買い。
・4月は海外年金資金が流入し、現物株買いにつながる経験則がある。
●3.トヨタ、タイのモーターショーでEV試作車を出展、中国メーカーも展示(HNK)
■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)
・8113 ユニチャーム 業績堅調。
・8358 スルガ銀行 業績好調。
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