掛け声ばかりのEV、利用拡大に必須なEVスタンドは?

2023年3月10日 16:26

 世の中、EV(電気自動車)でなければ時代感覚がないと疑われそうな風潮だが、EV車とバッテリーの関係は購入時点での価格検討ポイントであるだけに止まらない。ドライバーが直面したくないのはガス欠(E欠?)だから、誰もが日々の利用状況を考えて適切だと思われる容量のバッテリーを、搭載した車両を選択しようとするのは当然だ。

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 よく言われるのが、「日常生活でスーパーやコンビニを利用する程度であれば、割安なタイプで問題ない。夕方帰宅したら、コンセントに繋いでおけば翌日利用する分に支障はない」だ。

 確かにその通りだが、計算通りに終わらないのが世の中だと思い知らされている身にとって、あまり説得力があるコメントではない。日常のルーティンが不変だという保証はないからだ。

 資源エネルギー庁のまとめによると、ガソリンスタンドの数は2021年度末で2万8475箇所だ。近年ガソリンスタンドの減少が話題になっているが、4年前の2017年度末時点では3万747箇所だったから2272箇所減少したことになる。

 営利事業であるガソリンスタンドが閉鎖されるのは採算性の乏しい地域が優先される筈だから、日頃の風景の中でガソリンスタンドの減少に気付かされることはあまりない。元々高い視認性を求めて「目立つように」建てられたのがガソリン・スタンドだから、慣れた地域であれば数カ所のスタンドが思い浮かぶ人は多いだろう。

 EV充電スタンドの情報サイト 「GoGoEV」によると、23年3月9日時点のEVスタンドは合計で2万2229箇所。内訳はCHAdeMO(急速)が8320箇所、100V/200V(普通)が1万3660箇所、TESLA(テスラ)の249箇所となっている。

 2万8475対2万2229だから、統計的なスタンド設置数において、EVはガソリンの8割に迫る状況にあるように見える。だが「急速」と「普通」が併設されているケースが多いため、EVスタンドとしてカウントすると1万9331箇所になる。ガソリンスタンド数の70%弱といったところだ。

 EVスタンドの大きな弱点は、小規模な設備なので視認性が低いことだろう。絶対数が少ない上に規模が小さいから存在感がない。

 EV車と EVスタンドと関係は、携帯電話と基地局の関係にも似ている。

 基地局網がある程度整備されるまで、携帯電話は本格的に普及しなかった。そこに、「利用者が増えれば基地局を増やせる」という論理が介入する余地はなかった。EVの場合も同じだ。給電の心配がなくなったと思える程度に、EVスタンドの整備が進まなければEVが本格的に普及することはないと、腹を括って整備を進めるべき時期だろう。

 政府が温室効果ガス削減と経済成長の両立を目指して策定した「グリーン成長戦略」の中で、EV充電器の数は2030年までに15万基(うち急速3万基、普通12万基)だから、あと8年ほどで13万基を設備する必要がある。採算を考える事業者には、EVスタンドの建設を促すモチベーションが必要だ。国と地方自治体が足並みを揃えて推進しなければ、「グリーン成長戦略」は絵に描いた餅になる。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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