【どう見るこの株】岐阜造園は23年9月期2桁増益予想、さらに上振れ余地

2023年3月20日 10:50

 岐阜造園<1438>(東証スタンダード)は創業以来100年近い歴史を持つ造園緑化事業を展開し、成長戦略として造園業から景観産業への進化を目指している。自然と共存できる環境を作り、庭で自然とふれあうことで健康寿命を延ばすことができるガーデンセラピーの効果も期待され、カーボンニュートラルやSDGs関連として注目される。23年9月期は受注が高水準に推移して2桁増益予想としている。第1四半期が順調な進捗率だったことを勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。なお3月17日には配当予想の上方修正(第2四半期末に記念配当5円を実施)を発表した。株価は地合い悪化の影響で、戻り高値圏から急反落して安値圏に回帰の形となったが、好業績や配当予想上方修正を評価して出直りを期待したい。

■創業以来100年近い歴史を持つ造園緑化事業を展開

 1927年に植弥を創業し、1966年に株式会社に改組して商号を岐阜造園に変更した。その後2016年11月に名証2部へ上場、2022年4月に名証メインに移行、2022年9月に東証スタンダードに上場した。創業以来100年近い歴史を持つ造園緑化事業(建設業としての造園工事業)を展開している。グループは同社、連結子会社の景匠館、および持分法適用関連会社の晃連の3社で構成されている。営業エリアは中部および関西を中心に展開し、事業拡大に向けて関東エリアへの展開を強化している。

 造園の事業領域は、個人住宅・集合住宅から公共空間・大規模再開発まで「庭をつくる」「緑を育む」「景観をデザインする」と幅広い。植物が二酸化炭素を吸収して酸素を放出するため温室効果ガス削減や地球環境保全・復元に貢献するだけでなく、自然と共存できる環境をつくり、庭で自然とふれあうことで健康寿命を延ばすことができるガーデンセラピー効果も期待される。さらに、生き物との共生を目的としたビオトープ(生命=バイオbioと、場所=トポスtoposの合成語で、生物の生息空間のこと)工事や、森づくりによる環境再生工事なども行っている。このためカーボンニュートラルやSDGs関連として注目される。

 なお積水ハウス<1928>と2022年5月に業務提携し、2022年6月には資本提携した。そして2023年2月に積水ハウスが、十六銀行が保有する同社株式の全部、合同会社小栗達弘オフィスおよび小栗勝郎氏が保有する同社株式の一部を市場外相対取引で取得した。これによって積水ハウスが第1位株主(従前から保有する株式と合わせて議決権保有割合20.47%)となった。連携を一段と強化する。

■ガーデンエクステリアとランドスケープ

 カテゴリー分類は、戸建住宅・集合住宅向けにガーデン(庭)+エクステリア(外構)を提供して景観を構築するガーデンエクステリア部門、不特定多数の人が利用する公園・パブリック空間の造園緑化工事・メンテナンスを請け負うランドスケープ部門としている。なおガーデンエクステリア部門では一般顧客向けショールーム「バインズ」4店舗も展開している。ランドスケープ部門では、官公庁から委託を受けて市営公園全体の運営・管理を行う指定管理事業も行っている。

 22年9月期のカテゴリー別実績を見ると、ガーデンエクステリア部門は売上高が21年9月期比8.7%増の28億90百万円(売上構成比59.6%)で、売上総利益が3.7%増の7億89百万円(売上総利益率27.3%)だった。ランドスケープ部門は売上高が18.9%増の19億61百万円(売上構成比40.4%)で、売上総利益が16.0%増の5億28百万円(売上総利益率26.9%)だった。収益変動要因としては大型案件、材料・外注コスト、天候などの影響を受ける傾向がある。なお販路別の売上高構成比(21年9月期実績)はハウスメーカー41.3%、ゼネコン25.3%、個人17.5%、企業8.5%、官公庁7.4%だった。

 同社の強みとしては、匠の技術・品質、植物生体に関わるプロフェッショナル集団としての職人型現場力、岐阜造園アカデミー等を通じたマイスター職人育成力、個人住宅から公園・パブリック空間まで幅広い領域に計画立案・デザイン・施工管理・工事・管理育成・運営まで自社一貫で行えるソリューション力など、創業以来100年近い歴史の中で培ったDNAがある。

 最近の主な施工実績としては、ランドスケープ部門ではエクシブ鳥羽別邸、エクシブ箱根離宮、東京ベイコート倶楽部ホテル&スパリゾート、青山ラピュタガーデン、中部国際医療センター、岐阜市役所新庁舎、積水ハウス関西住まいの夢工場、Fairfield BY MARRIOTT岐阜清流里山公園、朝日インテック大阪、日本GLP常総、熊本地震復興第一弾としての複合商業施設サクラマチ クマモト(建物を包み込むように配した空中庭園が特徴)などがあり、ガーデンエクステリア部門ではグリーンランド柄山、ガーデンテラス大垣、MJR堺筋本町タワー(地下鉄堺筋本町に直結したタワーマンション)、積水ハウス賃貸住宅メルベーユ中郷、展示場型店舗のバインズ岐阜およびバインズ長久手などがある。

 さらに進行中の案件としては、福岡市の新たなランドマークとなる「天神ビッグバン」プロジェクトにおける福岡大名ガーデンシティ(ザ・リッツ・カールトン福岡、23年6月開業予定)や、福島県双葉町の復興プロジェクトである福島県双葉町ランドスケープ計画、豊橋FACEプロジェクトで積水ハウスが開発する大規模住宅団地コモンステージミラまち、中国の青島八景、積水ハウスが開発する住宅分譲パインズの森第2期などがある。

 成長戦略としては、造園専業唯一の上場企業というアドバンテージを活かし、既存のガーデンエクステリア事業、ランドスケープ事業および指定管理事業を柱として、さらに景観産業への進化を目指すとしている。

■23年9月期2桁増益予想、さらに上触れ余地

 23年9月期の連結業績予想は、売上高が22年9月期比4.1%増の50億50百万円、営業利益が10.5%増の4億24百万円、経常利益が16.0%増の4億29百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が16.3%増の2億87百万円としている。配当予想は3月17日付で第2四半期末5円上方修正(東証スタンダード上場記念配当5円実施)して、22年9月期比5円増配の25円(第2四半期末15円=普通配当10円+記念配当5円、期末10円=普通配当)としている。予想配当性向は27.9%となる。

 第1四半期は、売上高が前年同期比12.0%増の13億92百万円、営業利益が21.9%増の1億32百万円、経常利益が17.4%増の1億36百万円、親会社株主帰属四半期純利益が17.8%増の91百万円だった。首都圏を中心に開発案件の受注が増加し、大手住宅メーカーとの業務提携による受注案件の大型化や共同プロジェクトの進捗も寄与して順調に推移した。

 なお第2四半期累計の連結業績予想は売上高が前年同期比4.2%減の25億03百万円、営業利益が28.3%減の2億16百万円、経常利益が25.7%減の2億18百万円、親会社株主帰属四半期純利益が23.8%減の1億46百万円としている。前年の第2四半期累計が複数の大型案件の進捗が想定以上となって大幅増収増益だったことの反動に加えて、材料・外注コストの動向、天候影響などの不透明感を考慮して減収減益予想としている。

 ただし通期ベースでは受注が高水準に推移して増収・2桁増益予想としている。カテゴリー別の計画は、ガーデンエクステリア部門の売上高が6.9%増の30億90百万円で売上総利益が15.0%増の9億07百万円、ランドスケープ部門の売上高が0.1%減の19億60百万円で売上総利益が6.1%増の5億60百万円としている。

 第1四半期の進捗率は、第2四半期累計予想に対して売上高が55.6%、営業利益が61.1%、通期予想に対して売上高が27.6%、営業利益が31.1%だった。順調な進捗率であることを勘案すれば通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は出直り期待

 株価は地合い悪化の影響で、戻り高値圏から急反落して安値圏に回帰の形となったが、好業績や配当予想上方修正を評価して出直りを期待したい。3月17日の終値は1009円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS89円71銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の25円で算出)は約2.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1019円75銭で算出)は約1.0倍、そして時価総額は約32億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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