自動運転と車内エンタメ

2023年3月13日 07:55

●「CES(Consumer Electronics Show)」でのEV車の状況

 1月6日付日経新聞に、『米ラスベガスで1月5日開幕するテクノロジー見本市「CES」でゲームなどの車内エンターティンメントを充実させたEV車の発表が相次ぎ、車が娯楽の空間に変わり、今後は「ソフト力」が競争軸になる』との記事が掲載された。

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 この報道を見て、何も考えずに「へー、そうなんだ」なんて感想を持ったとしたら、余程のお人好しか無知な人間ではないだろうか?自動運転する車の中で「時間つぶしのエンタメソフト充実」することと、EV車と何の関係があると言うのか?

 EV車メーカーがなすべきは、「ソフト力」開発ではなく、まともな「自動車として」成立する様に欠点解消の努力することで、乗員の生命に関わる「発火事故」等を皆無にする努力をすることだ。

●自動運転の5つのレベル

 自動運転にはレベルが設定されていて、「レベル1」の運転支援から、「レベル5」では自動運転システムにより乗員が一切運転に関与せず目的地に移動が可能となる(写真1参照、以下、国交省資料より抜粋)。

・レベル1: 運転支援 システムが前後・左右のいずれかの車両制御を実施
【例】自動で止まる(自動ブレーキ)、前のクルマに付いて走る(ACC)、車線からはみ出さない(LKAS)

・レベル2:
特定条件下での自動運転機能(レベル1の組み合わせ)
【例】車線を維持しながら前のクルマに付いて走る(LKAS+ACC)
特定条件下での自動運転機能(高機能化)
【例】 高速道路での自動運転モード機能
(1)遅いクルマがいれば自動で追い越す
(2)高速道路の分合流を自動で行う

・レベル3: 条件付自動運転
システムが全ての運転タスクを実施するが、システムの介入要求等に対してドライバーが適切に対応することが必要

・レベル4: 特定条件下における完全自動運転
特定条件下においてシステムが全ての運転タスクを実施

・レベル5: 完全自動運転
常にシステムが全ての運転タスクを実施

●移動中のソフトと自動運転は無関係

 「レベル5」なら、読書していても、寝ていても、PCで書類作成していても、映画を見ていても良い。

 その中の選択肢の1つとして、ゲーム類の如き「エンタメソフト」を使った、「移動する個室の中での時間つぶし」も必要となるだろう。

 しかし、この「自動運転する自動車」の駆動系は「EV車=電気自動車」である必要は無い。ハイブリッド車であっても、純粋なガソリン車、ディーゼルエンジン車であっても、乗員が一切運転に関与することが無ければ「自動運転車」なのだ。

 極論するが、馬車の中での「時間つぶし」のソフトが、「EV車」と何の関係があるというのか?

 何でもEV車に関連付けて、如何にも「EV車が先進的」であるかとアピールしようとする傾向があるが、「運転することから完全に解き放された空間」=「自動運転車」がEV車である必要は全く無い。

●理想の自動運転車

 フェラーリやマクラーレンみたいな純スポーツカーで、往路は存分に運転テクニックを駆使してスポーツ走行を楽しんで、復路は完全自動運転で、旅の想い出を噛みしめながら、ゆったりとリラックスし、エンタメを楽しみながら家路につくなんて、最高ではないだろうか。

 EV車で、電欠にひやひやしながら、「車内でエンタメ」でもないだろう。

 EV車は、先ず「自動車」として完成してから、余力があればその方面に着手すれば良いのだ。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

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