【どう見るこの株】フージャースホールディングスは上値試す、24年3月期以降も収益拡大基調
2023年3月22日 10:48
フージャースホールディングス<3284>(東証プライム)は不動産関連事業として新築マンション・戸建分譲の不動産開発事業、シニア向け新築マンション分譲・管理・運営のCCRC事業、不動産投資運用の不動産投資事業、マンション管理およびスポーツクラブ・ホテル運営の不動産関連サービス事業などを展開し、地方中核都市の比率が高いことを特徴としている。23年3月期は不動産開発事業が牽引して増益予想としている。第3四半期末時点の分譲マンション契約率は95.4%と順調であり、通期ベースで好業績が期待できるだろう。さらに積極的な事業展開で24年3月期以降も収益拡大基調だろう。株価は水準を切り上げて18年5月以来の高値圏まで上伸する場面があった。その後は地合い悪化の影響で反落したが、高配当利回りも評価材料であり、目先的な売りが一巡して上値を試す展開を期待したい。
■新築分譲マンション等の不動産関連事業を展開
不動産関連事業として、新築マンション・戸建分譲の不動産開発事業、シニア(健常者)向け新築マンション分譲・管理・運営のCCRC事業、不動産投資運用の不動産投資事業、マンション管理およびスポーツクラブ・ホテル運営の不動産関連サービス事業、その他事業(PFI事業マネジメントなど)を展開している。
主要ブランドは新築分譲マンション「デュオヒルズ」シリーズ、新築コンパクトマンション「デュオヴェール」シリーズ、シニア向け分譲マンション「デュオセーヌ」シリーズである。営業エリアは、三大都市圏(首都圏、近畿圏、中部圏)および中核都市圏(三大都市圏以外の政令指定都市、県庁所在地、人口20万人以上の地方中核都市)を中心に展開している。
創業以来、郊外を中心に大規模・高品質なマンション分譲を展開しており、地方中核都市の比率が高いことを特徴としている。17年3月期~21年3月期の新築分譲マンション供給戸数の割合(コンパクトマンション除く)で見ると首都圏が38%、地方都市が62%(人口50万人以上が17%、人口10~50万人が39%、人口10万人未満が6%)となっている。人口30万人以下都市の需要を見極めるマーケティング力、企画・開発力を支える人材力、法定再開発等における行政との連携力、グループ各部門の連携力などを強みとしている。
22年3月には子会社フージャースリートアドバイザーズが、居住用施設を中心に投資・運用するフージャースプライベートリート投資法人(私募リート)の運用を開始した。22年12月には子会社フージャースコーポレーションが、熊本県・宮崎県を中心に分譲マンション「レクシア」シリーズを開発・分譲するホームステージを子会社化(同社の孫会社化)した。
22年3月期のセグメント別実績は、不動産開発事業の売上高が365億20百万円、営業利益(調整前)が26億86百万円、期中引渡数が902戸(分譲マンションが811戸、戸建が91戸)、CCRC事業の売上高が207億81百万円、営業利益が25億02百万円、期中引渡数が484戸、不動産投資事業の売上高が169億48百万円、営業利益が11億23百万円、期中引渡数が9戸および18棟、不動産関連サービス事業の売上高が66億59百万円、営業利益が2億71百万円、その他事業の売上高が78百万円、営業利益が20百万円だった。不動産関連サービス事業のマンション管理戸数(シニア向け分譲マンション除く)は1万7771戸、CCRC事業のシニアマンション運営戸数は1858戸だった。
なお単年度業績および四半期業績は物件引渡数によって変動する傾向がある。分譲マンションの引渡は第4四半期(1月~3月)に集中する傾向が強い。
■中期経営計画
中期経営計画(21年5月策定、対象期間22年3月期~26年3月期の5カ年計画)の目標数値には、最終年度26年3月期の経常利益100億円、親会社株主帰属当期純利益65億円、ROE15%以上、D/Eレシオ2.0倍程度維持を掲げている。株主還元方針は配当性向40%以上かつ自己資本配当率(DOE)4%以上を掲げている。DOE導入により、業績連動の利益還元を維持しつつ、配当額の下方硬直性を向上させることで株主還元を強化する方針だ。
基本戦略としては、創業以来の強みを活かしながら、地方およびシニア分譲マンションを核とする「地方・シニア・富裕層」戦略を踏襲するとともに、利益率の改善とバランスシートの効率的活用により、安定的な収益成長と財務健全性維持の両立を図る方針としている。そして、主力の不動産開発事業に続く柱としてCCRC事業と不動産投資事業を強化するとともに、海外も次の柱候補として成長を模索する。売上面では過度な規模拡大を追わず、最終年度売上高は920億円程度の計画としている。
さらに事業戦略とESG戦略の融合として、地方創生、超高齢化社会、多様性といった社会課題解決に貢献することを目指す方針としている。21年4月にはサステナビリティ推進室を設置、21年12月にはサステナビリティ委員会を設置、22年4月には代表2名体制へ移行、22年6月には監査等委員会設置会社へ移行した。
■23年3月期増益予想、24年3月期以降も収益拡大基調
23年3月期連結業績予想は売上高が22年3月期比0.6%増の800億円、営業利益が9.0%増の73億円、経常利益が14.2%増の65億円、親会社株主帰属当期純利益が36.9%増の42億円としている。配当予想は22年3月期比12円増配の48円(第2四半期末24円、期末24円)としている。連続増配予想で、予想配当性向および総還元性向は40.4%となる。
セグメント別売上高の計画は不動産開発事業が22.1%増の446億円、CCRC事業が34.6%減の136億円、不動産投資事業が10.9%減の151億円、不動産関連サービス事業が0.0%増の66億60百万円、その他事業が48.7%減の40百万円としている。なお海外事業ではベトナム案件「La Casa」の配当収益を営業外収入に計上予定(海外事業の収益化開始)である。
不動産開発事業の引渡数は合計178戸増の1080戸(マンションが223戸増の1034戸、戸建が45戸減の46戸)の計画で、売上総利益率の改善(マンションが21.5%で0.6ポイント上昇、戸建が16.3%で4.2ポイント上昇)も見込んでいる。CCRC事業の引渡戸数は174戸減の310戸の計画としている。期末完成在庫が100戸程度まで減少し、B/S負荷の高い状態が一巡する見込みとしている。運営戸数は84戸増の1942戸となる見込みだ。不動産投資事業の売却数は収益不動産が2棟減の8棟、アパートが1棟減の7棟の計画としている。自社開発賃貸レジデンスやアパートの売却を見込んでいる。不動産関連サービス事業では期末マンション管理戸数が約1万8800戸となる見込みで、ストック収益拡大が着実に進展する。
なお第3四半期累計は売上高が前年同期比9.9%減の413億52百万円、営業利益が15.4%減の29億28百万円、経常利益が12.7%減の23億93百万円、親会社株主帰属四半期純利益が0.5%減の15億62百万円だった。
前年同期比では、引渡数減少でCCRC事業が38.0%減収、不動産投資事業が23.4%減収だったため、全体として減収減益だったが、不動産開発事業はマンション引渡数増加で15.8%増収、不動産関連サービス事業はマンション管理収入やスポーツクラブ運営収入が堅調に推移して7.0%増収だった。
引渡数は不動産開発事業のマンションが162戸増の532戸、戸建が60戸減の4戸、シニアマンションが172戸減の218戸、不動産開発事業の収益不動産が1棟減の1棟、アパートが2棟減の4棟だった。不動産関連サービス事業の管理戸数は1万8287戸、CCRC事業の運営戸数は1942戸となった。
第3四半期累計は減収減益で、通期予想に対する進捗率も低水準の形だが、引渡が第4四半期に集中するため通期予想は据え置いている。第3四半期末時点の分譲マンション契約率(計画引渡戸数÷契約済戸数)は95.4%と順調であり、通期ベースで好業績が期待できるだろう。さらに25年3月期計上予定の土地仕入も推進している。積極的な事業展開で24年3月期以降も収益拡大基調だろう。
■株価は上値試す
株価は水準を切り上げて18年5月以来の高値圏まで上伸する場面があった。その後は地合い悪化の影響で反落したが、高配当利回りも評価材料であり、目先的な売りが一巡して上値を試す展開を期待したい。3月20日の終値は809円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS118円71銭で算出)は約7倍、今期予想配当利回り(会社予想の48円で算出)は約5.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS883円66銭で算出)は約0.9倍、そして時価総額は約299億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)