UAEのOPEC脱退報道で見える、原油価格の危うさ
2023年3月7日 08:16
●UAEがOPEC脱退を検討?
米国紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)は3日に、UAE(アラブ首長国連邦)がOPEC(石油輸出国機構)の脱退を検討していると報じた。
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これに対して、すぐに関係者がロイター通信の取材に、この報道は「真実から程遠い」と否定しており、ひとまず沈静化した。
脱退検討の報道を受けて、北海ブレントが3%下落したが、ロイター通信の否定報道により、脱退検討報道前以上に反発。WTI原油先物も同様の動きを見せた。
各国の思惑もあり、度々足並みが揃わないことがあるOPECだが、今回の報道はただの飛ばし報道だったのか?今後、実際に脱退はありえるのだろうか?
●気になるUAEとサウジアラビアの関係
サウジアラビアとUAEは米国の安全保障における同盟国である。長年にわたって協調してきたが、最近はその蜜月関係に陰りが出てきたと見られている。
お互いの首脳が国際会議で意図的に同席しないという噂もあり、外資の誘致や石油市場の主導権争いなどで対立している。
OPECプラスでは、両国が減産を巡って対立しているという報道もあった。
2015年から続く、イエメンの内戦問題を巡る対立も背景にある。UAEは2019年に地上部隊の多くを撤退させたが、サウジは親イランのフーシ派と対立を続けており、微妙な隙間風が吹いている。
●もし、UAEが脱退すれば?
今回は否定したが、サウジとUAEの微妙な関係が続く限り、OPEC脱退というリスクは燻り続ける。
UAEはサウジの減産圧力に対し、不満を抱いていることは確かである。
ビジョン2030を掲げ、ムハンマド皇太子の元で脱・石油依存を目指すサウジと、石油増産能力を高めたいUAEが対立することは避けられないのかもしれない。
UAEは脱炭素社会で石油需要が減退する前に、国内の石油を売ってしまいたいという狙いもある。UAEにとって、ムハンマド皇太子は“天敵”かもしれない。
1日あたりの原油生産量(2021年)はサウジがUAEの3倍であり、仮定の話ではあるが、UAEがOPECを脱退して増産しサウジの生産量に近づくこととなれば、原油価格への影響は避けられないだろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)